あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

M‐赤井翼

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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』

1-26「準備」

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「準備」
 直は照れて、頭をかきながら、店を出がけに言った。
「まずは、稀世ちゃんは、自分の幸せを一番に考えや。周りに、気を遣うのはそれからでええよ。じゃあ、次の段取りがあるから、行くわな。あほボンにも結納の段取り書読ませといてな。じゃあまたあとで。」
 直が店を出て行って、入れ替わりで三朗が寿司桶を持って帰ってきた。
「あっ、サブちゃん、今、直さんと入れ違いやったんやで。途中で会った?」
「いや、反対側から帰ってきたから、会ってへんよ。」
「なんで、体育館以外にどっか寄ってたん?そういえば、結構時間かかってたし。」
「へへーん、そこは後のお楽しみのサプラーイズってね。さーて、仕込み始めなあかんなぁ。」
「えっ、サプライズってなに?」
「内緒―っ。」
「あーん、けちんぼ。あっ、直さんから、「結納の段取り書いた紙読んどけよ。」って預かってるし。それにしても、直さんってええ人やね。」
と稀世が素直に直のことを褒めた。三朗は、一瞬考えてから笑顔で稀世に返した。
「うん。あー、でも全面的にだまされたらあかんで。ええとこもあるけど、僕なんか、30年虐げられてきてんねんから。くわばらくわばら。じゃあ、厨房入ってるから、なんかあったら声かけてください。」

 ポッポー。鳩時計が五時前を告げた。
 そこから、怒涛の一時間だった。広義と徹三が手伝いに来てくれた。カウンターの中から、ふたりに稀世とまりあを紹介した。四人で、テーブル席の配置を変え、直が持ってきた結納道具を指示書に合わせて配置した。同じ商店街の酒屋の武藤金義が、お祝いの神酒樽と四本の木槌を持ってきた
「サブちゃん、おめでとう。直さんから聞いたで。おっ、このかわいこちゃんが稀世ちゃんか。天国の先代とひろ子さんも喜んでるな。じゃあ、七時過ぎたら、お邪魔するわな。」
「武藤のおっちゃん、ありがとうね。今、手放されへんから、また後で挨拶させてんか。」
カウンターの中から三朗が返事した。続いて、巻きずしを作りながら悪友のふたりを呼んだ。
「広君、がんちゃん、頼みあんねんけど。ちょっとカウンター中入ってきてくれへんかな。」

 ポッポー。五時五十五分を鳩時計が告げた。
「おーい、稀世ちゃん、まりあちゃん、手空いてるか?店の前出てきてんか。」
直の声が、店の外から響いた。稀世とまりあが表に出ると、後部のハッチバックが開いた、「笹井写真館」と大きく書かれた、白い軽バンが停まっていた。
「醇一、着物、このふたりに渡したって。」
笹井醇一が、高級そうな平べったい、紙の大きな箱を二段、おそらく草履が入っているであろう箱と「和装小物」と書かれた段ボール箱を後部荷室から降ろし、稀世とまりあに渡した。直も助手席から、手持ちの木箱を持って降りてきた。
「さあ、稀世ちゃん、変身タイムやで。まりあちゃんも手伝ったってんか。醇一は、次は六時半にな。カメラにフィルム入れんの忘れなや。」
「直さん、今時フィルムなんか使わへんで、今はデジカメや。そんで、稀世ちゃん、「初めまして」やねんけど、バタバタしてるみたいなんで挨拶は、また後で。まりあさんも三朗の事、よろしくお願いします。カメラマンの笹井醇一でしたー。」
と直とふたりに声をかけ、軽バンで去っていった。
「おいこら、三朗!準備進んでるやろな。あと三十分やぞ。二階のお前のお母ちゃんの部屋、借りるぞ。絶対、覗いたりすんなよ。」

 直が、厨房で作業する三朗の後ろを通り抜けながら言った。稀世とまりあもそれに続いた。三朗は、包丁を握りながら、「はいはい」と返事した。
 二階の三朗の母の部屋に入ると、直は仏壇の前に座り、線香をあげ、手を合わせた。
「大将、ひろ子、あのあほボンの三朗も今日、結納して次の日曜日に結婚することになったで。めちゃくちゃかわいいお嫁さん連れてきてくれたで。三朗の晴れ姿、天国から見てやったってな。なんまんだぶ、なんまんだぶ。」
直は、振り返ると稀世に言った。
「さあ、着付けに入ろか。下着残してみんな脱いでしもて。」
言われるがままに、服を脱いだ。脱いだ服は、まりあがハンガーにかけ、壁につった。直は、眼をくりくりさせて言った。
「稀世ちゃん、すごいおっぱいやなあ。「巨乳」?、いや、これは、「爆乳」いうやつやな!おっぱいだけなら、亡くなった孫以上のサイズや。ありがたや、ありがたや。」
と稀世の胸の前で、直は手を合わせ何度も拝んだ。

 直は、まりあに、「ここ抑えて」、「この帯持っとって」、「わし、手、届けへんから、ここをこう、あそこをこうして」と指示を出しながら、着付けを進めていく。約十五分かかって、着付けと小物のセットが終わった。
「さあ、これから、お化粧やな。元がええから、やりがいがあるな。稀世ちゃん、肌がきれいやから、ナチュラルメイクが似合うやろな。」
「直さん、私、着物着たの初めてなんですよ。だから、どんなメイクがいいのかわからないんで、よろしくお願いします。」
「あいよ。それにしても、よお似とる。まるで、心亜が生き返ったようじゃ?」
「「ここあ」・・・さん?」
「さっき話した、十八で死んでしもた、わしの孫じゃ。いかん、涙が・・・。ちょっと待ってもろてええかな。」
直は、ハンカチを目に当て、ぐっと息を詰まらせた。二十秒の後、
「よっしゃ。スタートしょうか。」




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