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27 真実 ②

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汚れがひどい伯父様を湯殿に案内し、部屋には私とガラン様だけ。


「どうして伯父様はガラン様と会う事になったんでしょう。ガラン様は将軍様とはいえ隣国の人間です。伯父様は用心深い人です。知りもしない隣国の人間と会うとはどうしても思えなくて…」

「それはな、裏技を使ったんだ」

「裏技ですか?」

「これだ」


ガラン様は服の中から取り出した物を手のひらの上に置いて私に見せた。

初めて見る物で指輪にしては小さく指輪のように細くない。それに円形とはいえ指輪のように丸く繋がってない。途中隙間みたいに切れている。


「この国の国章は知ってるか?」

「知りません」

「この国の国章は鷲が羽を広げている姿なんだ。王の長男にはその紋章が受け継がれる。持ち物全てにな。

で、次男には羽をたたんだ紋章が受け継がれる。これだ」


私は紋章の絵を見た。鷲なのかは分からないけど鳥が羽をたたんでいるのは分かる。

でもそれって…


「俺は親を知らない。でも赤子の俺の指にこれがはめられていた。爺さんは…」

「あの、無理には聞きません」

「いや、俺が聞いてほしいんだ。

捨てられた俺を爺さんが拾って育てたとずっと思ってたんだが、爺さんは俺の母親の騎士だった。父親に嫁ぐまでずっと母親の護衛騎士だったんだ。母親は俺を産んで実家の信頼するメイドを乳母にした。産まれたばかりの俺は乳母の元にいて爺さんは母親から頼まれ俺を護る為に一緒に乳母の所にいたんだ」


ガラン様は話し続けた。私はそれを黙って聞いている。

ガラン様の話では、

ガラン様のお父様、この紋章入りの物の持ち主。前国王の弟、王弟だった。この国は王弟でも王宮で暮らし出産したばかりのお母様はガラン様を死産として乳母の元に隠した。その時お父様はガラン様の指に自分の持ち物をはめた。

父とは名乗れない、それでも我が子を愛している、きっとそんな思いで…。

前国王の時代、この国は戦続きだった。野心家で国を広げたい国王。人を駒と見ていた国王に民の不満は膨れ上がった。殺戮を面白がる、まるで人を虫のように扱い何百匹、何千匹死んだと笑っているような人だったらしい。

そこで王弟のガラン様のお父様を祭り上げる者達がいた。

『国王は人に有らず。政は人が行うもの』

貴族、平民、民の心は王族から離れていると心を痛めた王弟は国王の兄に対して謀反を起こした。

王弟には貴族や騎士が付いた。勝算はあるはずだった。

だけどどこにでもいる裏切り者

殺戮を楽しむ国王は血を分けた弟ですら何度も刺し息絶えても笑いながら刺し続けた。お父様の次はお母様、お母様の実家、実家の使用人、それからお父様に手を貸した者達全てを殺した。

『我に逆らえばお主らもこうなる』

と積み上げられた亡骸の上に座り、残った貴族達に笑いながら言った。お父様の体に剣を刺して。


乳母は赤子のガラン様と護衛騎士だったお爺さんと一緒に王都から離れた実家にいた。謀反が失敗に終わりもしかしたらここも捜されると思いお爺さんはガラン様を連れてここまで流れて来た。

お爺さんの感は当たっていて乳母もその家族も殺された。それから護衛騎士だったお爺さんを捜し出す者達に追われた。見つからないように獣道を通り、この辺境で浮浪者として隠れながら生きた。


「この剣は爺さんの形見だ」


ガラン様は持っている剣を愛おしそうな寂しそうな顔で紋章入りの剣を撫でている。


「この剣は母親と結婚した時に父親から貰った物らしい。辺境の傭兵に入った時に今の辺境伯から剣がないならこれを使えと貰った。爺さんの形見と知ったのは将軍になってからだが」


だから剣にも王弟の紋章が刻印してあるのね。


「それでこれだが、王族だけが身に着ける耳飾りだ。俺は知らずにただ無くしたくなくてたまたま耳に着けた。今の国王が王太子の時、たまたま王太子が指揮する戦で服を切られこれが落ちそうになった。で耳に着けただけだった。それをたまたま見た王太子に呼ばれた。

王太子は乳母から離れた1歳頃から俺の父親に育てられたらしい。当時の国王は我が子に興味はなく王妃は第二子を宿していた。父親は兄のようになってほしくないと王太子に王としての心得を教えた。それから母親と結婚し俺が宿った。『何度も話しかけたのを覚えているか?』と聞かれたが知るかって言うんだ。俺は腹の中だったんだぞ」


たまたま、それは偶然か必然か…。


「戦は勝利し王太子は国王を毒殺した。

『妹は女だからと父上に殺された。弟は病弱で弱い者は邪魔だと幽閉され衰弱死した。弟の死をきっかけに母上は自ら命を絶った。そしてお前が見つかれば父上はお前を殺すだろう。ようやく見つかった私のもう一人の弟だ、お前まで殺されるのは私も我慢ならない。父上には退いてもらう』

戦場から帰る前の晩、天幕に呼ばれて実の親と耳飾りの事を聞かされた。

毒殺を知るのはごく僅かだ。一応老衰になってるからな。あの爺が死んで王太子が国王になりこちらから仕掛ける戦は無くなった。今までの恨みで仕掛けられる事は何度もあるが。そして国王は俺に将軍を授け側に置いた。王弟の息子というのは伏せてな。

俺の父親は謀反を起こした罪人だ」


それだって民を護る為に起こした事。前国王がどんな人なのかは分からない。それでも話を聞いてるだけで暴君なのは分かる。

誰がガラン様のお父様を咎めるというの?



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