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「いやいや、だからただの趣味だって。それよりも九馬さんも先生に上手いって褒められてたじゃない」
実際に彼女の調理技術もなかなかのものだ。それはきっと家庭のために毎日料理をしているからだろう。
「えへへ、これでも毎日やってるからね! でもでも、食べさせてもらった札月くんのポテサラは絶品だったよ! もうチョーイケてた! これマジで!」
ずいぶんとノリがギャルだなと思いつつも、原作でもこんな感じだったのなら、よくもまあ陰キャと化しているナクルと仲良くなったなと感心する。
いや、その時は水月も持ち前の快活さよりも、家族を守りたいというただ一つの願望に執着していただろうから、陽キャのカテゴリーに入っていたかは分からない。
ただナクルも水月も、本質は根明なので相性は良いとはいえる。だから敵同士だったとはいえ絆を紡ぐことができたのだろう。
「そういう九馬さんは、将来はどうなの? 料理人?」
「あーウチはちょっち貧乏でさぁ。そんでね、少しでもお母さんの助けになるかもって、料理の勉強してるんだよー。ほらほら、節約料理ってやつ? んで、せっかくだから授業でも学べたらいいなーって」
泣かせる話である。本当にこの娘が良い子なのか、こうして話しているとよく分かる。
だからか、今度彼女の身に起こる不幸のことを考えると、思わず目を背けたくなってしまうが。
「あはは、ちょっと暗い話しちゃった? 気にしないでね! 貧乏でも毎日がめっちゃ楽しいくらいだし! というか騒がしい? ウチってさ、弟が三人いてね、あ、しかも三つ子! すっごいでしょ! 三人とも同じ顔なんだぁ! そうだ、写真見る?」
まさにマシンガントークというか、これぞギャルとでも言わんばかりの饒舌っぷり。さすがに圧倒されて沖長も相槌を打つくらいしか対抗できない。
そうしてスマホで撮った写真を見せられ、確かにそこに写っている三人の子供はコピーでもしたかのようにそっくりだった。また丸坊主というのが愛らしさを引き立てていて可愛らしい。
そんな感じで水月の家庭自慢を聞いていると――。
「――――オキくぅ~ん!」
不意にドアの方から聞こえてきた声に振り向く。するとそこにはナクルが顔を覗かせていた。彼女は沖長の姿を発見すると、嬉しそうに駆け寄ってくる。こういうところは小動物のようだ。
「あ、日ノ部さんじゃん!」
「ふぇ? えっと……誰ッスか?」
どうやら水月の方はナクルのことを知っているようだが、ナクルは少し小首を傾げていた。
「あたしは九馬水月っていうの!」
「そッスか! ボクは日ノ部ナクルッス!」
「知ってるよー。だって有名だもん!」
「有名? ナクルが?」
思わずそう沖長が問いかけた。
「うん。だってあの超有名人の金剛寺くんを投げ飛ばした子だもん」
そういえばそういうこともあった。
「ほら、金剛寺くんってモテモテじゃん? いっつも周りに女の子いっぱいだし。そんな金剛寺くんが夢中になってるのが日ノ部さんだし」
確かにナクルを手に入れようと、いつもいつも絡んでくるから話題に上がっても不思議ではないか。
「けど日ノ部さんって、何度も言い寄られても毎回拒否してるでしょ?」
「当然ッス! だってボクにはオキくんがいるッスから!」
「! ……やっぱり二人って付き合ってたりするの?」
女子はそういう話題が好きなのは本当のようで、水月もまた目を輝かせながら聞いてきた。
「いや別にそういうわけじゃ……」
「それ以上の関係っス!」
否定しようとしたところ、ナクルが胸を張って宣言した。
「わーお! なになに、もしかしてもう大人の階段を上ったとか!?」
まだ小学生にもかかわらずさすがは恋愛体質のギャル。顔を赤らめつつも興味津々といった様子だ。
「大人の……階段? よく分かんないッスけど、ボクとオキくんは一緒に階段を上ったこともあるッスよ!」
「わわわ!? お、お、大人だぁぁぁ!」
ナクルは素直に普通の階段の話をしたようだが、水月は恋愛的な意味で捉えてさらに顔を真っ赤にしている。このままでは変な噂が飛び交ってしまいかねないと思い、沖長は分かるようにちゃんと説明をした。
「なぁんだ、そういうことかぁ。でもでも、それにしても仲良いよね! いっつも一緒って聞くし」
「まあ、幼馴染だしな。家族同然みたいなもんだし」
「ふ~ん、じゃあ札月くんにとって日ノ部さんってどんな存在なん?」
「そうだなぁ……可愛い妹分かな」
「!? オ、オキくん! ボクは妹じゃないッスよ!」
「いや、だから本当の妹ってわけじゃなくて、妹みたいな存在ってことで……」
「妹じゃ嫌ッス!」
「え? あ、だから妹じゃなくて、えっと……」
何故かこちらを頬を膨らませて睨みつけてくるナクルに対し、どう対応したものかと戸惑っていると、「まったく、男の子はこれだからなぁ」と水月が発言し、沖長は「どういうこと?」と問い返した。
「いい、札月くん? 女の子にとって近しい男の子に妹扱いされるのはあんまり嬉しくないんだよ」
「そ、そういうもんなの?」
それは知らなかった。沖長としては家族同然の深い絆で結ばれているという意味合いを込めていて、最上級に等しい間柄ということなのだが。
「はぁぁ~、あの金剛寺くんと肩を並べるくらいに人気が高い札月くんでも女心は分かってないってことかぁ」
