俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

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 ナクルの勘違いによる親子間のズレが修正された後、どうなったかというと――。

「ほんっとーにすまん! だから許してくれ、ナクル!」

 いい歳したオッサンが、膨れっ面の幼児の傍で土下座していた。

(あーもう俺、帰っていいかなぁ)

 すでに問題は解決したも同然だし、自分はもう必要ないと、この場を去ろうと考えていると、そこへまた新たな人物が現れる。

「――さっきから騒いでいるのは誰です……って、ナクル帰っていたのですね。それよりも修一郎さん、どうしてそんな地べたで土下座をしているのですか?」

 見れば和服を着た美女がそこにいた。ナクルがおしとやかに成長させたような女性で、歩く姿も気品を感じさせるまさに大和撫子。

「あ、ママ!」

 不機嫌さを直し、笑みを浮かべたナクル。彼女の言葉から察するに母親らしい。

(うわぁ、めちゃんこ美人。下手しなくても大学生とか言われても違和感ないぞ)

 とても沖長と同じような子供がいるような歳には思えない。
 するとそんな美女の視線が沖長へと向く。

「あら、そちらの子は……門下生ではないですわね」
「ああ、その子は――」

 そうして修一郎が沖長についての説明を軽くナクルの母に伝えた。

「――なるほど、そのようなことが。それはナクルがお世話になり、まことにありがとうございました」
「い、いえ! 俺……僕はただお節介を焼いただけですので! ですからどうぞ頭を上げてください!」

 すると頭を上げてくれたのはいいが、少し感心したような表情をナクルの母は見せていた。

「……とても言葉遣いが達者ですのね。余程ご両親の教育が行き届いていらっしゃるようで」

 それはただ単に前世での社会人としてのマナーだったからとは言えない。

「やはり君もそう思うだろう。この子のお蔭で、ナクルの本音が聞けたんだ。本当に感謝してるよ。是非親御さんにもお会いしたいな」
「いえいえ、本当にそこまで大したことはしてませんから」

 それは偽らざる言葉だ。実際自分がやったことなんて、大人だったら普通のことをしただけだ。困っている子供から話を聞いて、その親に子供の話を聞いてやってほしいと言っただけなのだから。こんなこと誰でもできる。

「それに謙虚ときた。ふむ、どうだい君、ウチに入門してみる気はないかい?」
「は、はい? 入門……ですか?」
「そうさ。君ならきっと我が流派を背負える立派な闘士になれる!」

 確かに古武術には興味はあるものの、そんなに簡単に決めていいものなのだろうか。

「えっと……ナクルちゃんから古武術って伺いましたけれど、そんな簡単に門下生を募っても構わないんでしょうか?」
「もちろん生半可な輩を向か入れる気はないよ。こう見えても人を見る目には自信があってね。君ならきっと良い闘士になれる! うん、俺の直感は結構当たるんだよ!」

 どんどん詰め寄ってくる。何この圧力。マジで怖い。
 もっと冷静な人かと思ったら熱血野郎だったなんて詐欺もいいところだ。

(このままじゃ押し切られるかも……そうだ! こんな時はナクルちゃんに!)

 娘に弱い修一郎を抑えてくれると期待して視線を向けた……が、

「えっ、オキナガくんといっしょにしゅぎょうできるッスか! だったらボク、もっとがんばれるッス!」

 どういうわけか敵が増えていた。
 キラキラした純朴な瞳が沖長を貫く。ここには味方はいないのかと愕然としていると……。

「――おほん。そこまでにしてくださいな、二人とも」

 仲裁に入ってくれたのは先ほど新登場したキャラもとい、ナクルの母だった。

「修一郎さん、ナクル、あなた方の恩人が困っていらっしゃいますわよ」

 そう言われてハッとなった二人が、慌てて距離を取ってくれた。

「ハッハッハ、これはついつい。悪かったね、札月くん」
「あー沖長でいいですよ。まあ誰しも熱くなることくらいありますからお気になさらず」
「ボ、ボクもごめんなさいッス……」
「そんなに落ちこなくてもいいよ、ナクルちゃん」
「っ……き、きらいになってないッスか?」
「ならないならない。こんなに素直で可愛い子を嫌いになるわけないだろう?」

 こちらとしては大人としての発言であり、彼女の頭を撫でながら言ったのも当然他意なんて欠片ほどもないのだが……。

「カ、カワ……! ~~~~~っ!?」

 何故か顔を真っ赤にすると、母のところまで駆け寄って、その背で恥ずかしそうにこちらをチラチラ見てくる。その仕草はとても可愛らしい。

「あらあら、この子ったら……ふふふ」

 そんな娘の姿に微笑ましそうにしているナクルの母。そういえばちゃんと自己紹介していなかったと思い出し、彼女に名を名乗った。そしてそのあとに日ノ部ユキナという名前を知ることができた。

 それからせっかくだからと自宅に招待され、リビングで日ノ部家と一緒に茶菓子を頂くことになったのである。



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