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33 褒美
しおりを挟む「やっぱり決勝戦だけあって見応えがあるわね」
お母様の声に私は考えるのを止めた。
「もう始まってるの?」
「見てなかったの?」
「……考え事してたから…」
「フランキーも可哀想ね。貴女に見てもらえないなんて」
「今からちゃんと見るわ」
私はフランキーが戦う姿を目で追う。
頑張って、頑張ってと念を送る。
「頑張ってフランキー」
決勝戦まで来たのよ?優勝するんでしょ。
私は一喜一憂した。フランキーが攻めれば喜び攻められれば『もう何してるのよ』と心配した。
「実力は互角。後は気持ちの強さだな」
「気持ちの強さ?」
「負けたくない、必ず優勝するんだっていう気持ちの強さ」
「それは相手も同じよね?」
「確かにな。だからここまで来たら最後は己との戦いだな。お互い譲れない思いは同じ。少しの油断も隙も相手に与えてはいけない。騎士は鋼の精神を持つと言われているが俺達みたいな若い者はまだ持ち合わせていない。
決勝戦、相手の剣を弾いたら優勝、どうしても頭の中によぎる。いかに目の前の敵に集中できるか、いかに自分の剣を振れるか、己の気持ちの強さ、それが勝敗の分かれ目になる」
「でも実力以上の力を出せる時はあるわよね?」
「確かに実力以上の力を出せる時はあるかもしれない。でもそれは日々の鍛錬や稽古をしているからだ。日々の鍛錬や稽古は嘘をつかない。日々の鍛錬や稽古は蓄積され自分の力になる。
模擬戦、大観衆が見守る中、周りは熱を帯び、経験した事のない独特な雰囲気の中、この場は俺達若い者には初めての経験に近い。実力を出しているようで出ていない。
それに今は決勝戦、皆がその行方を見ている。集中力、己に蓄積された力、己を信じて剣を振る。でも最後はいかに平常心を保てるかだと思うぞ」
長い戦い、見ているこっちも力が入る。
「もうそろそろですね」
「どっち?フランキー?相手?」
「さあどちらでしょう」
「教えてくれてもいいじゃない」
私は二人の戦いを目を離さず見つめる。
長い長い戦いはフランキーが相手の剣を弾いて終わった。相手の騎士と挨拶を終えお互い称えあっている。
「フランキーが勝ったわ。優勝したのね、ね、ルイ」
「ああ、あいつの勝ちだ」
「フランキーすごいじゃない」
『勝者 フランシス』
歓声があがりフランキーは手を振っている。後は褒美を貰うだけ。
模擬戦場から階段を上り国王陛下の前で片膝をついた。
「騎士フランシス、素晴らしい試合だった。勝者のお主には褒美を贈ろう」
「ありがとうございます陛下」
伯父様嬉しそうだわ。それはここにいる皆が思う気持ち。
「褒美は何がいい。剣か?」
「陛下、褒美で頂けないものは何がありますか?」
「国と民、そして統治する権利、その権利を持つ者、その後継者、国の存続が危ぶまれる程の金子、他国と戦になり得る要求、他者に害を与える要求、爵位、領土」
国と民を統治するのは国王、その後継者は王太子、それは駄目。お金も多額は駄目。他国と戦になる要求、他国の王族の妻を娶りたいとか?後は他国の領土が欲しいとか、かしら。それは勿論駄目よ。他者に害を与える、それは幅広いわよね?例えばお兄様から王位継承権を奪うとか、お兄様を追放とか?悪事をしているのなら正当に訴えるべきだわ。何もしていないのにそれは駄目よ。爵位や領土も模擬戦の褒美で与えるほどの物ではないわ。他国との戦の活躍とかならまだしもね。
「では、その他なら褒美として頂けるという事ですか?」
「それはお主の褒美を聞いてから答えよう」
伯父様も困ってるわ。そりゃあ困るわよ。模擬戦の褒美とはいえあげれる物とあげられない物はあるもの。剣だって弓だって槍だって馬だって、褒美にしては高価よ?でも騎士として今後使う物だから伯父様は許してきたの。誰だって高額な物は直ぐに買えないわ。でもそれが騎士達の今後の励みになり士気に繋がるからよ?来年こそは優勝しようって。だからだわ。
「では私の褒美はグレース大公女を口説く二人だけの時間です」
「口説く時間、とな」
私を口説く時間?フランキー何を言ってるの?
「陛下発言を」
「なんだ」
「それは先程陛下が言われた他者に害を与えるに該当します」
もうお兄様、伯父様が『またか』って顔をしているじゃない。ここにいる皆が思ってるわよ?
「そうとも捉えられる」
「ですが、本人が受け入れるのならば該当しないと思います」
フランキーまで…。
「それもそうか」
「陛下、家族を代表して一言よろしいですか?」
「言ってみろ」
「勝者の褒美だとはいえ妹はまだ婚約者がいません。それはフランシス殿下も同じです。
騎士フランシスと言えど第二王子なのは皆が周知しています。殿下は口説く時間と言いましたが、相手は殿下、断った際悪く言われるのは妹の方です。
それに妹には好意を持った男性と婚約してほしいと願う家族の心も配慮して頂きたい。
それと陛下、褒美に王命を出す、までの事ではないですよね。王命はそう安安と出せるものではありませんから。
陛下、ご決断を」
お兄様の言いたい事はあれよね。
たかが褒美にフランキーと二人きりで会わせる事は出来ない。
それに第二王子のフランキーが口説くと言う事は婚約が周りから固められる。それを断れば私は周りから責められる。
殿下の何が不満だ、殿下の申し出を断るとは何事だ、女性は黙って従っていればいい、そんな所?
強引な婚約は家族として認めない。
だから王命なんか出すなよ。
お兄様の気持ちは嬉しいわよ?
でもね…
伯父様の顔を見て。
一気に老け込んだじゃない。
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