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7 子供
しおりを挟む結婚して2年。
「子供はまだなの?早く産んでちょうだい」
毎日お義母さんに言われる。
私も嫁に来た以上子供は欲しいと思っている。それにこの家でこれからも暮していくのなら必要。
跡継ぎの問題、それと私の為にも。
使用人のような扱いに、ワンスさんと夫婦と呼べるような関係じゃない今の現状で、今の私は何とか繋いでいる。
もう限界、それが本音…。
子供が産まれればワンスさんも変わるかもしれない。夫婦の時間を家族の時間を大事にしてくれるかもしれない。
それに子供が産まれればこの子の為にって私も頑張れると思うの。
ワンスさんに愛と呼べる感情はない。だってお互いすれ違いに近いのにどこを好きになるの?どこを愛せるの?
おばさん達は言ってたわ。親が決めた縁談でも夫婦になれば自然と愛せるようになるって。毎日顔を合わせ話していたらいつの間にか大切な存在だと気付くって。少しずつ夫婦になれるって。元々赤の他人なんだから喧嘩しながらお互いを知っていけばいいって。子供が産まれれば子供が家族にしてくれるって。
それに『母は強いんだよ、子供の為なら我慢が出来る』ってそう言ってた。
お母様は弱い人だった。愛に飢えた人だった。お祖父様にとってお母様は駒の一つにすぎなかった。もし娘をお母様を愛していたのなら出戻ってきた私達を受け入れてくれたと思う。お祖父様は使えなくなった駒を捨てただけ。
親の愛情を貰えなかったお母様はお父様に愛を求めた。本物か偽りか、お父様の愛情を信じ裏切られた。そしてまた新たな愛を求めた。
工場で小さい子の面倒を見た時、一生懸命私に腕を伸ばし抱っこをするとぎゅっと抱きついてきた。その時何ともいえない感情が生まれた。可愛い、落としちゃ駄目、今この場は私が守らなきゃ。
それが自分の子供ならこの家で暮らす支えになる。どんな扱いでもどんな関係でも耐えられる。
だから私は何度もワンスさんに言った。
『ワンスさん、子を…』
『うーん、まだ夫婦の時間を楽しみたいんだ』
『あの、お義母さんにも言われるんですがもうそろそろ、その、子供を…』
『子供な…、作ろうと思って出来る訳じゃないし自然に出来るまで待とう。それに作れと言われて作る事じゃないだろ?なかなか夫婦の時間も取れない中でようやく二人きりになれる時くらい子作りじゃなくてハンナとゆっくりすごしたい。
母さんには俺から言っておくよ』
それでもお義母さんからは毎日『子供』と言われる。
それに結婚して2年経っても子供が出来ないのは私に問題があるんじゃないかって言われる。『出来損ないの嫁』そう近所の人に話していた。
私に問題があるのなら仕方がない。でも問題があるのかないのかそれ以前の問題。
所謂子作りという行為。私だってどう子が出来るのかくらいは知ってる。
結婚式の夜初夜を迎えた。結婚して2年、ワンスさんと行為をしたのは数回。ワンスさんは初夜の夜以外は子種を外に放った。ただでさえ少ない行為、その上子種を外に放たれたら自然に出来るのを待つにも何年かかるか分からない。運良く出来るかもしれない。でもその運は今の所ない。
いくら私が子供をと望んでもワンスさんにその気が無ければ子供は出来ない。一人では子供は出来ないから。
先に寝ているワンスさんを起こすのは悪いと私から誘った事はない。口付けから流れで、そうなっても『明日も早いしもう寝ようか』と言われてワンスさんは寝てしまう。
ワンスさんとどう子供を作ればいいのか教えてほしい。
ある晩、珍しくワンスさんが起きていた。
「まだ起きていたんですか?」
「あ、ああ」
ワンスさんは慌てて読んでいた手紙を引き出しにしまった。
「なぁハンナ」
「はい」
「一度隣国へ行かないか?」
「隣国へですか?」
「友人がハンナに会わせろってうるさいんだよ」
「ですが私がこの家を空ける訳には」
「ハンナがいない間は誰か雇えばいいし、そもそもハンナが嫁に来るまでは使用人を雇ってたんだ。
それに結婚してから二人だけで過ごせる時なんてなかっただろ?いつも俺の家族が居て、そのな、子作りも、なかなかな…。
だから旅行へ行こう」
結婚してどこかへ行った事はない。そもそも旅行なんて初めて。王都から領地へ来た時は長旅と言っても旅行気分ではなかった。
「はい、楽しみです」
次の日、お義母さんからも
「子作り旅行へ行くんでしょ?確かにこの家ではそういう気分になりにくいわよね。この家の事は心配しなくていいから子供を作ってきなさいね。
なんなら子供が出来るまで帰ってこなくてもいいわよ」
旅行へ行くからと子供が出来る訳じゃないのに…。でもお義母さんの機嫌を損ねて旅行へ行けなくなるのは嫌だ。
旅行へ行くのは私も楽しみ。それにこの家から少しの間だけでも解放されるのなら、ようやく夫婦の時間を取れるのなら、心休まる時間にしたい。
働きすぎのワンスさんの為にも、私達夫婦の為にも、この旅行は良いきっかけになるかもしれない。
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