私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ

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8 私 ①

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ワンスさんと隣国へ向かう。馬車で移動し、途中の宿に1泊し隣国へ入る。

宿では久しぶりに夫婦の営みをした。場所が変わると気分が変わる、そうなのかもしれない。ワンスさんも家では家族の手前我慢していたのかもしれない。

宿を出て隣国へ入る道中久しぶりにゆっくり会話をした。途中馬車を止めて街で食事をしたり、休憩がてら花畑を散歩したり、二人だけの時間が楽しかった。


「ワンスさん、ワンスさんのお嫁さんになりたい人は大勢いたと思います。どうして私だったんですか?」


平民には裕福な家、そこに嫁ぎたい女性は多い。私も使用人みたいな扱いでも洋服とか必要な物の購入を許された。派手好きなお義母さんや義妹に比べれば些細な金額かもしれないけど、お母様と暮していた時よりも一人で暮していた時よりも贅沢な暮らしが送れている。


「ハンナが俺の嫁で良かったよ」


どうして私か聞きたかったんだけど…。

ワンスさんは一言だけ言うと馬車の窓から外を眺めた。私は外を眺めて笑ったワンスさんの横顔を見ていた。



隣国に入り馬車が止まり馬車から降りれば行き交う人の多さに立ち並ぶ店の多さに活気づいた街並みに目を奪われた。


「すごい…」

「だろ?ハンナにも見せたかったんだ。ここは国境に近いから騎士達も多くて治安も良いんだ。

さぁハンナ、欲しい物は何でも買ってやる」

「何でもって」

「ハンナには今まで夫らしくしてこれなかっただろ?母さん達は欲しい物を買えるけどハンナはずっと遠慮してただろ?

母さん達は分かってないんだよ。誰が汗水垂らして働いた金だと思ってるんだか…」


ワンスさんは私の手を引き街並みを歩きだした。私はキョロキョロと辺りを見回す。

服屋に入り数枚購入し宝石店に入り髪留めやネックレスを購入した。それから寝間着、寝間着といっても見てる私が恥ずかしくなるようなスケスケの寝間着を購入した。いつ着るの?と思わず思ってしまった。


「ワンスさん…、これは、少し……」

「旅の記念になるだろ?こんな寝間着毎日着る物じゃないけどこの寝間着で誘ってほしいと男は思うんだよ」


ワンスさんも本当はこんなスケスケの寝間着が良かったのね…。だって何枚も購入していたもの。こんな寝間着領地では買えないし、旅の思い出として自分では買わない物を買うのも良いかもしれない。


ワンスさんと街並みを歩き今日の宿に着いた。活気づいた街の中でも一際目立つ高級そうな宿。


「ワンスさん、とても立派な宿ですが…」

「初めて二人きりで旅行するんだぞ、奮発するさ」


貴族が泊まるような宿。外装だけでなく内装も高級感漂う造りになっている。

宿の使用人が荷物を部屋まで運ぶ。部屋に入れば部屋が2部屋あり、入った部屋のテーブルの上に果物が置いてあった。奥の部屋には広いベッドが一つ。ベッドの脇にはソファーと小さいテーブルがあった。お風呂も広く足を伸ばして入れそうな浴槽。

カーテンを開ければさっきまで歩いていた街並みが見渡せる。


「夜になるとまた違った雰囲気になるんだ」

「楽しみです」


日が暮れ始めると一軒また一軒と店に明かりが灯る。暗闇の中で光輝きまるで地上の星みたいに見えた。


夕食が部屋に運ばれてきた。

料理も今まで食べた事がないものだらけ。


「なんか落ち着きません」

「二人しかいないんだから好きなように食べればいいよ」


ワンスさんはワインを飲んでいた。


「この街は商人の街って言われているんだ。人の流れ物の流れ、商人は必ずこの街を通り他国へ商売しに行く。だからこの街は商会の拠点になってる。それに他国の文化を取り入れ娯楽も充実しているんだ」

「娯楽ですか?」

「そうだ明日劇でも観に行くか」


他国を旅する商人が自国の物を売り他国の物を仕入れそして自国を発展させる。他国の文化を受け入れるこの街には柔軟な人が多いんだろうと思う。



幻想的な雰囲気と旅先で心が緩んだのか私には大胆な行動をした。昼間購入したスケスケの寝間着を着てワンスさんを誘う。

誘い方なんて分からないからただ寝間着を着てワンスさんの前に立っただけだけど、それでもワンスさんは嬉しそうに笑った。


「ハンナ」


耳元で荒い息を吐くワンスさん。今までで一番激しかった。

次の日の朝、少し怠い体を起こしまだ隣で眠っているワンスさんの髪を撫でる。

愛と呼ぶにはまだ早いけど、それでもこの旅行で距離が近くなったと思う。


「ハンナ?起きたのか?」

「はいもう朝ですよ?」

「ごめんなハンナ…、無理させたな…」

「無理なんて、私達は夫婦ですよ?」

「ああ、だけど…、ハンナには…、無理ばかりさせるから…」

「夫婦なんですから気にしないで下さい」

「ごめんなハンナ……、ごめん……」


まだ寝惚けているワンスさんの髪を撫でる。


「これからも助け合っていきましょうね」

「ああ…、ごめん……」


少しづつ少しづつ夫婦になればいい。

結婚して2年、ようやく夫婦として歩き出した気分だった。

お互い助け合い、息抜きしながら夫婦の時間を作っていけば自然と子供ができ家族になる。

私達に必要なのは夫婦の時間。

いつかワンスさんを愛する人と呼ぶ日が必ず来る、私はそう思った。



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