悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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9 23歳 ③

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私はアルバートの代わりに書簡の処理をしつつ、プロパンス地方の書類を見る。半期の報告書では今年も不作と書いてある。そして私の手にはタイラーが書いたプロパンス地方の絵。作物が育ち青々とした葉。


私はプロパンス地方の当主を呼び出した。

謁見の間

私だけが座り、謁見の間に入って来たプロパンス地方の当主。侯爵家、伯爵家、子爵家ニ家、男爵家の当主達。

侯爵当主が私の顔を見るなり、


「我らは陛下に呼ばれたのであって王妃殿下に呼ばれたのではない。陛下にお目通り願う」

「貴方達を呼んだのは私です。そしてこれが王命です」


アルバートが書いた王命の証明書を見せた。


「プロパンス地方の貴方方には罰として罰金か罰金の代わりの穀物を早急に支払うよう命じます」

「どうしてだ!」


怒りを露わにする侯爵当主。この人か率先してやったのね。


「一昨年の不作は仕方がありません。ですが昨年は天候も良く豊作だったはず。それでも不作の次の年、不作ではないけれど豊作では無かったとこちらは受け取り処理をしました」

「あ、ああ、そうだ」

「ですが今年は豊作ですね?それなのに嘘の申告をしています。それについて何か言う事はありますか?」

「今年も、不作ではないが豊作ではない、それだけだ」

「ではこちらの絵を見て下さい」


私は何十枚の絵を見せた。


「こちらは今年の侯爵領、こちらは伯爵領、こちらは子爵領、で、男爵領の現在です。青々と葉は茂り実もなっています。これが不作ですか?」

「こ、これは、そう嘘の絵だ。私達を欺く為に妃殿下が描かせたんだ。そうだ、きっとそうだ」

「いえ違います。今年プロパンス地方へ行った者が描いた絵です。そして領民にも話を聞いています。昨年も豊作だったと」

「ッ!」

「嘘の申告をした罰、認めますね」

「み、認め…」

「認めます」


男爵当主が大きな声をあげた。


「男爵、認めますか?」

「認めます。だから剥奪だけは、何卒…」

「認め罰を受けるなら目を瞑ります。ですがこれから報告書の虚偽はしないと約束して下さい」

「分かりました。罰金は困るので穀物で支払います」

「ええ、穀物の方がありがたいです」

「では家も」


子爵家の二家、伯爵家も穀物での罰を支払うと言った。


「侯爵、後は貴方だけです」

「侯爵家は認めない」


侯爵当主は睨み私を見る。


「王命を見ても考えは変わらないと?」

「変わらない」

「では、侯爵家は伯爵へ降格。今から書類を作ります。貴方は待ちなさい。他の者達は別室へ移動して下さい」


後ろに控えていたボビーに後は頼んだ。


私は書類を書き、貴族に知らせる書類も一緒に書き早馬で王都に暮らす貴族全員に配るように指示した。


「ではプロパン伯爵、元侯爵領の一部は国が管理します。伯爵に見合った領地を計算し後日知らせます。速やかな領民の移動を」

「妃殿下、貴女は悪魔か!」

「私は貴方に選択をさせました。問答無用に罰したのではありません。そして貴方は己の保身を取り選択を拒否した。その結果です。虚偽の申告をすれば罰する、当然の事です。

侯爵、高位貴族の貴方が率先して行えばそれが良しとなる。そして皆が真似をする。だからこそ見逃しては駄目なのです。高位貴族でも悪事を働けば罰せられる、我々は皆の手本にならないといけない存在なのです。

そして罰を認めれば許す。慈悲、無慈悲を持ち合わせているのが王です。私は王妃ですが今この場では王と同等、恨むなら私を恨みなさい。貴方を処分したのは陛下ではなく王妃の私です」

「分かりました」

「貴方は領民思いの良い当主。領民は皆、当主様には感謝していると言っていたそうです。これからもその思いを持ち続けて下さい。

貴方なら直ぐに侯爵に戻れますから」

「妃殿下、貴女は何をしたい」

「天災が起きたのは知ってますね?」

「ウイング侯爵領か」

「ええ。取り残された領民へ穀物を送りたいのです。国からの支援は残された領民へは渡っていません。薬が数週間で揃います。後は直ぐ食べれる穀物が必要だったのです」

「それならそうと」

「それでも虚偽を見逃す事は出来ません。だから罰を穀物でも良いと言いました。それなのに貴方は認めないから」

「不作の年に金を多く使った。次の年は領民の生活にあてた。今年は、」

「備蓄、お金を貯める為、かしら」

「ああ。また不作になっても良いように」

「前当主は散財をする方だったものね」

「ああ。侯爵家はすっからかんだ」

「それでも当主を信じ付いてきてくれる領民がいるという事はとても喜ばしい事です。虚偽をしなければ、認めていれば、悔やみます」

「それも俺の責任だ。領民には関係ない。領民には頭を下げるさ」

「ウイング侯爵が貴方のような方なら良かったと心から思います」



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