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しおりを挟む子供達を寝かしつける為に私は子供達の部屋に入った。絵本を読み始めるとロリーナはうとうとと瞼が閉じたり開いたり。
子供達の部屋の扉が静かに開きルイ様が入って来た。
「すまない、子供達が寝るまで俺も一緒に居ても良いだろうか」
「とうさまいて」
「ロイス」
「とうさまはぼくのてをつないで」
「ああ」
ルイ様はロイスのベッドに近付きロイスの手を握る。
私は絵本の続きを読み始めた。
「心地良い声だ。俺まで眠くなりそうだ」
ルイ様が呟いた。
ロリーナはもう夢の中。ロイスは必死に起きようとしている。それでも睡魔には勝てず、
「……とう…さま……と……あ……し……た………も…………」
「ああ、明日もたくさん遊ぼうな。ロイス、おやすみ、いい夢を」
繋いでいた手が離れルイ様はロイスの頭を撫でている。愛しい瞳をロイスに向けている。ルイ様は自分の指に口付けしその指をロイスの額にあてた。
それからロリーナのベッドへ移動し寝ているロリーナの額にも同じ事をした。
「ロリーナ、おやすみ、いい夢を」
ロリーナの頭を撫で、愛しい瞳をロリーナにも向けている。
私はルイ様の車椅子を押し、ルイ様の私室へ向かう。
「悪いな」
「今日はたくさん動きましたから」
「俺も子供の頃は良く母上に絵本を読んでもらった。心地良い声が眠気を誘い、それでも最後まで聞きたいと頑張って起きていた事を思い出したよ」
「私は直ぐに寝てしまいました」
「兄上も直ぐに寝ていたな。眠った兄上に母上がいつも額に口付けして『いい夢を』と言っていてな、俺は母上に聞いたんだ。そしたら悪夢を見ないおまじないだと言われた」
「そうなんですか?知りませんでした」
「いや、あれは母上だけのおまじないだ。俺も兄上も母上が頬に口付けするのを嫌がっていたからな。口付けは子供の頃だけだぞ」
「はい」
「恥ずかしさもあった。それにいつまでも子供扱いされるのが嫌だった。いや、実際子供だったんだが」
「子供の頃は早く大人の扱いをしてほしいと思います。両親からすれば何歳になっても子供は子供なんですが」
「ああ。それでもそのおまじないで悪夢を見ないと安心して眠れた。だからロイスにもロリーナにもおまじないをしたんだが、この体ではベッドに眠るロイスやロリーナに直接は出来ない。出来ない事もないがせっかく眠った二人を起こすのも可哀想だ。二人が悪夢を見ないと良いと俺は願った」
「はい、ありがとうございます」
話しているとルイ様の私室へ着いた。部屋の中までルイ様の車椅子を押し、
「では従者を呼んで来ます」
「待ってくれ。少し話がしたい」
「分かりました」
私はルイ様の前の椅子に座ろうと、
「え?」
ルイ様に腕を掴まれそのままルイ様の膝の上に座った。
「あの、私は椅子に、」
「このままが良い」
「……はい」
「俺は記憶を忘れた。忘れてはいけない記憶を忘れた。それでも俺はロイスもロリーナも二人共可愛い。例え自分の子でなくても自分の子供だと思ってる。もう一度俺に二人の父親にならせてほしい。俺は二人を愛せる。愛しい存在だと今日だけで思った。二人の幸せを願いこれからもリリーと共に育てていきたい。その権利を俺にもう一度与えてほしい」
「それは、」
「すでにリリーと結婚し俺は二人の父親だ。それでも俺の決意だ」
「はい」
「リリー、朝は怒鳴って悪かった。記憶がないからだとしても女性に怒鳴るなど騎士道に反する。それに俺は侯爵令息だ、紳士の対応では無かった。すまない」
「大丈夫です」
「リリー、俺はこんな体だ。もう騎士にはなれない。これからも迷惑をかけると思う。それでも、それでも俺はもう一度リリーに恋をした。俺への気遣い、優しさ、リリーは綺麗だ。見た目も美しいがリリーの全てが綺麗だ。心地良い雰囲気、穏やかな声、俺は心が休まった。
記憶を忘れた俺を許せないかもしれない。それでも俺はリリーの前の夫とは違う。寂しそうな顔も辛そうな顔も俺ならさせない。リリーにはいつも笑顔でいてほしい」
「……はい」
「年下の俺では頼りないと思うかもしれない。それでも俺はリリーの今の夫だ」
「……はい」
「リリー、俺は記憶を忘れたが、俺達は結婚している。俺は無様な姿も晒した。怒鳴り傷つけた。
記憶を失くしても俺はリリーを離したくないと思った。俺の心はリリーを離せないと思った。だからまたリリーに恋をした。
また一から夫婦として俺と築いてほしい。愛を育み死ぬまで共に歩みたい。俺が手を取りたいのはリリーだけだ。俺が愛したいのはリリーだけだ。
リリー改めてもう一度言わせてほしい。俺と結婚してほしい」
そう言うとルイ様は後ろから私を抱きしめた。
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