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しおりを挟むあれから2年
昼食が終わる頃になるとルイ様は落ち着きを取り戻す。昼食後、車椅子に乗り日課にしている庭の散歩をする。庭で遊んでいる子供達。
「かあさま」
「ロイスどうしたの?」
ロイスがルイ様を伺いながら私の元へ来た。
「ロリーナが」
赤ん坊だったロリーナは2歳になった。お花を持ち恥ずかしそうにロイスの後ろに隠れていた。
私はロリーナの目線に合わせ座り、
「かあたま、これ…」
ロリーナはチラチラとルイ様を見ている。
「渡したいの?」
「うん」
「渡したら喜ぶと思うわよ」
ロリーナは車椅子に座るルイ様にお花を差し出した。
「おーちゃに」
「おじさんにか?」
「うん」
嬉しそうに笑ったロリーナ。
「ありがとうな」
ルイ様はロリーナの頭を撫でた。
ロイスとロリーナはまた走り回って遊んでいる。二人を私とルイ様は見つめる。
「お前の子供達か?」
「はい」
「父親は?」
私は遠い目を向けて、
「今はちょっと…」
「悪い、悪気はない」
「大丈夫です」
「こんな可愛い子達なのにな。俺ならこんな可愛い子達を離したりしない。それに何故だろうな、おじさんと言われるとここが悲しい気持ちになる」
ルイ様は胸に手をあてていた。
「……そう、ですか」
「一人で大変だろう」
「そうですね。それでも愛する人との間に出来た可愛い子供達ですので」
「そうか、」
「ルイ様、お茶にしましょう」
「ああ」
テーブルにお茶の用意をしお菓子を並べた。
「子供達も一緒にどうだろう」
「ルイ様が良ければ」
「俺は構わない」
私はロイスとロリーナを呼んでロイスを椅子にロリーナを膝の上に座らせた。
「ロイスと言ったか、好きなお菓子を食べていいぞ」
ロイスが取ったのはチョコが沢山入ったクッキー
「おっ、ロイスもそれが好きか。俺もだ」
ルイ様は手を伸ばしチョコ入りのクッキーを取り一枚は自分の口に、もう一枚はロイスの手に持たせた。そしてロイスの頭を撫で、
「いっぱい食べて大きくなれ。そして母様のお手伝いをして妹を護るんだ。そうだ、ロイスは剣の稽古はしていないのか?」
ロイスは私の顔を見た。私は頷いた。
「してるけど」
「そうか、おじさん今はこんな姿だがこれでも騎士だったんだぞ。よし!剣の稽古の相手になってやる。これを食べたら一緒に稽古をしないか?」
「いいの?」
「ああ」
ロイスが嬉しそうに笑った。
「なら一緒に稽古したい」
「よし!ならいっぱい食べてからな」
ロイスの嬉しそうな顔。そしてルイ様の嬉しそうな顔。二人して同じ顔をしている。
ルイ様とロイスはお菓子を食べてテーブルから少し離れた所に行った。
練習用の剣を持ってきたロイスはルイ様に剣の振りから教えてもらう。これもいつもの事。毎日忘れてしまうルイ様は一からロイスに教える。基礎が大事だ、鍛錬が大事だと。
二人の姿を見ながらロリーナを寝かせる。少し愚図りながら眠るロリーナをあやし寝た所で、
「すみませんルイ様、少し席を外します」
「寝たか?」
「はい」
「寝顔を見せてはくれないか」
「はい」
ルイ様に近付きロリーナの寝顔を見る。ロリーナの頭を撫で頬を撫でる。ロリーナを優しい顔で見つめる。
「いい夢を」
ロリーナを部屋に寝かせ私が庭に戻って来た時、ルイ様とロイスは楽しそうに話していた。
「ロイスは剣の筋が良いぞ。いつか俺もロイスに負ける時がくるかもしれないな。ロイスは今何歳だ」
「5歳」
「5歳か、5歳の俺は嫌嫌剣の稽古をしていたな」
「そうなの?」
「ああ、騎士になろうと決めたのは10歳の時だ。それからエマ、好きな子の為に騎士になろうと決めた。それから頑張って努力した」
「……へぇ、…そうなの…」
ロイスは顔を俯けた。
「どうしたロイス」
ロイスは俯いたまま顔を横に振った。
「ぼく、ひとりでけいこする」
ロイスが走って行った。
「何か悪かったな」
「いいえ」
「あんな悲しそうな顔をさせたかった訳じゃないんだけどな。ロイスには笑顔が似合う。ロイスの笑顔を見ているとこっちまで笑顔になる。俺の子が出来たらロイスみたいな子になるんだろうか。ロイスは俺の髪と目と同じ色だからな」
「ええ、貴方にそっくり…」
ルイ様に聞こえないようにつぶやいた。
「何か言ったか?」
「何も言ってませんよ。庭の散歩を続けますか?それとも部屋に戻られますか?」
「もう少し風に当たりたい」
「分かりました」
「俺は部屋の中より外が好きでな、こうして日を浴びて風に当たるのが好きなんだ。もう少し付き合ってくれるか?」
「はい、今日は風が気持ちいいですね」
「だろ」
婚約中もルイ様は外で風に当たるのが好きだと言っていた。庭の散歩や庭園、外で過ごす事が多かった。
結婚してからも遠乗りに出かけたり、庭の散歩は毎日していた。朝だったり夕方だったり、ランプを持って歩く夜の庭もまたいつもと違う雰囲気だった。
ベンチに座りルイ様は私の肩を抱き寄せ、私はルイ様にもたれる。お互い何も話さずただ風に揺れる花壇の花を見つめていた。その時間はとても穏やかで安心出来た。同じものを見て同じ風を感じる。とても幸せな時間だった。
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