【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)

文字の大きさ
80 / 142
第4章  光と闇が混ざる時

第20話 どぶから大蛇が出たよう

しおりを挟む
 数日分の着替えと携帯の食料を含めた旅支度たびじたくを、彼女は急ぎメリーに依頼する。

「お嬢様、支度は整いました。
2日分の保存食と替えの服です」

「ありがとう、メリー。
おばあ様のことを宜しく頼みます。
状況次第で、お祖父様も動くかもしれないわ」

心配そうにかばんを渡すメリーは、主に願いを伝える。

「私もご一緒では、どうしても駄目ですか?!
屋敷にとらわれているなら、メイドの私の方が中を探りやすいですわ」

メリーの考えには、一理いちりはある。

「いいえ、メリー。
私の代わりに、祖母ヴィクトリアを頼みます。
私でも、足手まといなのよ。
ピーちゃんは、私の命令しか従わないから行くの」

「プリムローズ様、分かりました。
ヴィクトリア様は、私にお任せ下さい」

仕える主には、メリーは絶対服従ぜったいふくじゅうだった。
祖母ヴィクトリアは、彼女にとっては命の恩人おんじんでもある。

「必ず無事に帰るとは、約束できない!
できるだけ、最善はつくすわ。
それに、何かが妙に引っかかるのよ」

それが、何かがと言うと漠然ばくぜんとして分からない。

 
    翌朝プリムローズはゲラン親子を引き連れて、愛馬ヴァンブランに騎乗しスクード公爵屋敷を後にした。

「ピーちゃんたちは、ゆっくりと飛んでくれているわね。
ヒンメルは匂袋を付けて、先にミュルクヴィズに向かってくれているわ。
そこまではスクード公爵と祖父ハーヴモーネ侯爵が、エリアスとヒンメルを送ってくれているはず…」

