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――札月沖長《ふだつきおきなが》は一度死んでいる。
己の死は明確に覚えていた。自分が乗っていたバスがジャックされ、その犯人が捕まりそうになったことで自暴自棄になり、持っていた銃を乱射したのである。そしてその銃が幼児に向けられた時、咄嗟に身体が動いてその子を庇ったため、沖長の胸に命中してしまったのだ。
激痛とともに全身の力が抜けていくのが分かった。同時に理解した。ああこれはもうダメなヤツだと。自分の死を実感し、意識が遠のいていった。
しかし次に覚醒した時は、目の前にまさかまさかの神と名乗る存在がいた。さらに言えば自分の周りには、何故かあの時バスに乗っていた数人の男女もいたのである。
何でも神が言うには、自分たちの手違いで沖長たちが犠牲になってしまったとのこと。それを聞いて暴言を吐きまくる奴や、泣きじゃくる奴、絶望に苛まれる奴などいた。
ちなみに沖長はどこか達観しており、「そういうこともあるかー」と、どこか他人事のように思っていた。
実際死んでしまったのだから、誰かを恨んで怒っても無意味だ。そんなのしんどいだけだし、その代わりに天国があったら行かせてくれればいいなと適当に考えていた。幸いにも自分を育ててくれた両親はすでに他界していたし、家庭も持っていなかったので、後顧の憂いなどなかった。
まあ強いてあげれば、まだ三十歳半ばと若かったし、食べることが好きだったから、もっといろんなグルメを堪能したかったという思いはあったが。
それでも普通オブ普通な、特筆すべきことが何にもない人生だったから、最期に激的な終わりを迎えた事実は、ほんの少しだけ物語の中の人物になれたみたいで嬉しかったりした。
そんなことを考えていると、神がお詫びとしてある世界へ転生させるという提案を出してきた。それを聞いた数人は、
「やったぜ! ●●の世界なんてツイてる!」
「マジで!? じゃあハーレム作り放題じゃん!」
「ククク、僕の時代が来たようだな。実に楽しみだよ」
などと、手の平を返すように上機嫌になっていた。
しかも神様は、それぞれ転生の際に特典を授けると言うと、賑わっていた連中がこぞって神に詰め寄り我先にと欲望を曝け出していた。
最強の魔力や武力、洗脳や透明化のスキル、ニコポナデポ(古い)、巨万の富や絶対的な幸運、不老不死や万能の知識などなど、次々と出るわ出るわで聞いているだけで沖長も呆気に取られてしまう。欲張りにもほどがあった。
そんな連中に対しタジタジになる神を見ながら、沖長は「神も大変なんだなぁ」と思いつつも、自分もまた特典について思考していた。
するとさすがに横暴が過ぎたのか、神の怒りが発動し、適当に彼らに特典を授けると、さっさとこの場から追放していった。聞けば転生先へ送り出したとのこと。
そして最後に自分だけとなったのだが、神の怒りに触れたことで自分も適当に送り出されるのだろうと覚悟していたけれど、神は何故か欲しい特典について尋ねてきたのである。
本来なら手違いとはいえ、神が選んだ特典を与え転生させるだけでも十分過ぎる対価になっているらしく、あれほど醜く欲望を曝け出した者たちには過ぎた対応だと愚痴っていた。
なら自分もそのように対応してくれればいいと沖長が言うと、どうやら自分に関してはまた特例処置を施してくれるとのこと。しかも特典は二つ与えてくれるという。
理由は、死ぬ際に幼い子供を守ったのが徳を積んだらしい。やはり生きているうちに良いことはしておくものみたいだ。
そういうことで沖長は、考えていた特典を口にした。
【寿命を全うできるような丈夫な身体】
まずはこれだろう。前世ではどちらかというと貧弱で、スポーツとかで活躍できる人を羨ましく思っていたので。あとは健康的に過ごしたいから。病気とか怖いし。
最後に二つ目は――。
沖長の願いは聞き届けられ、転生の時間が迫ってきた。
そしていざその時間がやってきた直後のことだ。
『そっちの世界は大変だろうけど、できるだけフォローはしたつもりである。楽しんでくれたら何よりだ』
その言葉を受けた瞬間に視界はブラックアウトし、気づけば六歳児の身体になっていたのである。
