旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ

文字の大きさ
1 / 19

私は貴方の妻ですか?

しおりを挟む
 私には旦那様がいます。私は旦那様を愛していました。そう結婚一年目までは…。


 そして今日は三年目の結婚記念日。私は玄関ホールの前で旦那様をお迎えする為にお待ちしています。


ボーンボーン…

 鐘の音が12回鳴り日付が変わりました。

 旦那様は帰って来ませんでした。

 私は朝「今日は何の日かご存知ですか」と、そして「今日は早く帰って来て下さいね」と旦那様にお伝えしました。

 旦那様は騎士です。お義父様は騎士隊をまとめる騎士団長です。そして旦那様は第一騎士隊の隊長です。いずれお義父様の跡を継いで騎士団長になるお方です。

 騎士隊は休みがないと旦那様から聞いています。帰る事も出来ない、遠征もあるとても忙しい所だそうです。


「ジェームス」


 私は家令を呼びました。


「例の書類を」


 私は手を出し受け取ります。不備がないか確かめて、


「ではこれで進めて下さい」

「承知しました、奥様」

「ふふっ、奥様ね…」

「お嬢様の方がよろしいですか?」

「そうね。これからはそう呼んで頂戴」

「承知しました、お嬢様」

「アンネ」


 私はメイドを呼んで、


「早速準備します」

「もう準備は出来てます」


 アンネは気の利くメイドだわ。


「ありがとう。では明日の朝一決行します」

「「承知しました」」


 私は部屋に戻り確認します。


「アンネは本当に出来たメイドだわ」


 夫婦の寝室も今日で最後です。寝るつもりはありません。それでも見納めをしようと入っただけです。


 私は部屋のソファーに座り外を眺めています。


コンコン

「お嬢様、お時間です」

「分かったわ、ありがとう」


 私は夫婦の寝室のベッドの上に旦那様への最後の恋文を置いて部屋を後にします。


 お兄様が迎えの馬車を用意してくれると言っていたので馬車が着いたのでしょう。

 玄関へ行くと旦那様の執事が居ました。


「奥様どちらにお出かけですか」

「ごめんなさいね、最近調子が悪いものだからお兄様が一度帰って来いとおっしゃるの。迎えの馬車も寄こしてお兄様は過保護で困るわ」

「はあ」

「一度お兄様に顔を見せれば安心すると思うから」

「旦那様はご存知ですか?」

「昨日話をする予定でいたのだけど…。ほら旦那様は忙しいようだから…」

「旦那様の許可なく奥様を送り出す事は致しかねます」

「お手紙を書いてあるから大丈夫だわ。それに旦那様は今日から一週間遠征ではなかったかしら。もう出立させてるだろうし、この邸には一週間後しかお戻りにならないと思うの。そうではなくて?」

「そうですが」

「私も旦那様がお戻りになるまでには戻れると思うの。お兄様次第だけど…」

「分かりました。では必ず一週間でお戻りになられて下さい」

「そうね。出来るだけ努力するわ」


 私はアンネと馬車に乗り込み実家へ向かいました。

 実家の離れの別邸の玄関に馬車が横付けされ中へ入ります。


「ガネット」

「お兄様」

「よく戻って来た」

「お兄様すみません。出戻りになりました」

「構うものか」

「お義姉様にも申し訳がないわ」

「アビーも喜んでるから大丈夫だ」

「受理されるまでご迷惑をおかけします」

「俺もアビーもいつまでもここにいてくれて構わないと思ってる。もう一度考え直さないか?」

「お気持ちは嬉しいけど、私の気持ちは変わらないの」

「分かった。今日は一緒に夕食を食べよう」

「はい、お兄様」


 少ない荷物を部屋に片付け、私は旦那様と出会った頃を思い出していた。


しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

愛される日は来ないので

豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。 ──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

処理中です...