親友のために悪役令嬢やってみようと思います!

はるみさ

文字の大きさ
36 / 99
第二章 

9.全員集合

しおりを挟む
 今日は初めての魔法学の授業だ。

 魔法学が行われるのは、学園の隅にある第二グラウンドだ。稀に魔法を暴発させる生徒がいるため、影響が出ないように、校舎から離れた場所で授業を行うらしい。

 私はライル様と二人でそこへ向かう。

 「緊張しますね…。」

 「大丈夫だよ、アンナには僕が付いてるからね。」

 そう言って、ライル様は私に微笑みかける。

 「ありがとうございます。
 ライル様はもう使えるんですもんね。」

 私を助けにきた時に魔法で水の龍を出して、消火してくれていた。

 「そうだね。でも、魔法を使うには基礎が大事だから、アンナたちと一緒にまた一から学ぶつもりだよ。」

 「私も頑張ればライル様みたいに使えますかね?」

 「きっとね。」

 ライル様は私に向かってウインクをする。
 キザな仕草も様になってるんだよなぁ…さすが王子。

 「頑張ります!
 ……あ、でも、火への恐怖心を先に克服しなきゃ。」

 「実際に属性魔法を練習するのはまだ先だから、ゆっくりやっていけばいいよ。まずは基礎から、ね?」

 「そうなんですね。ライル様はもう水の属性魔法をー」

 そこまで言いかけて、私はあることに気付いた。

 「あれ?ライル様の属性って火じゃなかったでしたっけ?」

 「そうだよ。」

 「火属性でも水の龍なんか出せるんですか?」

 ライル様はクスクスと笑う。

 「流石に無理だろうね。」

 「じゃあ、なんでー」

 「僕は両方とも持っているんだ。火も、水も。」

 「えぇ?!」

 今生きている人の中で二つの属性を持っているのはルフト先生だけだと聞いている。まさか、ライル様も二つの属性を持ってるなんて。

 それにゲームの中ではライル様の属性は確かに火だけだったはずだ。水の属性を持っているなんて聞いたことがない…。公開されてない設定か何かなのだろうか?他のルートで判明するとか?