何だか聞き捨てならない言葉が聞こえた。
実際に彼女の調理技術もなかなかのものだ。それはきっと家庭のために毎日料理をしているからだろう。
「えへへ、これでも毎日やってるからね! でもでも、食べさせてもらった札月くんのポテサラは絶品だったよ! もうチョーイケてた! これマジで!」
ずいぶんとノリがギャルだなと思いつつも、原作でもこんな感じだったのなら、よくもまあ陰キャと化しているナクルと仲良くなったなと感心する。
いや、その時は水月も持ち前の快活さよりも、家族を守りたいというただ一つの願望に執着していただろうから、陽キャのカテゴリーに入っていたかは分からない。
ただナクルも水月も、本質は根明なので相性は良いとはいえる。だから敵同士だったとはいえ絆を紡ぐことができたのだろう。
「そういう九馬さんは、将来はどうなの? 料理人?」
「あーウチはちょっち貧乏でさぁ。そんでね、少しでもお母さんの助けになるかもって、料理の勉強してるんだよー。ほらほら、節約料理ってやつ? んで、せっかくだから授業でも学べたらいいなーって」
泣かせる話である。本当にこの娘が良い子なのか、こうして話しているとよく分かる。
だからか、今度彼女の身に起こる不幸のことを考えると、思わず目を背けたくなってしまうが。
「あはは、ちょっと暗い話しちゃった? 気にしないでね! 貧乏でも毎日がめっちゃ楽しいくらいだし! というか騒がしい? ウチってさ、弟が三人いてね、あ、しかも三つ子! すっごいでしょ! 三人とも同じ顔なんだぁ! そうだ、写真見る?」
まさにマシンガントークというか、これぞギャルとでも言わんばかりの饒舌っぷり。さすがに圧倒されて沖長も相槌を打つくらいしか対抗できない。
そうしてスマホで撮った写真を見せられ、確かにそこに写っている三人の子供はコピーでもしたかのようにそっくりだった。また丸坊主というのが愛らしさを引き立てていて可愛らしい。
そんな感じで水月の家庭自慢を聞いていると――。
「――――オキくぅ~ん!」
不意にドアの方から聞こえてきた声に振り向く。するとそこにはナクルが顔を覗かせていた。彼女は沖長の姿を発見すると、嬉しそうに駆け寄ってくる。こういうところは小動物のようだ。
「あ、日ノ部さんじゃん!」
「ふぇ? えっと……誰ッスか?」
どうやら水月の方はナクルのことを知っているようだが、ナクルは少し小首を傾げていた。
「あたしは九馬水月っていうの!」
「そッスか! ボクは日ノ部ナクルッス!」
「知ってるよー。だって有名だもん!」
「有名? ナクルが?」
思わずそう沖長が問いかけた。
「うん。だってあの超有名人の金剛寺くんを投げ飛ばした子だもん」
そういえばそういうこともあった。
「ほら、金剛寺くんってモテモテじゃん? いっつも周りに女の子いっぱいだし。そんな金剛寺くんが夢中になってるのが日ノ部さんだし」
確かにナクルを手に入れようと、いつもいつも絡んでくるから話題に上がっても不思議ではないか。
「けど日ノ部さんって、何度も言い寄られても毎回拒否してるでしょ?」
「当然ッス! だってボクにはオキくんがいるッスから!」
「! ……やっぱり二人って付き合ってたりするの?」
女子はそういう話題が好きなのは本当のようで、水月もまた目を輝かせながら聞いてきた。
「いや別にそういうわけじゃ……」
「それ以上の関係っス!」
否定しようとしたところ、ナクルが胸を張って宣言した。
「わーお! なになに、もしかしてもう大人の階段を上ったとか!?」
まだ小学生にもかかわらずさすがは恋愛体質のギャル。顔を赤らめつつも興味津々といった様子だ。
「大人の……階段? よく分かんないッスけど、ボクとオキくんは一緒に階段を上ったこともあるッスよ!」
「わわわ!? お、お、大人だぁぁぁ!」
ナクルは素直に普通の階段の話をしたようだが、水月は恋愛的な意味で捉えてさらに顔を真っ赤にしている。このままでは変な噂が飛び交ってしまいかねないと思い、沖長は分かるようにちゃんと説明をした。
「なぁんだ、そういうことかぁ。でもでも、それにしても仲良いよね! いっつも一緒って聞くし」
「まあ、幼馴染だしな。家族同然みたいなもんだし」
「ふ~ん、じゃあ札月くんにとって日ノ部さんってどんな存在なん?」
「そうだなぁ……可愛い妹分かな」
「!? オ、オキくん! ボクは妹じゃないッスよ!」
「いや、だから本当の妹ってわけじゃなくて、妹みたいな存在ってことで……」
「妹じゃ嫌ッス!」
「え? あ、だから妹じゃなくて、えっと……」
何故かこちらを頬を膨らませて睨みつけてくるナクルに対し、どう対応したものかと戸惑っていると、「まったく、男の子はこれだからなぁ」と水月が発言し、沖長は「どういうこと?」と問い返した。
「いい、札月くん? 女の子にとって近しい男の子に妹扱いされるのはあんまり嬉しくないんだよ」
「そ、そういうもんなの?」
それは知らなかった。沖長としては家族同然の深い絆で結ばれているという意味合いを込めていて、最上級に等しい間柄ということなのだが。
「はぁぁ~、あの金剛寺くんと肩を並べるくらいに人気が高い札月くんでも女心は分かってないってことかぁ」
何だか聞き捨てならない言葉が聞こえた。
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