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二話
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「ああ、サインしてくれたね。ありがとう。」
「ふふ、ハッハッハッハ!!
これほど愉快なことはないなぁ。なあ?ユラ??」
ユラことユライユ。義父の妻が答える。
「ええ!!ほんと!!これで侯爵家は私たちのものね!!ああ、ようやくだわ!
はっ!穢らわしい!!私に触らないでちょうだい!!」
「ああ、そうだ。これからわたしたちを義父や義母だなんて呼ぶなよ?あいつの娘だとか怖気が走るわ!これからは侯爵様と呼べ。お前はもう使用人なんだからな!!」
「義父さま‥‥?義母さま‥‥?ニーナ‥‥?」
ばしんっ!!
「だから呼ぶなと言っているだろ!!お前はもう使用人だ。ニーナこっちに来なさい。ああ、可愛いニーナ。お前はもう侯爵令嬢だ。本当に素晴らしい!!全てが手に入った!!」
「おとおさまぁ!おかあさまぁ!!ふふっ!!大好きです!!なんでおねえさまはまだいるんですかぁ?ああ、そうかもうおねえさまじゃないのかぁ。しようにんさん、こうちゃをいれてくれるぅ??」
なんで‥?どうして‥‥?
あんなに優しかったのに。新しい家族ができたと思ったのに。
あの契約書は侯爵家の管理に関するものだった。
騙されたんだ‥‥。
そう理解した時はもう何もかもが遅すぎた。私はこの日、両親だけでなく全てを失った。
「はやくこうちゃをいれなさい!!」
命令に従わなければ暴力を振るわれる。それがわかってからはもう抵抗しなくなった。
「はい、ただいま。ーーどうぞ。」
「ふんっ!おそいわよ!!ーー熱っ!!」
ばしゃっ!!
「‥‥っ!!」
「あつすぎるわよ!入れ直しなさい!!」
「もうしわけございません。」
熱湯をかけられ、それでも命令に従うために掃除をし紅茶を入れ直す。
ようやくニーナのティータイムが終わると私に割り当てられた埃の被った屋根裏部屋へと向かう。
薄汚れたタオルを取って外に出る。
真冬の外は寒い‥‥。
それでも火傷した肌を覚ますための水は外で汲むことでしか手に入らない。火傷した肌を冷ますどころか全身が凍えそうになり家へと戻る。
その途中でも商人に仕事を押し付けられる。
ようやく眠れるころには全ての仕事を終えとうに真夜中になっていた。
寒い‥‥。屋根裏は殊更に寒い。
薄い毛布一枚をかけて震えながら目を閉じる。
最初は前侯爵家に仕えていた忠義のある使用人たちが守ってくれた。でも私を庇えば例外なく解雇され追い出される。
それでも深い忠誠を誓っていた者たちは私を庇い、この家を追い出された。
まだ比較的新しい使用人たちは己の身を守るために私がどれだけ助けを求めても無視された。そのうちに使用人がほとんど入れ替わって使用人までもが私をいじめてくるようになった。
そんな状況でも私はまだ侯爵家の後継だ。
彼らはもう全てを手中に収め、侯爵を名乗ってはいるが。あの契約書は私が成人するまで侯爵家の管理を叔父家族が行うというものだった。
だから正式に私は侯爵家を継ぐ者だ。
まあ、それもどうなるかはわからないが。
彼は私が成人したらまた契約書を書かせるのか?
まあ、そうなったら家を出よう。平民としての暮らしでも構わない。だって使用人として仕事をこなしているんだもの。
きっと市井でも生きていけるわ。
ーーそんなことを考えていたある日、婚約者であるセルジオが訪ねてきた。
チャンスかもしれない‥‥。
その日は風呂に入れられ、粗末だがドレスを着せられた。
たった数時間の逢瀬だったけれどとてもしあわせな時間だった。
セルジオは何かを察してはいたようだけれど何も言わなかった。
どうして?たすけてくれないの??
そんな疑問はあったけれどこのしあわせな時間を壊したくなくて何も言えなかった。
思えばこの時からおかしかったのかもしれない。彼は私を訪ねる前に叔父のところへ行っていた。
12歳を迎えるとデビュタントだ。
王城で開かれる夜会でおこなわれる。私は連れて行ってもらえなかった。
後継者なのにどうして??
その理由は簡単だった。叔父は私を病弱だと言ってまわっているらしい。
家から出られないほど病弱なのだ、と。
そんなことがあり私は叔父家族の仕切る侯爵家という檻の中で虐げられながら育った。
唯一の楽しみは婚約者との一ヶ月に一度の逢瀬だけ。
「ふふ、ハッハッハッハ!!