「しかし、エリアスを屋敷から出すのは危険じゃね?!
お嬢、よく許したな」

「仕方がないのよ、ギル。
ヒンメルは、私とエリアスの命令しか聞かないの。
スクード公爵には、全然なついてないしね」

「なかなか、これは手強い相手だ。
頑固がんこな性質は、飼い主譲りですかなぁ」

ゆっくりと走っているから、こんな会話が可能なのよね。
斜め前の頭上を飛ぶ鷹たちを見つめて、プリムローズは愛馬を走らせていた。

 
    途中休みを入れて、夕方前に着いた場所でウィリアムは大声で近い声を少し遠くに見える屋敷に向かい言った。

「この屋敷は、生前に王弟殿下が暮らしていた屋敷ではないか」

「父上!俺も覚えがある。
間違いなく、王弟殿下の屋敷だ。
何度も殿下や奥方様に、お声を此処でかけて頂いた記憶があるぜ」

親子は、懐かしさと戸惑いの感情を声に表していた。

「今現在は、誰が管理してますか?!
やはり侍従長じじゅうちょうは、屋敷のかぎを自由に使用できるのでしょうか?」
 
王宮内の役職に関する知識が乏しいので、プリムローズはウィル親方に相談してみた。

「いや、普段はヘイズ王がお持ちではないだろうか?
一年に一度は、屋敷を清掃するとは思うが…」

ウィル親方は、その場で黙りこくってしまった。

『黒幕は…、まさかのヘイズ王か?!』

頭が変になると首を振っていたら、ピーちゃんが心配してヴァンブランの足元に降り立った。

「ピ~。ピ~、…、ピー!」

「ごめんね、ピーちゃん。
あのお屋敷に、2人はとらわれているでいいのよね」

「ピーィ!!」と、力強く一鳴きする鷹。

「ピーちゃん、良くやりました!
任務が完了しましたら、ご褒美ほうびを弾むわよ。
それまでは、気を引き締めて我らの役に立つように!」

プリムローズが、鷹たちに命じる姿を不思議そうに見る親方。

「父上、いつもああです。
気にしないで下さい。
お嬢の頭の中が、腐ったんじゃあないからー」

「ギル!お黙んなさい!
それより日が落ちるわ。
何処かで野宿しなくては、をしたら相手に知られちゃうかな?!」

ウィリアムは過去の記憶を辿り、川近くに小屋があることを思い出す。

「もしかしたら、まだ残っているかも?
少し戻りますが、川原に小屋があります。
そこへ行ってみましょう」

川原に行くと小屋が残っていた。
どうやら、誰も長年使ってなさそうなボロさである。

「一晩くらいは平気だ。
お嬢も大丈夫だよな!」

ギルはプリムローズに確認を取ると、もちろんと返事を返しながらヘイズ王を思い出していた。

「まるで、【どふから大蛇だいじゃが出たよう】な気分だわ。
真の黒幕の頭は、まさかのヘイズ王かしら?!」
 
彼女はボンクラの囚われ先を考えても、王様としか頭に浮かばない。
二人は、プリムローズにズケズケと話しだした。

「どぶから大蛇が出ることはないが、もし出たら誰でも驚くだろうな!
その大蛇が、問題だが…」

ウィリアムは、10年の時の長さを感じていた。

「思ってもないことだぜ!
意外すぎて、想像が出来ない」

元ヘイズ国民とあってか、あのギルまでもが自重じちょうして王という言葉を一言もはっしなかった。

「統治しているときは、必ずや不安が付き物です。
だからとて、まさか自分で混乱に招く事を自ら致しますでしょうか?!」

プリムローズは、エテルネルの歴代の国王の逸話いつわが好きで読んでいた。

栄光と挫折ざせつ、不安と迷い。

どこの国王も、もがき苦しんで玉座に座り続ける。
その覚悟が近年はどの王たちも薄れていると、プリムローズは分析ぶんせきしていた。

「国王がお一人で統治するには、肩が重いのでしょうか?!
王政制度を変える帰途きとに、差し掛かっているのかしら…」

「プリムローズ様は、革新的かくしんてきな思想をお持ちだ。
しかし、他言してはならない。
危険分子として、弾劾だんがいを受ける恐れもありますぞ」

ウィリアムは、教え子の身を心配し案じた。

長いものに巻かれろか、プリムローズは川で釣った魚を焼きながら思う。

『国の安寧あんねいと平和を望み、国民の幸福を導き保つ難しさをー』

火があやしく燃えるように見えた時、紫の瞳がワインレッドに変化し輝いていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞
恋愛
「私がどんなに頑張っても……やっぱり駄目だった」 その日、乙女ゲームの悪役令嬢、「レイナ・ファリアム」は絶望した。転生者である彼女は、前世の記憶を駆使して、なんとか自身の断罪を回避しようとしたが、全て無駄だった。しょせんは悪役令嬢。ゲームの絶対的勝者であるはずのヒロインに勝てるはずがない。自身が断罪する運命は変えられず、婚約者……いや、”元”婚約者である「デイファン・テリアム」に婚約破棄と国外追放を命じられる。みんな、誰一人としてレイナを庇ってはくれず、レイナに冷たい視線を向けていた。そして、国外追放のための馬車に乗り込むと、馬車の中に隠れていた何者かによって……レイナは殺害されてしまった。 「なぜ、レイナが……あの子は何も悪くないのに!!」 彼女の死に唯一嘆いたものは、家族以上にレイナを知る存在……レイナの親友であり、幼馴染でもある、侯爵令嬢、「ヴィル・テイラン」であった。ヴィルは親友のレイナにすら教えていなかったが、自身も前世の記憶を所持しており、自身がゲームのモブであるということも知っていた。 「これまでは物語のモブで、でしゃばるのはよくないと思い、見て見ぬふりをしていましたが……こればかりは見過ごせません!!」 そして、彼女は決意した。レイナの死は、見て見ぬふりをしてきた自身もにも非がある。だからこそ、彼女の代わりに、彼女への罪滅ぼしのために、彼女を虐げてきた者たちに復讐するのだ、と。これは、悪役令嬢の断罪から始まる、モブ令嬢の復讐劇である。

時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【その断罪、待っていました!】 私は侯爵令嬢オフィーリア・ドヌーブ。王太子アシル・バスチエの婚約者だった。良い国母になる為、日々努力を怠らなかった。そんなある日、聖女を名乗る女性ソネットが現れ、あっという間にアシルは彼女に夢中になってしまう。妃の座を奪われることに危機感を抱いた私は、ありとあらゆる手段でソネットを陥れようとして失敗。逆に罰として侯爵家から除籍され、辺境の地へ幾人かの使用人達と共に追放されてしまう。追放先の村での暮らしは不便だったが、人々は皆親切だった。けれど元侯爵令嬢というプライドから最後まで私は素直になれなかった。そんな自分に後悔しながら長い時を孤独に過ごしていたある日。不思議な懐中時計の力によって、何故か断罪の真っ最中に時が巻き戻っていた。聖女への嫌がらせは無かったことに出来ない。それなら今世はおとなしく追放されて和やかに過ごそう。今度こそ幸せに暮らす為に—— ※他サイトでも投稿中

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

処理中です...