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7 23歳 ①
しおりを挟む国王陛下が逝去された。
お父様、タイラー、ボビーの協力の元陛下の負担は減った。それでもここ数年陛下にかかる負担は思いの外大きかった。突然倒れた陛下はもう起き上がる事は出来なかった。
亡くなる数日前、意識を取り戻した陛下に呼ばれた。
「リリー…アンヌ……、後は……頼…む……。アル…バート……を………」
「お義父様、もう喋らないで下さい」
か細い声で途切れ途切れでしか話せず、話していると苦しそうな姿だった。
「アルバートを、この国を民を護り支えます。明日にはジェイデンも着きますから」
「あ…の……と……き……、わ…た……し………は……、お……ま…え……の………、目……を………、し…ん……じ……た………」
「分かりました、分かりましたから、もう喋らないで下さい。お体に障ります」
陛下は目を閉じた。
隣国に居るジェイデンには陛下が倒れた時に連絡し急いでこっちへ向かっている。
私が陛下の手を握っても握り返す力は弱い。王妃様もグレイソンもお父様も毎日私室へ来る。勿論アルバートも私も、時間を見つけては顔を出している。それでも話せる時は少ない。
陛下の代わりに王太子のアルバートが全てをやらないといけない。私はアルバートの補佐をしつつ指示を出している。
それから二日後ジェイデンが到着した。
「父上」
ジェイデンの声に陛下が目を開ける。もう話す事は出来ない。それでも力を振り絞りジェイデンの頬を撫でる陛下。
その姿に涙が出る。
陛下は常々言っていた。ジェイデンを隣国へ渡したく無かったと。国の犠牲にさせた事を悔やんでいた。王女の事が好きで行くのなら快く送り出せた。それでも…。
ジェイデンは陛下が亡くなるまで陛下の側から離れなった。
それから一週間後、陛下は天に召された。
礼拝堂で陛下の葬儀が終わり、ジェイデンから話しかけられた。
「王太子妃殿下」
「はい、ジェイデン殿下」
「大変ではありませんか」
「ええ、ジェイデン殿下が置いていった荷物はようやく片付きました」
お父様達の協力の元、ようやく道筋を付ける事が出来た。政務がやりやすいように、情報が受け取れるように。
「流石優秀と言われるだけはある。ですが、優秀過ぎると出る杭は打たれますよ、私みたいにね」
「ご忠告ありがとうございます」
私はジェイデンの背中を見送った。
夜、私は寝付けなくて一人で庭を散歩している。
「王太子妃」
振り返らなくても分かる。
「ジェイデン殿下、もう夜更けです。部屋へお戻り下さい」
私はジェイデンに向かって答えた。
「リリーアンヌ」
私は「ふぅ」っと一息吐きジェイデンを見る。
「どうしたのジェイデン」
「後悔はした?」
「後悔は私が死ぬときにするわ」
「兄上は無能ではない。だけど有能でもない。なのに何故そこまでする必要がある」
「幼馴染みの夢を叶えてあげたい、それだけよ。それはアルバートだけじゃなくてタイラーにも言えるの。それにジェイデンにもよ」
「俺の夢はもう叶えられない」
「それも知ってる」
「どうしてそこまで兄上に拘る」
「好きだから、かな」
「好きだからか…。好きだけでリリーアンヌはどこまでするつもりだ?」
「分からないわ。それでも側で見守り支える、それは変わらないわ」
「国王になった兄上が変わってくれる事を祈ってるよ」
「そうね」
アルバートはきっと変わらない。無能ではない。有能ではないだけ。
「兄上の戴冠式を見届けるまで滞在するつもりだ」
「分かったわ」
一ヶ月後に戴冠式を行う予定でいる。
戴冠式を終えたアルバートは正式に国王に即位した。
ジェイデンと王女が国へ帰るのを見送る。
「これが最後です。兄上、きちんと見て聞いて調べてこの国を導きこの国の民の幸せを考えて下さい。護るべきは力のない平民です」
「分かってる」
「義姉上の事も護り幸せにして下さい」
「任せてくれ。ジェイデンも体には気をつけるんだぞ。たまには顔を見せに帰って来い」
ジェイデンの顔付きが変わった。弟ではなく隣国の殿下としての顔。
「国王陛下、即位おめでとうございます。この国の発展を隣国から祈っています」
「ありがとう。隣の国同士、これからも力を合わせていこう」
馬車に乗るジェイデンが一度私の方を見た。
見つめ合っただけ。それでも言いたい事は分かる。
『どう支えるのか見せてよ』
馬車が動き出し見送る。
アルバートが王になり私は王妃になった。
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