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「――――蔦絵さん!」
彼女から電話がかかってきて、すぐに彼女と合流することになった。
蔦絵はダンジョンが発生した場所から少し離れた場所で様子を見守っていたらしい。聞けばすでに【異界対策局】が駆けつけて対処をしていたようだ。
ちなみに蔦絵に周囲に怪しい気配がないが尋ねたが、妖魔らしきものの気配も感じないということで、ユンダもその近くにはいないと判断し、彼女と合流することにしたのである。
「待ったわよ、沖長……くん?」
「? どうかしましたか?」
沖長を見た蔦絵が驚いたように目を見張った。
「何でそんなにボロボロなの? それに血も……何があったのかしら?」
思わず「え?」となって、同時にしまったと自分に叱咤する。
先のユンダとの戦闘で傷ついた身体や服、それにボックス内に移動する際に撒き散らした血液が服にも付着してしまっていたようだ。
「あー……えっと……」
「まさか一人でダンジョンに入ったのではないでしょうね?」
射抜くような鋭い眼差しをぶつけてくる。
「ち、違います違います! 入ってないですってば!」
「なら何故そんなことになっているのかしら? 説明なさい!」
これは黙秘するのは悪手でしかなさそうだ。ただ本当のことを言ってもいいものかどうか……。
蔦絵を見ると、嘘は許さないという様子だ。下手な誤魔化しなどすれば見抜かれて余計な心配をさせてしまいかねない。…………仕方ない。
「実は――」
沖長は、ユンダと名乗る妖魔人に襲われたことを伝えた。当然のごとく蔦絵は驚愕したが、話を聞いている間に顔を俯かせて身体を震わせ始める。
《アイテムボックス》のことは除いて、自分は何とか隙を見て逃げることができたと伝えた。
話はすべて終えたが、しかしいまだ蔦絵は身体を震わせたまま反応を返さない。
「えと……蔦絵さん?」
やはり危険なことをしたと怒っているのかと説教を覚悟していると、その直後に蔦絵から凄まじいオーラが吹き荒れる。そしてまるで殺し屋のような目つきを見せて、沖長を戦慄させた。
「……沖長くん?」
「は、はい!」
もしかして殺される!? などと恐怖を覚えていると……。
「そいつ……今どこにいるのかしら?」
「え? え? あの……何でそんなことを?」
「何で? もちろんそいつをぶっ殺すつもりだからよ」
「……は?」
「よくも私の可愛い弟弟子を……許さないわ」
どうやら沖長に怒りを覚えていたわけではなく、ユンダに殺意を向けていたようだ。
「それで? その愚か者はどこにいるのかしら?」
口調は丁寧だが一言一言に凄まじい怒気が込められていて、それを向けられている本人でもないのに超怖い。
「あー……多分現場にはもういないかと」
「…………ちっ」
蔦絵の舌打ちなんて初めて目にした。というよりもこんなに怒りを露わにしてる姿もだ。
確かに普段とのギャップの違いに戸惑うものの、それと同時に自分のために怒ってくれているという事実は、そこか嬉しい気分にさせてくれる。
「その……怒ってくれてありがとうございます。けど……できれば今の蔦絵さんにはアイツとは気軽に戦ってほしくありません」
「! ……それほどの輩なのね?」
沖長の言いたいことを察してくれたようで、沖長の頷きに対し、蔦絵は冷静さを取り戻したかのように大きく息を吐いて表情を戻す。
「けれど、そんな相手によく生き残れたわね」
「相手が子供だからと油断……というか遊んでくれたからだと思います。もし最初から全力で殺しにかかってきていたら今頃は……」
ユンダが手加減していたこともそうだし、何やら沖長に期待を持っていたこともあり、全力で攻撃はしてこなかった。それが生き残れた理由であろう。
「……そう。ところで今の私に戦ってほしくないと言っていたけれど、一体どれほどの力を持っているのか分かる? その妖魔人は?」
「う~ん……相手も全力ではなかったのでハッキリとは分かりませんけど、修一郎さんと良い勝負をするかと」
そもそも過去にあの修一郎は、地球に現れた妖魔や妖魔人と戦ってきたはず。その中で妖魔人との死闘だってあっただろう。つまり力を制限されている状態でも、修一郎に匹敵し得る実力を備えていることになる。
もしダンジョン内で戦うとすれば、ナクルはもとより今の蔦絵でも遊ばれてしまう可能性が高い。
「……ふぅ。そうね、とりあえず相手の実力を知れたということで良しとしておきましょうか。けれど状況はどんどん悪くなる一方ね。ダンジョン発生時期も縮まっているようだし」
「はい。だから俺たちは強くなる必要があります。大切なモノを守るためにも」
「そうね……ふふ」
「いきなり笑ってどうしたんですか?」
「ふふ、ごめんなさい。ただ、今は私の方が強いし、あなたやナクルの前に立って戦っているけれど、いつかそれが逆転しそうって思ってね。いいえ、それをどこかで望んでいる私もいるみたい」
「? もちろん俺は強くなってナクルや蔦絵さんを守るつもりですけど?」
すでに彼女たちは沖長の家族みたいなもので、死んでほしくない存在と化している。だからできる限り彼女たちの力になりたいと思っているのだ。
「! ……本当に君はもう……そういう殺し文句を言うのは早過ぎよ」
コツンと額を人差し指で突かれてしまった。嬉しそうに微笑む蔦絵だったが、次には真面目な顔をして口を開く。
「とにかく今日のことは師範に伝えて今後の対策を立てましょう」
その提案に沖長は「はい!」と返事をし、二人揃ってナクルを迎えに行くのであった。
