私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ

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26 真実 ①

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「その必要はない」


ガラン様の声に私と伯父様はガラン様を見た。


「身請け金は俺が用意し支払った。それに話ももうついてる」

「どうして、どうしてそんな事をガラン様がするんです」

「お前を自由にする為だ。それからあんた、伯父とはいえどハンナの選択を邪魔はさせない」

「そんな…」

「あんたがハンナを大事に思っているのは分かった。あんたの家に行った時、あんたは本当に憔悴しきっていた。ハンナの事を伝えた時の涙も嘘ではなかった。生きてると知って着の身着のまま出て来たあんたは純粋にハンナの生死を確かめようとここまで来たのも演技だとは思えない。休憩もまともに取らずここまで俺に付いて来たしな。

だが、あんたが身請け金を払えばこいつは今度はあんたの為に我慢する。俺はそれが嫌だ」


確かに伯父様の服は少し汚れている。やつれているようにも見えた。伯父様は貴族らしくいつも小綺麗にしている。

それが…、


「馬なんてどうせ乗り慣れてないだろ。ずっとしがみついていたからな」


私が不思議そうな顔をしていたのをガラン様は見抜き私を見て答えた。


「それだけお前が心配だったんだ。生きてると言われても自分の目で確かめるまでは信じられなかったんだろうな。

あの母親の兄とは思えないな」

「ふふっ、そうですね」

「ハンナ、お前は自由だ」

「自由と急に言われても…」

「国へ帰ってもいい。この国に残ってもいい。これからは自分の為に生きろ」


急にそんな事を言われても直ぐに答えは出ない。自由と言われてもやりたい事はない。国へ帰っても私の居場所はない。この国へ残っても私の居場所はない。

伯父様の家に行っても私はお邪魔虫。貴族令嬢の嗜みさえない私は何の役にもたたない。それにもうそろそろ25歳になる私に今更教養やらマナーやらが身につくとは思えない。平民の暮らしの方が長いんだから。

それに娼婦まで落ちた私の嫁ぎ先もない。

嫁ぎたい訳ではないけど一生穀潰しになるのも嫌。かと言ってこの国を知らない私にはこの娼館に残る選択しかない。ようやく見つけた私の居場所。マダムも姉さん達も私には大事な人達。


「ゆっくり自分の納得する答えを見つければいい」

「はい」


納得する答えを見つけるまで私はここに居てもいいのかしら。ガラン様は身請け金を払ったと言った。それはここを出る事を意味するくらい私でも分かる。

それに、身請け金は多額と聞く。

それをガラン様に返すには一生働いても返せないかもしれない。

それよりも気になる事は沢山ある。


「ガラン様」

「なんだ?」

「伯父様の家に行ったと言っていましたが…」


違う国へ行く事は簡単だけど…、伯父様の侯爵家を探すのは難しいと思う。だって私は侯爵家と言っただけでハーツ侯爵家とは言っていない。お父様の事故、平民になった未亡人と子供、それだけでも調べる事は出来るとは思うけど…。

ガラン様が王都に行くと言って3ヶ月。この国の王都からあちらの国の王都までどれだけ急いでも1ヶ月以上はかかるはず。でもそれは早馬の場合。普通は休憩し宿に泊まり2ヶ月はかかる。もしかしたらもっとかかるかもしれない。

この辺境から王都までは普通に行って3週間はかかると聞いた。でもそれは宿には泊まるけど休憩は最低限だと言っていた。それにあちらの国の王都からここまでも3週間位はかかる。

いくら馬に長けたガラン様でもあちらの国での滞在は1ヶ月もないはず。その間に伯父様を捜し話をする。将軍と言えど伯父様がすんなり会うとは思えない。伯父様は用心深い人だもの。隣国の将軍が会いに来たと言っても騎士でない伯父様が隣国の将軍のガラン様の名を知っていたのかしら。騎士なら名を知っていてもおかしくはないけど。

隣国とは剣を交えた事はない。どこの国とも戦をしたのは何十年も昔の話。賊は出ても平和な国だった。

それに私の国では将軍というのは馴染みがない。伯父様は平民を差別する人じゃないのは知ってる。領地でも領民にまざり一緒にご飯を食べたり領民の子供達と遊んでいるのを何度も見た。

その時私は伯父様の姪だと知られたくなくて遠くから見つめるだけで輪には入らなかったけど。領民の子供達よりも少ない一言二言会話するだけ。子供の頃頭を撫でられた時は伯父様の手を払った事もある。

あの時はお母様の事で疲れていて侯爵家に置いてくれなかったお祖父様や伯父様を恨んでいた時だったから。今私が辛いのはお祖父様と伯父様のせいだと思ってた。

でも本当の原因はお父様。お父様が死ななければ今も貴族として誰かと婚約し結婚していたかもしれない。

でも伯父様はそんな私をいつも気にかけてくれていた。私達に渡すお金も伯父様個人のお金だった。お祖父様は私達が領地に向かう時『お前達にはびた一文も出さない』と言っていた。当主のお祖父様がお金の管理をしていたから伯父様は毎月自分のお金を私達に渡していた。

それを知ったのはお母様が出て行った後からだけど。


伯父様が取引先でもない他国の人間が来て直ぐに会うとはどうしても思えない。

将軍だから騎士だから、貴族だから平民だからと身分で選ぶ人ではない。信頼や信用を大事にする人。

そんな伯父様が?



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