これほど愉快なことはないなぁ。なあ?ユラ??」
ユラことユライユ。義父の妻が答える。
「ええ!!ほんと!!これで侯爵家は私たちのものね!!ああ、ようやくだわ!
はっ!穢らわしい!!私に触らないでちょうだい!!」
「ああ、そうだ。これからわたしたちを義父や義母だなんて呼ぶなよ?あいつの娘だとか怖気が走るわ!これからは侯爵様と呼べ。お前はもう使用人なんだからな!!」
「義父さま‥‥?義母さま‥‥?ニーナ‥‥?」
ばしんっ!!
「だから呼ぶなと言っているだろ!!お前はもう使用人だ。ニーナこっちに来なさい。ああ、可愛いニーナ。お前はもう侯爵令嬢だ。本当に素晴らしい!!全てが手に入った!!」
「おとおさまぁ!おかあさまぁ!!ふふっ!!大好きです!!なんでおねえさまはまだいるんですかぁ?ああ、そうかもうおねえさまじゃないのかぁ。しようにんさん、こうちゃをいれてくれるぅ??」
なんで‥?どうして‥‥?
あんなに優しかったのに。新しい家族ができたと思ったのに。
あの契約書は侯爵家の管理に関するものだった。
騙されたんだ‥‥。
そう理解した時はもう何もかもが遅すぎた。私はこの日、両親だけでなく全てを失った。
「はやくこうちゃをいれなさい!!」
命令に従わなければ暴力を振るわれる。それがわかってからはもう抵抗しなくなった。
「はい、ただいま。ーーどうぞ。」
「ふんっ!おそいわよ!!ーー熱っ!!」
ばしゃっ!!
「‥‥っ!!」
「あつすぎるわよ!入れ直しなさい!!」
「もうしわけございません。」
熱湯をかけられ、それでも命令に従うために掃除をし紅茶を入れ直す。
ようやくニーナのティータイムが終わると私に割り当てられた埃の被った屋根裏部屋へと向かう。
薄汚れたタオルを取って外に出る。
真冬の外は寒い‥‥。
それでも火傷した肌を覚ますための水は外で汲むことでしか手に入らない。火傷した肌を冷ますどころか全身が凍えそうになり家へと戻る。
その途中でも商人に仕事を押し付けられる。
ようやく眠れるころには全ての仕事を終えとうに真夜中になっていた。
寒い‥‥。屋根裏は殊更に寒い。
薄い毛布一枚をかけて震えながら目を閉じる。
最初は前侯爵家に仕えていた忠義のある使用人たちが守ってくれた。でも私を庇えば例外なく解雇され追い出される。
それでも深い忠誠を誓っていた者たちは私を庇い、この家を追い出された。
まだ比較的新しい使用人たちは己の身を守るために私がどれだけ助けを求めても無視された。そのうちに使用人がほとんど入れ替わって使用人までもが私をいじめてくるようになった。
そんな状況でも私はまだ侯爵家の後継だ。
彼らはもう全てを手中に収め、侯爵を名乗ってはいるが。あの契約書は私が成人するまで侯爵家の管理を叔父家族が行うというものだった。
だから正式に私は侯爵家を継ぐ者だ。
まあ、それもどうなるかはわからないが。
彼は私が成人したらまた契約書を書かせるのか?
まあ、そうなったら家を出よう。平民としての暮らしでも構わない。だって使用人として仕事をこなしているんだもの。
きっと市井でも生きていけるわ。
ーーそんなことを考えていたある日、婚約者であるセルジオが訪ねてきた。
チャンスかもしれない‥‥。
その日は風呂に入れられ、粗末だがドレスを着せられた。
たった数時間の逢瀬だったけれどとてもしあわせな時間だった。
セルジオは何かを察してはいたようだけれど何も言わなかった。
どうして?たすけてくれないの??
そんな疑問はあったけれどこのしあわせな時間を壊したくなくて何も言えなかった。
思えばこの時からおかしかったのかもしれない。彼は私を訪ねる前に叔父のところへ行っていた。
12歳を迎えるとデビュタントだ。
王城で開かれる夜会でおこなわれる。私は連れて行ってもらえなかった。
後継者なのにどうして??
その理由は簡単だった。叔父は私を病弱だと言ってまわっているらしい。
家から出られないほど病弱なのだ、と。
そんなことがあり私は叔父家族の仕切る侯爵家という檻の中で虐げられながら育った。
唯一の楽しみは婚約者との一ヶ月に一度の逢瀬だけ。
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