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34 難攻した話し合い
しおりを挟む「ではグレース嬢本人が受け入れてくれるか確認をして下さい、陛下」
「陛下、殿下からの申し出を妹に拒否できるとお思いですか。妹はか弱き女性です」
「ロナルド大公子、ロナルド殿は兄であって本人ではありません」
「殿下、私は兄だからこそ妹を護る権利があります」
フランキーなんて立ち上がってお兄様も立ち上がってお互い顔を見合わせてるわ。
「ではロナルド殿、グレース嬢が断った際皆に責められなければ二人きりで口説く時間を作ってもいい、そう捉えても良いという事ですね」
「年頃の男女が二人きりなのは些か問題だと思います。もし殿下がどうしても妹を口説きたいと言うのなら私も同席します」
「グレース嬢も兄の前で私に口説かれるのは恥ずかしいと思います。それに口説く為に懇願するんですからそれを黙って見ててくれますか」
「懇願するとはいえ妹を護る為に多少口を挟みますが、私が隣にいて口説けないと言うのなら諦めたらどうですか、フランシス殿下」
「ロナルド、そのくらいに」
「アルフレッド殿下は口を挟まないで頂きたい。これはグレースの家族の私とフランシス殿下の問題です」
「ロナルド、皆の前だという事を忘れるな」
「ではアルフレッド殿下も無理を言うなと口添えして頂けませんか?フランシス殿下は今は騎士フランシスだとしても殿下の弟君です」
そうね、お前の弟だろ、黙らせろ、そう言うわよね。
「フランシス、他の褒美はないのか」
「殿下、褒美を変えるつもりはありません」
「分かった、私も同席しよう」
「それでは褒美ではなくて親族の集まりです」
それもそうね。いとこの集まりだわ。
お父様を見ると両眉を上げて『俺は中立だ』と言っている。どっちの肩も持たないって事ね。
フレディもお手上げって感じね。
「両者の言い分は分かった。では本人に確認しよう。本人が受け入れた場合、褒美とする。だが、本人が受け入れない場合は他の褒美に変えよ、いいなフランシス」
「はい陛下」
「ロナルドもいいな」
「はい陛下」
「グレース」
「はい陛下」
「お主はフランシスの褒美は褒美に値するか」
フランキーは私をずっと見ている。
フランキーだけじゃなくてこの会場全員が私を見ているわね。
前の時の私なら『謹んでお受けします』そう言ったわ。
でも今の私は違う。
「陛下、発言をお許し頂けますか」
「なんだ」
「もし褒美を受け取りフランシス殿下と二人でお会いしてもそれは婚約にはなりませんか?」
「婚約は本人同士同意の場合だ」
「では、お断りするかもしれませんがその場合私の立場はどうでしょう」
「今と変わらない」
「それは陛下の臣下も同じ意見だと受け取りますがよろしいでしょうか」
「ああ」
断っても私達はいとこ。いとこなら今後会ったとしても変な噂話にもならないわね。
「皆様の目に付く所でお会いする事もあるかと思います。後に咎められる事はありますか」
「それはない。もしそのような事があれば私が責任を持とう」
なら責められる事はないわね。もし私を責めたら伯父様が対処してくれる訳だし。
「最後に、フランシス殿下、これは褒美ですか?」
「褒美だ」
高い物じゃないけど、誰かと過ごす時間は価値のあるもの。
それに優勝したら褒美をあげると約束したのは私。
「陛下、褒美を受け入れます」
「そうか、受け入れるか」
伯父様のホッとした顔。
「勝者騎士フランシスの褒美は大公女グレースを口説く二人だけの時間にする」
「ありがとうございます陛下」
はあぁ、ようやく終ったわ…。
フランキーは階段を下り私の席まで来た。
「グレース、見てたか、俺勝ったぞ」
「そうね、おめでとうフランキー」
嬉しそうに笑うフランキー。
フランキーは私の手を握った。
「褒美はもう貰った。なら今から二人だけの時間でもいいよな?」
「今から?お祝いとかあるんじゃないの?」
「俺は今すぐにお前を口説きたいんだ」
「お母様」
私はお母様に確認した。
「フランキーが自分の手で得た時間よ。そして貴女はそれを受け入れた。
フランキー頑張りなさいよ」
「叔母上、ありがとうございます。グレースを連れて行ってもいいですか?」
「ええ、でもグレースを泣かせるような事はしないでね」
「それは勿論」
「でもお兄様が…」
「ロニーは任せなさい」
お父様の顔を見たら『任せろ』そう言っていた。
「グレース行くぞ」
怖くてお兄様の顔は見れないけどお父様とお母様に任せておけば大丈夫ね。
フランキーに手を引かれ私は会場を後にした。
後ろでは『ルイ』とお兄様の声が聞こえた。でもきっとルイはマークスとアルロに止められる。
いつもの庭園
急いで準備するメイドの姿
「準備が出来るまで散歩でもするか」
「それはいいけど」
手を繋いで庭園を散歩する。
「なあグレース、俺、成果出しただろ?」
「成果?」
前に話してたのこの事だったの?
「お前が認めさせるには成果を残すしかないって言ったんだぞ」
「言った、わね…。私が言ったわ」
「それに貴族達が集まる場所で褒美を貰った」
「そうね、それも私が言ったわ」
「な?」
そう言って笑ったフランキー。
なら認めて貰えない婚約を認めてもらうには、それは、
私?
フランキーがずっと好きだったの、
私なの?
幸せそうに笑うフランキー。
フランキーのその笑顔は幼い頃私に向けていた笑顔そのもの。
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