旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ

文字の大きさ
18 / 19

手紙

しおりを挟む

 旦那様へ


旦那様、私は貴方様を愛しておりました。
ですが、旦那様は私だけを愛してくださいませんでした。
私は旦那様を信じておりました。貴方様なら信じられると信じておりました。
お父様のように、元婚約者のようにならないと信じておりました。
剣に誓ってくれた貴方様を信じておりました。


旦那様は言いましたね。

隊長になると家に帰れない時もあると。
遠征に出る時は家を空けると。



旦那様、
私が新婚旅行で行きたいと言った七色に輝く湖は綺麗でしたか?
私が泊まりたいと言った、湖の横に建つホテルは快適でしたか?
ローラさんとお揃いの髪留めはローラさんの趣味ですか?


旦那様、
貴方様は私にピンクの花の花束をよく買ってきてくださいましたね。
花屋のアメリさんに選んで貰ったのですか?
私はどんな色の花も好きです。ですが、黄色の花を見ると元気になると以前貴方様に言ってから黄色の花が好きになったのです。
貴方様が毎日黄色の花を私に下さったからです。


旦那様、
珍しい薔薇が咲いてる薔薇園に連れて行きたいとおっしゃってくださいましたね。
薔薇は綺麗でしたか?
珍しい薔薇はどんな薔薇でしたか?
薔薇風呂に一緒に入りたいとおっしゃってくださいましたが、ミーナさんとは一緒に入られたのですか?


旦那様、
私には似合わない胸元が開いた真っ赤なドレスを頂きましたね。
サリーさんの体型で作られたのですか?
私にはサイズが合わなかったようです。胸の所に空間ができて着る事は出来ませんでした。
さぞサリーさんにはお似合いになったでしょう。
仮面舞踏会は楽しめましたか?
あ、そうそう、お一人でも仮面舞踏会に行かれてるそうですね。


旦那様、
お土産でサファイアのネックレスを頂きましたね。
カレンさんの瞳の様なとても綺麗なブルーでした。
ニヶ月騎士隊を伴い他国へ行きましたね。
船旅は嫌だと言っていましたが、カレンさんと一緒ならさぞ楽しい船旅だったのではないですか?
一歩も部屋から出られなかったそうですから。


旦那様、
遠乗りに出掛けようと言われましたが結局一度も行く事はできませんでしたね。
同じ騎士のキャルリーナ様となら遠乗りも楽しめたのではないですか?
芝生の上で食べるサンドイッチは美味しかったですか?
キャルリーナ様のお手製でしたものね。
二人で大きな木の後ろで何をしていたかは誰にも言いませんわ。
キャルリーナ様の旦那様にも。


旦那様、
今回の遠征はエミーさんと温泉へ行くそうですね。
温泉で疲れはとれましたか?
宿の部屋にも温泉が付いてるらしいですね。
一緒に入れましたか?
そういえば子宝の湯が有名らしいですよ?
一緒に浸かると子宝に恵まれるそうです。
一緒に浸かってきましたか?
お義母様に薦められて一緒に行けると楽しみにしておりましたが残念です。



旦那様、
家に帰って来ない日は寂しい思いをしました。
貴方様は連れ込み宿で過ごしていたのでお楽しみでしたね。


旦那様、
遠征に出掛けると怪我をしないか心配で夜も眠れませんでした。
貴方様は遠征先で愛しい方と愛を育んでおりましたのね。


旦那様、
私は産まれてから一度も旅行に行った事がありません。
新婚旅行も隊長になったばかりで休みが取れないと言われました。

「いつか必ず連れて行く」

と言った貴方様の言葉を信じておりました。
ですが、「いつか必ず」が叶う事は一度もありませんでしたね。



旦那様、
以前私が聞いた事を覚えておりますか?

「貴方様は富と名声が手に出来たらどうなさいますか?」

と、私はお聞きしました。

貴方様は、

「なってみないと分からないが正直な答えだ」

とおっしゃいました。


名声を手にした貴方様はどうなりましたか?
私はお父様や元婚約者の様な方を好ましく思わないと言いましたね。
貴方様は同じ男性になりましたか?
それとも違う男性になりましたか?


旦那様、
私は貴方様に言いました。

「誓って下さいますか?生涯私だけを愛してくださると、お父様や元婚約者のようにならないと」

貴方様は答えて下さいました。

「剣に誓う」

と。

それから私は言いました。

「では誓いを破った時、私の願いを聞いて下さいますか?」

と。貴方様は、

「誓いを破る気はない。だが願いを聞いて欲しいと言うのなら必ず聞き入れる」

と。


私の願いはただ一つです。


旦那様、これはお別れではありません。子供を産めず役目の終わった妻から、子供を産める妻へ交代するだけです。最後まで役立たずの妻で申し訳ございませんでした。

今回の遠征で子宝に恵まれてる事を心から願っております。



  旦那様に愛されなかった滑稽な妻より

しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

愛される日は来ないので

豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。 ──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

処理中です...