辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ

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キース視点


俺の従兄弟は15歳で辺境伯という家督を継いだ。伯父さんは隣国との争いで深手を負い亡くなった。伯母さんはジルが幼い頃流行り病で亡くなった。

伯父さんが国境に行ってる時でジルも流行り病に掛かり寝込んでいた。騎士隊に医者は常時居るけど、手は尽くしたが息を引き取った。

俺の父親は子爵令嬢だった母親と結婚し婿養子に入った。領地を栄えさせる為に子爵家の領地で住んで居た。俺には弟も居るし、剣を振るう方が性に合ってたから10歳の時、辺境の伯父さんの家に住まわせてもらい、ジルと一緒に剣を習い、家庭教師を付けてもらって勉強もした。毎日剣の打ち合いを夜遅くまでして二人で良く怒られた。

ジルが辺境伯を継いで、騎士隊の隊長になり、俺が副隊長になった。他の辺境は隣り合わせの大国と帝国と友好的で争いがない。大国とは王太子が大国の王女と婚約してるし、帝国は皇子が第一王女と婚約し連れ去った。ジルはだしに使われただけだったけど。

国で一番強いのはジル、俺は二番。争いは絶えないけど、何とかやって来れた。

ただ、ジルは辺境伯だ。ジルには早くお嫁さんを貰って欲しい。家督を継いでから息付く暇もなく恋人一人作れ無かった。俺は恋人居たけど。騎士隊と領主、二足のわらじで好きな人も出来ない。そもそも出会いがない。街には巡回で行くぐらいだし、後はまぁ、年頃の男だからね、娼館に行くぐらいだ。それも年に1回か2回、ジルは本当に忙しい。騎士隊ぐらい俺でも出来るけど、ジルは最後は必ず確認する。俺等を信用してない訳じゃなくて、責任感?真面目過ぎるんだよ。邸に戻れば領主としての仕事もする。

いつ女性と出会うんだよ。

もう10年以上好きな人もいない。


男だらけの辺境で育ったジルは色々な事に疎い。伯母さんが亡くなってから甘える事もしなくなった。というより出来なかった。伯父さんは辺境伯として騎士隊と領主で忙しく、争いが始まると国境沿いに行く。ジルを育てるメイドは子育てをした事がない若いメイドだった。ジルは辺境の騎士達が育てたようなものだ。

ジルの恋は子供の時で止まっている。



そんな時、国王から手紙が届いた。中には王命で第二王女と婚姻せよと書かれていた。第一王女の時もあったから、ジルは怒っていた。俺も少しジルを馬鹿にし過ぎじゃないかと思ったけど、嬉しくもあった。

王命って事は絶対だ。婚姻するって事は嫁を貰うって事だ。国で一番強いジルに王女を護らせる為だったとしても、嫁だよ?



王女が来る早朝、国境から鷹が飛んできた。鷹を飛ばすって事は緊急事案だ。ジルと一緒に確認したら、山側から賊が入って来たって事だった。それなら俺と数人で向かえば何とかなる。それなのにジルは国境へ向かった。

俺は王女を出迎えた方が良いって何度も言った。「初めが肝心だ、出迎えないと印象悪くなる。政略結婚だとしても最初から印象悪くしてどうするんだよ」何を言っても聞く耳を持たない。ここまできたら責任感じゃなくてただの頑固だよ。



次の日、王女の今後の護衛として紹介され、王女の話を聞いていた。王女って大変だな~って思った。国と国の為の結婚をして、国と国が争えば一番に殺される。それを幼い頃から教えられ覚悟を決めてる。うちの見習いだって、戦争が起こったら逃げるかもしれない。命を掛けて戦う覚悟なんてまだないよ。

それなのに、最悪は引き渡せ?領民と領地の為ならまだ分かる。騎士の為でも?まだ16歳の王女にここまで言わせて、はいそうですかってなる訳がない。ジルなら特にそうだ。「護ると決めたら護る」ジルはそういう男だ。


王女が面白い事を言い出した。ジルと愛し愛される関係になりたいって?おまけに好みって?ジル内心は嬉しいんだろうな~。 王女普通に可愛いし。


街にデートに行くらしい。御者をして、街で一緒に回って欲しいと頼まれた。お互い愛称で呼び合っていて、二人を後ろから見てても、王女もジルを嫌がってる様には見えない。むしろ、好意がある?って思ったくらいだ。王女はジルに買って貰うのは悪いと思っていて、ジルは王女に買いたい。 ジルって独占欲あったんだ。おまけに好意を寄せたら激甘か…。友のこんな姿を見れるなんて、思いもしなかったよ。自然に手繋いでるし、王女を見る目の甘い事。一昨日の朝のジルは何処行った? 俺の話を聞く耳持たなかった奴は誰だよ。


馬で遠乗りをするから荷物持ちで付いて来い?はいはい。

荷物を置いたら帰れ?はいはい。

後ろからゆっくりと付いていきますよ。二人の邪魔はしませんよ。 

帰り迎えに行ったら、二人の雰囲気が何か変わってた。まるで恋人同士の様。

いやいや、婚姻するんだから良いんだけどね?

ずっとくっついてて、王女がジルの頬に口付けたら今度はジルが口に口付けてた。王女も恥ずかしそうにしてるけど嫌がってない。そもそも嫌な相手の頬に口付けないか。


二人きりにさせても問題ないだろうと思って俺は荷物を持って先に帰って来た。暫くして二人が戻って来て、王女を馬から降ろした時にまた口付けしてたよ。どれだけ仲良くなったんだよ。

このまま順調に愛を育んで下さい。二人なら直ぐにでも育むよ。



王女様、俺の大事な従兄弟で友を愛して幸せにしてあげて欲しい。何もかも我慢して、自分を犠牲にしてきた友に愛を注いで愛を教えて欲しい。心を許せる場所に、安らぎを求める場所になって欲しい。



さぁ馬片付けて来よ。


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