 唖然として足を止めた私の手をライル様が引いた。

 「気付いてなかったんだね。」

 「は、はい……。」

 「まぁ、周りが騒ぐと煩いから、知らないフリしててよ。このことを知ってるのはごく僅かな人間だけなんだ。」

 「わ、分かりました。

 ……ライル様ってすごいですね。」

 「ふふっ。僕は女神に愛されてるからね。」

 そう言って、ライル様は笑った。

 誰が見ても美しいと口を揃える容姿に、類稀なる魔力持ち……ライル様が女神に愛されていると言うのも、納得できた。


   ◆ ◇ ◆


 授業が行われるグラウンドに着くと、そこには意外な人物がいた。

 「あれ…ユーリ?」

 「おう!」

 ユーリは私とライル様を見つけると駆け寄ってきた。
 ライル様は嫌そうに眉を顰める。

 ……そんなに嫌がらなくてもいいのに。

 「なんでここにいるの?」

 「なんでって酷いな。あったんだよ、俺にも魔力。」

 「うそっ!!」

 「ははっ!確かに驚きだよな。
 アンナにも俺にもあるなんて。」

 「うん。すごいね、おめでとう。」

 「アンナもな。」

 ユーリと二人で微笑み合うのを、つまらなそうにライル様が見つめる。それに気付いたユーリがライル様の肩に腕を回す。

 「そんなつまらない顔すんなよ。
 俺、本当は王子とも仲良くしたいんだぜ?」

 そう言ってユーリはライル様と肩を組もうとした。

 「ふん。馴れ馴れしい。大体僕の名前は王子ではない。」

 とは言うものの、ユーリの手を払い除けるでもなく、肩を組ませてあげるあたりが優しい。

 「だな!じゃあ、名前で呼ぶな!ラ・イ・ル!」

 唖然とする私をよそにユーリはニコニコとしている。
 殿下は呆れたような目線を送る。

 「お前…っ!」

 「俺のことはユーリでいいぜ!」

 「もういい……。」

 ……ライル様をライルと呼ぶのも、肩を組むのも、同年代の令息の中ではおそらくユーリだけだろう。ユーリは本当に怖いもの知らずだ。

 そこへジョシュア様が駆けてきた。

 「アンナ!」

 「ジョシュア様。今日からよろしくお願いします。」

 私がそう言って頭を下げると、ジョシュア様は優しく微笑んでくれた。

 「あぁ。私もアンナと同じ授業を受けることが出来て嬉しい。」

 目を細めて私を見つめるその瞳は優しい。きっとソフィアの親友ということもあり、妹のように思ってくれているのかもしれない。

 その時、ユーリが呟いた。

 「……ジョシュア?」

 その声に気づいたジョシュア様は、ユーリに視線を移す。

 「その黒髪…君がラスカシエ辺境伯のー」

 ユーリは人懐っこい笑顔を浮かべ、握手を求める。

 「ユーリだ。」

 ジョシュア様はにこやかにその手を握った。

 「宜しく、ユーリ。

 以前、アンナと一緒に平民街で私の知り合いを探してくれたそうで。その節は世話になった。」

 「別にいいよ。好きな女が困ってたから助けただけだ。」

 ジョシュア様は驚いたように目を見開いた後にフッと笑った。

 「そうか。……もしや君もアンナをー」

 「好きだけど?」

 はぁ?!
 なんでこんなところで訳わかんないこと言うのよ!

 「ユーリッ!!」

 私は声を荒げるが、ユーリはニコニコと笑っている。
 それを見てジョシュア様は笑いを堪えているようだ。

 「くくっ。アンナは殿下の婚約者だと言うのに、こんなに真っ直ぐ好意を伝えられる奴がいるなんてな。」

 その時、ライル様が特大の溜息を吐いた。
 射るような目線をジョシュア様に向ける。

 「お前も人のことは言えないだろ。
 全く僕の婚約者だと言うのに、お前らは何を考えているんだ。」

 「まだ婚約者だろ。未来は分かんないじゃん。」

 その時、ウィルガが来たのが見えた。

 三人が何やら仲良しそうなので、私はその輪からするりと抜け出して、ウィルガのところへ向かった。

 「ウィルガ、久しぶり!」

 ウィルガは腰から身体を倒して、きちっとお辞儀をする。

 「アンナ様。ご無沙汰しております。先日もご挨拶出来ずに申し訳ありませんでした。」

 「ううん。いいのよ。気にしてないわ。
 それよりも今は学友なんだから、そんな話し方は止めて。アンナって呼んでくれていいのよ?」

 ウィルガは首を横に振る。

 「いえ。そう言うわけにはいきません。」

 「もう…ウィルガは本当に真面目なんだから。

 トイ様とロミオ様は元気?」

 ウィルガには二人の兄がいる。しかし、ウィルガはその二人よりもずっと剣の才能も秀でて、容姿も優れていた。そのため、ゲームだと武の公爵家に相応しいと後継者に指名されるのだがー

 「はい。兄上達も元気にしております。」

 「そう、良かったわ。」

 その時、後ろで小さな声がした。

 「……ウィルガまで。」

 振り返るとそこにはリィナがいた。

 「リィナさん、こんにちわ。」

 私が笑顔で挨拶するが、リィナの顔は浮かない。

 「……こんにちわ。」

 「リィナ、どうしたんですか?元気がないですが。」

 ウィルガがリィナに尋ねる。

 もう二人の出会いイベントは終わってたっけ。
 庭園かどこか…だったかな?

 「ウィルガとリィナさんは知り合いなの?」

 「はい。私は庭園の花の世話を任されているのですが、リィナはそれをよく手伝ってくれるんです。昔、花屋で手伝いをしたことがあるからと言って。とても優しいんですよ。」

 ウィルガはそう言うと優しい笑みをリィナに向ける。

 「そんな……。」

 リィナは照れたように俯いた。

 「素晴らしいわね、リィナさん。」

 私がそう言うと、リィナは完全な愛想笑いを返してくれた。

 ……やっぱり相当、私は嫌われてるようだわ。

 その時、ライル様たち三人がやって来た。
 ライル様が私に声を掛ける。

 「アンナ、従兄弟との再会は無事に果たせたのかい?」

 「はい。ご存知だったんですね。」

 「勿論だよ。アンナに関することは全て覚えてる。
 最初に出会った時のドレスの色までね。」

 ……信じられない。すごい記憶力。

 「うそ…!」

 「本当だよ。薄ピンク色の花びらがあしらわれたドレスに身を包むアンナは、初めて会った時から天使のように可愛かったな。」

 「や、やめてください!!」

 本当に天使のような子がそこにいるのに、恥ずかしいことを言うのをやめて欲しい…!

 リィナはつまらなそうな顔をして、そっぽを向いている。

 その時、こちらに向かってくる。長身の男性が見えた。菫色の髪と瞳は、遠くからでもよく目立つ。

 ルフト先生はウェーブがかったボサボサの頭を掻きながら言う。その気怠げな感じでさえ、顔が良ければ色気になる。

 「揃ってるか~?始めるぞ。」

 ……ゲームの攻略対象が揃うと、圧巻だな…と私はどこか他人事のように思うのであった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...