悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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8 23歳 ②

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アルバートが国王に即位して落ち着きを取り戻した時、隣国側の辺境伯から書簡が届いた。

『長雨が続き天災が起こる可能性がある』


タイラーは今、アルバートの相談役。タイラーを交えて話をする。

タイラーは独自にすでに動いていた。


「ジェイデンから送ってもらった隣国の過去の天災も長雨による土砂崩れだった。その時も長雨が続いたらしい。水が溢れ農地は水没。逃げ遅れた平民が被害にあった。統制がとれていなかった為に平民は逃げ場を失った」

「対処方は?」

「領主が領民の命を護らないといけない。一刻も早く安全な領地へ領民を避難させる。土砂崩れの被害に合わないように山へは近づかせない」

「それでも山の近くに住んでる者はどうする」

「家は諦めてもらうしかない」

「それだと納得しないだろ」

「そこは支援するしかない」

「そうだな」

「領主が率先して領民の避難をさせる。それも早くしないと手遅れになる」

「分かった。侯爵家と子爵家と男爵家に書簡を直ぐに送る」

「辺境はもう独自で動いているし受け入れも可能らしい。一時的に避難させる領主にも受け入れるように書簡を送った方がいい」

「そうだな。周りの領主にも書簡を送る。今までこんな天災は無かった」

「今までは隣国へ雲が流れていたからね。風の流れ、地形の変化、理由は分からないけど、隣国の情報で対策は取れる。ただ、いや何でもない」

「ん?そうか、タイラー助かった」


王都に住む当主宛に書簡を送り、領主宛にも書簡を早馬で送った。

後は祈るのみ。


祈り虚しく天災は起きた。土砂崩れ、農地の水没、領民の死。


「水没した農地は直ぐには使えない。領民の避難先に領民の受け入れを頼むしかない」


アルバートはいち早く書簡を送り支援を送った。王宮にある備蓄食料も送る。

それでもきっと足りない。

農地が使えるまでは税の徴収は行わないと決めても被害が大き過ぎる。



天災から数週間後私はタイラーを呼び出した。


「タイラー、前に何か言いかけてやめたでしょ?あれは何だったの」

「隣国は統制がとれなかったって言っただろ?」

「ええ、だから平民は逃げ場を失ったのよね?」

「リリーアンヌ、天災が起こった領地の平民の死は何だと思う?」

「土砂崩れに巻き込まれたから」

「確かに土砂崩れに巻き込まれた平民もいた。それでも平民の死は流行り病と餓死だ」

「流行り病と餓死…」

「水没した領地は衛生的に悪い。そうすると流行り病が発症する。薬が買えない平民は苦しみながら死んでいく。それに少ない食料を平民同士で強奪し合う。年寄りや子供、弱い者は食べる物がなくて餓死する」

「それでも領地には領主がいるでしょ?領主は貴族よ?国からの援助も出るでしょ?」

「国からの援助は貴族に渡される。領民全員分が渡される訳じゃない」

「貴族は領民を護る義務があるわ。足りない分は自分達で賄わないと」

「被害があれば直すのにお金がかかる。なら分かるだろ?」

「最低限、もしかしたらそれ以下しか平民には渡らない。作物も採れない、配給される食料は最低限、きっと毎食食べれないわ」

「そうすると腐った物を食べる。病を発症し伝染し流行り病になる」

「そうね…」

「早急に領民の人数、避難した人数を調べる必要がある」


急いで領民の人数と避難した人数を調べた。

男爵家は辺境の隣の領地、辺境の騎士達の誘導で全員の避難が速やかに出来、全員無事だった。それに水没の被害も少ない。


子爵家は隣の領地へ避難させ領民は全員無事だった。亡くなったのは領主と数人の使用人だった。領主と使用人は全員の避難を確認し馬を逃している時に土砂崩れに巻き込まれた。子爵家は馬を育て売買し領地経営をしていたから。

天災による領地の被害は一番酷い。土砂崩れ、水没、今まで通り領地で生活するには数年かかるかもしれない。それでも領主達の命の引き換えに助けた馬達が生き残った。それに領民も。それなら他の領地で経営は出来る。国が保有する領地を与えれば領民達も生活には困らない。


問題は侯爵家。半数以上領地に取り残されている。領主は隣の領地へ避難していて支援も領地へ避難した人達にしか配られていない。

タイラーが言うようにもう既に流行り病は発症しているかもしれない。


「ボビー、私が使えるお金で流行り病に効く薬を大量に仕入れてほしいの。できれば早急に。お願い出来る?」

「承知しました」


ボビーなら遅くても数週間で用意してくれる。後は…、


「アルバート、私にアルバートと同じ権限が欲しいの」

「それは出来ないよ」

「分かってるわ。だから緊急時だけで良いの。今アルバートは天災で忙しいでしょ?他の処理が何一つ終わってないわ。だから緊急時だけ私に国王と同じ権限を持てるようにしてほしいの。そしたら私でも処理出来るわ。それに私が処理した案件の責任は全て私が責任を持つ。アルバートには絶対に迷惑をかけないから」


アルバートは真剣に考えている。アルバートと目が合う。


「リリーアンヌがそこまで言うには何か理由があるんだろ?」


私は「そう」とも「違う」とも言わない。


「分かった。緊急時だけだ」

「分かってるわ」


アルバートは『王妃にも国王と同等の権限を許可する』という王命の書簡を書いた。



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