褒美で授与された私は王太子殿下の元婚約者

アズやっこ

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素朴な疑問

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「そもそもテオン様と婚姻されてもレティアナ様は平民になりましたよね?もし本当にレティアナ様を貴族に戻したいと望むのであれば、酷なようですがリースティン君を誰かに預けるか、孤児院へ入れるしかありません。レティアナ様お一人なら条件は悪くなりますが貴族夫人になることは可能です」

「子供を捨てろと言うのか。お前はそれでも人か!」

「貴族の殿方が、自分の子供ではない子を望むとでも?女児ならまだしも男児を?それならなぜリーストファー様やテオン様は幼い頃こちらへ来たのですか?自分の子でも捨てる親がいるのを貴方は知っているでしょう?

確かに心が広い殿方はいます。自分の子ではなくても受け入れてくれる方はいます。ですがそれはほんの一握り。レティアナ様を愛し、レティアナ様の子供ならと受け入れてくれる殿方もいるでしょう。ですがそのような殿方と出会うのは奇跡に近いんです。

私はレティアナ様が貴族に戻りたいと望んでいるとは思えません。彼女も元男爵令嬢、子を産んだ自分の嫁ぎ先が後妻しかないと分かります。後妻なら前妻との間に子供がいる可能性が高い。男児のリースティン君は跡も継げず自分で生活をしていくしかありません。勉学に励むか剣の腕を磨くか、どちらにせよいずれは平民のように暮らしていかなければなりません。

ルイス様はどちらが幸せだと思いますか?平民のまま育つか、一度貴族になり平民になるか、どちらが幸せでしょうか。

私から見てレティアナ様は幸せに見えます。愛しい人との子を産み育てる、今の生活が幸せそうに見えました」

「お前がレティーの幸せを語るな!お前が幸せになれて、どうしてレティーは苦労しないといけないんだ!テオンが生きていればレティーも幸せになれた。働かなくても幸せになれたんだ」

「貴族が働いていないとでも?貴族と平民では抱えるものが違います。平民は自分の家族だけですが、貴族は領地で暮らす家族全員です。路頭に迷わせないように、餓死させない為に、貴族は領地を繁栄させないといけません。派手な暮らしをしているように映りますが、貴族も領民を守る為に日夜働いているんです」

「そうじゃない!俺はただお前がリーストファーと幸せなのが許せないんだ!幸せになるべきなのはお前じゃなくてレティーだ。夫に守られ幸せに暮らしてほしい、俺が望むのはそれだけだ」

「なら貴方がレティアナ様を幸せにしたらどうです?」

「はあ!」


ルイス様の大きな声が地下の牢屋に響いた。


「リーストファー様に守られ幸せに暮らしてほしいのではなく、夫に守られ幸せに暮らしてほしいんですよね?なら貴方が夫になればいいのでは?レティアナ様が夫を望んでいるのかは知りませんが…。

それと、私とリーストファー様が貴方から見て幸せに映っているのなら、それは私達が努力し築いたからです。赤の他人が初めて会った日から愛しあえると思いますか?片方は憎悪を抱いていて、片方は無理矢理婚姻させられて、それのどこに愛があります?

幸せに暮らす、幸せとは、自分が相手に寄り添おうと努力した先にあるものだと私は思います。自分自身を幸せにするのは捉え方一つだと思いますが、自分以外の誰かと幸せになるには多少なりとも努力が必要です。努力した先に芽生えた感情を大切に育てたから相手を愛し幸せだと思えるんです。

私が今幸せなのは、私が努力し得た感情です。リーストファー様が私の心に心を返してくれたから私達は幸せになれたんです。私の幸せを認めたくないのは勝手ですが、貴方の感情を押し付けないで下さい。

そもそもレティアナ様は貴族に戻りたいと貴方に仰ったのですか?夫が欲しいと、リースティン君に父親を与えたいと仰ったのですか?」

「それは…」


あれからレティアナ様と話す機会は何度かあった。その時話していても貴族に戻りたいとは聞いていない。貴族というしがらみが無くなり、今は楽しく暮らしていると言っていた。

もし、本当に貴族に戻りたいと思っているのなら、いつでも手を差し伸べる。

レティアナ様の幸せを考えるなら、レティアナ様が愛した人が夫になって欲しいと私は願う。

テオン様を亡くし、ようやく今笑顔で笑えている。私はその笑顔を守りたい。

婚姻だけが幸せではない。あの笑顔が消えるのならそれは幸せとは言えない。


「もし、レティアナ様が夫を、リースティン君に父親をと望んだとします。どうして貴方は自分が二人を幸せにしたいと、夫になり父親になると考えないのです?リーストファー様に頼む前に、貴方自身の手で幸せにしても良かったのでは?

貴方が殿下や私を恨む気持ちは分からなくもないんです。ですがリーストファー様にこだわるのはなぜです?リーストファー様もレティアナ様を愛していて私が障害ならそれも分かります。でも二人はそのような関係ではありません。それにレティアナ様自身が貴族に戻りたいと望んでいないんですよ?

素朴な疑問なんですが、レティアナ様の幸せをそこまで願うのなら、どうして貴方は自分という選択を排除するんですか?私にはレティアナ様に好意を抱いているように思えてならないのですが…。違ったらごめんなさい」


家族より強い絆の友人の愛しい人、それだけでここまで強い思いがあるのか…。それが私には好意にしか思えない。

私が幸せなのが許せない、それもあるのかもしれないけど、もしリーストファー様と私が離縁しても、リーストファー様がレティアナ様と婚姻する可能性は低い。援助なら今まで同様お金を送れば済む話。父親代わりと言っても王宮軍の副隊長を続けるのなら王都と辺境、離れていて父親代わりも何もない。二人を王都に呼んで暮らす?家を空ける事が多い王宮軍、結局一人で、近くには頼れる人もいない中での子育てよ?私なら頼れる人がいる辺境に残るわ。



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