己の死は明確に覚えていた。自分が乗っていたバスがジャックされ、その犯人が捕まりそうになったことで自暴自棄になり、持っていた銃を乱射したのである。そしてその銃が幼児に向けられた時、咄嗟に身体が動いてその子を庇ったため、沖長の胸に命中してしまったのだ。
激痛とともに全身の力が抜けていくのが分かった。同時に理解した。ああこれはもうダメなヤツだと。自分の死を実感し、意識が遠のいていった。
しかし次に覚醒した時は、目の前にまさかまさかの神と名乗る存在がいた。さらに言えば自分の周りには、何故かあの時バスに乗っていた数人の男女もいたのである。
何でも神が言うには、自分たちの手違いで沖長たちが犠牲になってしまったとのこと。それを聞いて暴言を吐きまくる奴や、泣きじゃくる奴、絶望に苛まれる奴などいた。
ちなみに沖長はどこか達観しており、「そういうこともあるかー」と、どこか他人事のように思っていた。
実際死んでしまったのだから、誰かを恨んで怒っても無意味だ。そんなのしんどいだけだし、その代わりに天国があったら行かせてくれればいいなと適当に考えていた。幸いにも自分を育ててくれた両親はすでに他界していたし、家庭も持っていなかったので、後顧の憂いなどなかった。
まあ強いてあげれば、まだ三十歳半ばと若かったし、食べることが好きだったから、もっといろんなグルメを堪能したかったという思いはあったが。
それでも普通オブ普通な、特筆すべきことが何にもない人生だったから、最期に激的な終わりを迎えた事実は、ほんの少しだけ物語の中の人物になれたみたいで嬉しかったりした。
そんなことを考えていると、神がお詫びとしてある世界へ転生させるという提案を出してきた。それを聞いた数人は、
「やったぜ! ●●の世界なんてツイてる!」
「マジで!? じゃあハーレム作り放題じゃん!」
「ククク、僕の時代が来たようだな。実に楽しみだよ」
などと、手の平を返すように上機嫌になっていた。
しかも神様は、それぞれ転生の際に特典を授けると言うと、賑わっていた連中がこぞって神に詰め寄り我先にと欲望を曝け出していた。
最強の魔力や武力、洗脳や透明化のスキル、ニコポナデポ(古い)、巨万の富や絶対的な幸運、不老不死や万能の知識などなど、次々と出るわ出るわで聞いているだけで沖長も呆気に取られてしまう。欲張りにもほどがあった。
そんな連中に対しタジタジになる神を見ながら、沖長は「神も大変なんだなぁ」と思いつつも、自分もまた特典について思考していた。
するとさすがに横暴が過ぎたのか、神の怒りが発動し、適当に彼らに特典を授けると、さっさとこの場から追放していった。聞けば転生先へ送り出したとのこと。
そして最後に自分だけとなったのだが、神の怒りに触れたことで自分も適当に送り出されるのだろうと覚悟していたけれど、神は何故か欲しい特典について尋ねてきたのである。
本来なら手違いとはいえ、神が選んだ特典を与え転生させるだけでも十分過ぎる対価になっているらしく、あれほど醜く欲望を曝け出した者たちには過ぎた対応だと愚痴っていた。
なら自分もそのように対応してくれればいいと沖長が言うと、どうやら自分に関してはまた特例処置を施してくれるとのこと。しかも特典は二つ与えてくれるという。
理由は、死ぬ際に幼い子供を守ったのが徳を積んだらしい。やはり生きているうちに良いことはしておくものみたいだ。
そういうことで沖長は、考えていた特典を口にした。
【寿命を全うできるような丈夫な身体】
まずはこれだろう。前世ではどちらかというと貧弱で、スポーツとかで活躍できる人を羨ましく思っていたので。あとは健康的に過ごしたいから。病気とか怖いし。
最後に二つ目は――。
沖長の願いは聞き届けられ、転生の時間が迫ってきた。
そしていざその時間がやってきた直後のことだ。
『そっちの世界は大変だろうけど、できるだけフォローはしたつもりである。楽しんでくれたら何よりだ』
その言葉を受けた瞬間に視界はブラックアウトし、気づけば六歳児の身体になっていたのである。
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