悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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22 24歳 ⑦

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夜、私は子爵と子爵令息と塔の外で話をする。塔の敷地の周りをローレン隊の騎士達が警備し誰も入れないようにした。


「子爵令息、私は説明したわよね?それなのに貴方は馬鹿なの?」

「妃殿下が何を言いたいのかは分かっています。ですが父上と共に、が我々の出した結論です」

「そう。王妃として貴方達に命を下します」

「はい」

「子爵、並びに子爵の一族には帝国へ行ってもらいます。帝国で一からやり直しなさい。貴方達は平民になり陶器職人の手助けをしなさい。管理、売買、全て貴方達の仕事です。

そして子爵令息、貴方に帝国の男爵の爵位を譲ります」

「ま、待って下さい」

「どうしました子息」

「男爵の爵位とは」

「それは私が帝国で持っている爵位です。それを貴方が継ぎなさい。男爵領には陶器の原料の粘土が取れます。それを陶器にする職人はこれから移動してもらいます。貴方は男爵として領地を栄えさせ領民を護りなさい」


私は子息に男爵領を託した。


「王妃殿下、貴女は何を…」

「子爵、だから言いましたよね。力になれたと。

命は下りました。貴方達には拒否権はありません。

それと、ここから街へ出たらなるべく目立たないように。服とお金はこちらで用意します。野宿になる場合もあります。

遠回りにはなりますが隣国を通り帝国へ入国しなさい。それと貴方達は今日からディモルトと名乗りなさい。ディモルト男爵が帝国の名です」

「ですが辺境を抜けれるとは思いません」

「そこは大丈夫です。隣国側の辺境伯はこのことを了承済みです。隣国のジェイデン殿下も了承済みです。辺境へ行くまでの道中で見つからないように平民に紛れなさい」

「辺境伯はこの国を裏切るつもりですか」

「少し違います。辺境伯は陛下ではなく私に忠誠を変えただけです」

「ですが私は王に刃を向けた身、私が逃げ出す訳にはいきません」

「ええ、貴方を逃げ出させる訳にはいきません。だから貴方は自らの意思で逃げなさい。私は追わないだけです。多少の時間稼ぎは出来ますから」

「もし私だけ残った時は」

「その時は死をもって償ってもらいます」

「分かりました」


子爵と子爵令息と少し夜の散歩をする。私は二人の前を歩く。


「少し私のひとり言を聞いてくれる?

私も誰彼構わず助ける訳じゃないの。虚偽をすれば罰するべきだし、領民が迫害されていたら助けるべきだし、見捨てられたら手を差し伸べるわ。

子爵はアルバートに刃を向けた。それは決して許されない事よ。許してはいけない事。それでも貴方が今まで虚偽をする事なく、領民達を護り真っ当に生きてきた。王を敬い臣下として忠誠を誓う。まるで貴族の鑑のような人。理由が何であれ子爵を罰するのが私の役目。

でもね、やり直す機会を与えるのも私の役目なの。確かに今回は本当なら該当はしないわ。それでも生きていてほしい。貴方や貴方達みたいな貴族の鑑のような人はそうそういないのよ。

やり直すと言ってもこの国での貴方達は反逆者として名も残せず死んだ事になる。帝国へ向けてここを出た瞬間から貴方達の名はもうない。だから名を変える事になる。もし息子さんや娘さん、一族の若者がこの国に婚約者や好きな人がいても一緒に連れて行く事も帝国で結婚する事も出来ない。

それに今後はこの国との取引は出来ない。この国に一歩も入る事は出来ないの。完全にこの国と縁を切ってもらうしかないの。貴方達を生かすという事はそういう事よ。

それでも生きていてほしい。それは私の勝手な願い。ただ自分の手で、命で、人の命を奪うのが嫌なだけよ。

それが正当な理由であろうと人を殺した事には変わらないでしょ?人の命を決める、生か死か、その重さに私は耐えられないだけ…。

私は弱い王妃なの…」


私は振り返り二人と向き合う。


「私、これでも虚勢を張ってるのよ。子爵にも言われたけど私は小娘だから」

「王妃殿下、それは、」

「ううん、小娘なの。アルバートが優しい王なら私は甘い王妃。無慈悲になれない弱い王妃。それが私」

「王妃殿下、それは違う。確かに私からすればまだ若い王妃殿下は小娘です。貴女より年上の当主しかいないこの国で貴女を小娘だと馬鹿にするでしょう。実際私もしました。何も分かっていない、そう思っていました。

それでも違った。貴女はこの国を把握している。この国の為に最善を尽くしている。陛下が若い王なら王妃も若い。そんな事当たり前です。

弱いと思うなら強くなりなさい。甘いと思うなら厳しくなりなさい。まだ貴女は若い。若いから間違えても良いんです。次、間違えなければ良い。間違えながら成長していけば良いんです。

私は成長するお二人を、お二人が築くこの国を、側で、支え見守りたかった……」

「子爵、私も貴方に見ててほしかった。支えてほしかった。私とアルバートに教えてほしかった」

「なんて私は馬鹿な事をしたんだろう…」


子爵は頭を抱え蹲った。


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