俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

文字の大きさ
9 / 258

しおりを挟む
 土手を越えて住宅街まで逃げてきた沖長は、そのまま近くにある公園まで行って、そこにあるベンチに少女と座った。

「はい、良かったらこれどうぞ」

 そう言って、《アイテムボックス》から取り出したスポーツドリンクが入ったペットボトルを差し出した。

「え? あ、ありがとッス……って、これいまどこからだしたんスか?」
「ポケットからだよ。ほら、俺のポケット大きいから」

 現在来ているパーカーの腹部にあるポケットを見せる。確かに大きいしペットボトルくらい入るので納得してくれたようだ。
 同じようにもう一本の小さめの茶が入ったペットボトルを取り出して飲む。

(うん、やっぱりこの画面は見えてないみたいだな)

 前に自室でリストを確認中に葵が入ってきたことがあったが、咄嗟に消したもののタイミング的には目撃していてもおかしくなかった。しかし葵は何も不思議がってはいなかったことから、もしかしたらこれは自分以外には見えないのではないかと疑問に思ったのだ。

 だから今、ちょうどいいから試してみた。どうせ初対面だし、見られても口八丁で誤魔化せる子供相手だからと考えて。
 そして結果は今もリストは出しっ放しにしているが、一切そちらに興味を示さないところを見て、リストが自分しか目視できないことを明確にできた。

 ただ操作している時は気を付けないと、何もないところを指でなぞっている変な奴だと思われてしまうが。
 受け取ったスポーツドリンクで喉を潤しながら、こちらをチラチラと見つめてくる少女。どうやら人見知りの気があるようだ。こちらから話かけた方が良さそう。

「あの二人は知り合い?」
「う、ううん、ちがうッス」
「でも何かナクルって名前呼んでたけど……ナクルって名前なのかな?」
「はいッス……でもほんとにどうしてボクのなまえをしってたのかしらなくて……どこかであったのかな……?」

 記憶を探るように眉をひそめているが、やはり心当たりはないらしい。
 となるとあの二人は一体どういう奴らなのか……。これはマジでストーカーという予想が当たっているかもしれない。

 しかも二人もいるとなると、この少女が哀れに思えてくる。

(まだ幼いのにストーカーが二人かぁ……壮絶だな)

 そんな人生、たとえモテるとしても嫌だ。何せあんな暴虐的な連中なのだ。こっちから願い下げである。

「あ、あの!」
「ん?」
「そ、その……えと……さっきはその……たすけてくれて…………ありがとうッス」

 段々尻すぼみになる言葉だが、確かに感謝の言葉は伝わってきた。

「いいっていいって、俺もたまたまあそこにいただけだし。無事で良かったよ」
「そ、そうッスか……えへへ」

 初めて見せる彼女の笑顔に思わず感嘆する。とても愛らしい魅力的な笑顔だったからだ。
 確かに可愛いし、あの二人ではなくても好意的に見られるのも頷ける。

「あ、でもあのあかいかみの子、いきなりきえたッスけど、どうしたんスかね?」
「ああ、アイツなら落とし穴に落ちていったんだよ」
「え? お、おとしあなッスか?」
「そうそう。今頃穴の中で伸びてるんじゃないかなぁ」

 あの時、沖長がやったこと。それは目前の地面の〝回収〟。そうすることで深い穴を形成することが可能となり、その上を通った赤髪少年は真っ逆さまに落下したというわけだ。
 そんなに深く作ってはいないので、這い上がるくらいは自力でできるはず。

(それにしてもあの赤髪、驚くくらいに傲慢だったなぁ)

 自分のことを選ばれた主役なんて言うとは、余程自分に自信があるのだろう。大金持ちの上、周りはこびへつらう使用人たちだけ。そしてだだあまに甘やかす両親に育てられたというところだろうか。
 そうでもなければあんなふうには育たない気がする。

(まああとはアニメの影響とかだけど……それでもさすがに人を平気で殴ったりしないだろうしな)

 恐らくは前者の考えが正しいのではと思う沖長だった。

「ところでその服……柔道か何かの道着?」
「えっ……あ、これは…………ウチの道着で」
「ウチの道着? ……もしかして家が武道とかやってるってことかな? どんな?」

 少し興味が湧いたので聞いてみると、笑顔を崩してまたあの寂しそうな表情を見せる。これは地雷だったかと後悔するが、少女はそのまま続けてくれた。

「ウチは…………古武術をやってるッス」
「こ、古武術? それはまた珍しいなぁ」

 実際今までの経験上、そんな知り合いには会ったことが無かった。
 古武術、何て男心をくすぐるワードだろうか。必殺技とかあるのかなと、内心ワクワクが止まらない。
 ただ古武術を口にした少女の顔色が優れない。

「……何か悩んでることがあるの?」
「え? そ……それは……」 

 言い難いことなのか口を噤んでいる。もっとも初対面の男子に弱音を吐くことなんて難しいかもしれない。

「まあ無理に聞くつもりはないけど、話したらちょっとは楽になることもあるぞ」

 少しだけ背中を押してやることにする。何だかこのままだと無理に抱え込んで自爆しそうな感じがしたからだ。
 すると少女はしばらく沈黙していたが、意を決したように語り始めた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

処理中です...