彼女から電話がかかってきて、すぐに彼女と合流することになった。
蔦絵はダンジョンが発生した場所から少し離れた場所で様子を見守っていたらしい。聞けばすでに【異界対策局】が駆けつけて対処をしていたようだ。
ちなみに蔦絵に周囲に怪しい気配がないが尋ねたが、妖魔らしきものの気配も感じないということで、ユンダもその近くにはいないと判断し、彼女と合流することにしたのである。
「待ったわよ、沖長……くん?」
「? どうかしましたか?」
沖長を見た蔦絵が驚いたように目を見張った。
「何でそんなにボロボロなの? それに血も……何があったのかしら?」
思わず「え?」となって、同時にしまったと自分に叱咤する。
先のユンダとの戦闘で傷ついた身体や服、それにボックス内に移動する際に撒き散らした血液が服にも付着してしまっていたようだ。
「あー……えっと……」
「まさか一人でダンジョンに入ったのではないでしょうね?」
射抜くような鋭い眼差しをぶつけてくる。
「ち、違います違います! 入ってないですってば!」
「なら何故そんなことになっているのかしら? 説明なさい!」
これは黙秘するのは悪手でしかなさそうだ。ただ本当のことを言ってもいいものかどうか……。
蔦絵を見ると、嘘は許さないという様子だ。下手な誤魔化しなどすれば見抜かれて余計な心配をさせてしまいかねない。…………仕方ない。
「実は――」
沖長は、ユンダと名乗る妖魔人に襲われたことを伝えた。当然のごとく蔦絵は驚愕したが、話を聞いている間に顔を俯かせて身体を震わせ始める。
《アイテムボックス》のことは除いて、自分は何とか隙を見て逃げることができたと伝えた。
話はすべて終えたが、しかしいまだ蔦絵は身体を震わせたまま反応を返さない。
「えと……蔦絵さん?」
やはり危険なことをしたと怒っているのかと説教を覚悟していると、その直後に蔦絵から凄まじいオーラが吹き荒れる。そしてまるで殺し屋のような目つきを見せて、沖長を戦慄させた。
「……沖長くん?」
「は、はい!」
もしかして殺される!? などと恐怖を覚えていると……。
「そいつ……今どこにいるのかしら?」
「え? え? あの……何でそんなことを?」
「何で? もちろんそいつをぶっ殺すつもりだからよ」
「……は?」
「よくも私の可愛い弟弟子を……許さないわ」
どうやら沖長に怒りを覚えていたわけではなく、ユンダに殺意を向けていたようだ。
「それで? その愚か者はどこにいるのかしら?」
口調は丁寧だが一言一言に凄まじい怒気が込められていて、それを向けられている本人でもないのに超怖い。
「あー……多分現場にはもういないかと」
「…………ちっ」
蔦絵の舌打ちなんて初めて目にした。というよりもこんなに怒りを露わにしてる姿もだ。
確かに普段とのギャップの違いに戸惑うものの、それと同時に自分のために怒ってくれているという事実は、そこか嬉しい気分にさせてくれる。
「その……怒ってくれてありがとうございます。けど……できれば今の蔦絵さんにはアイツとは気軽に戦ってほしくありません」
「! ……それほどの輩なのね?」
沖長の言いたいことを察してくれたようで、沖長の頷きに対し、蔦絵は冷静さを取り戻したかのように大きく息を吐いて表情を戻す。
「けれど、そんな相手によく生き残れたわね」
「相手が子供だからと油断……というか遊んでくれたからだと思います。もし最初から全力で殺しにかかってきていたら今頃は……」
ユンダが手加減していたこともそうだし、何やら沖長に期待を持っていたこともあり、全力で攻撃はしてこなかった。それが生き残れた理由であろう。
「……そう。ところで今の私に戦ってほしくないと言っていたけれど、一体どれほどの力を持っているのか分かる? その妖魔人は?」
「う~ん……相手も全力ではなかったのでハッキリとは分かりませんけど、修一郎さんと良い勝負をするかと」
そもそも過去にあの修一郎は、地球に現れた妖魔や妖魔人と戦ってきたはず。その中で妖魔人との死闘だってあっただろう。つまり力を制限されている状態でも、修一郎に匹敵し得る実力を備えていることになる。
もしダンジョン内で戦うとすれば、ナクルはもとより今の蔦絵でも遊ばれてしまう可能性が高い。
「……ふぅ。そうね、とりあえず相手の実力を知れたということで良しとしておきましょうか。けれど状況はどんどん悪くなる一方ね。ダンジョン発生時期も縮まっているようだし」
「はい。だから俺たちは強くなる必要があります。大切なモノを守るためにも」
「そうね……ふふ」
「いきなり笑ってどうしたんですか?」
「ふふ、ごめんなさい。ただ、今は私の方が強いし、あなたやナクルの前に立って戦っているけれど、いつかそれが逆転しそうって思ってね。いいえ、それをどこかで望んでいる私もいるみたい」
「? もちろん俺は強くなってナクルや蔦絵さんを守るつもりですけど?」
すでに彼女たちは沖長の家族みたいなもので、死んでほしくない存在と化している。だからできる限り彼女たちの力になりたいと思っているのだ。
「! ……本当に君はもう……そういう殺し文句を言うのは早過ぎよ」
コツンと額を人差し指で突かれてしまった。嬉しそうに微笑む蔦絵だったが、次には真面目な顔をして口を開く。
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その提案に沖長は「はい!」と返事をし、二人揃ってナクルを迎えに行くのであった。
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