唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ

文字の大きさ
7 / 8

七話

しおりを挟む
「悪いようにはしないさ。」

「ルーカスは私の全てです。お願いします。奪わないでください!!」

「頭を上げて。悪いようにはしないと言っただろう?」

「あの‥‥?」

「順番が遅れてすまない。改めて私はテオドールだ。テオドール・クラウディオ。この国の第二王子さ。知っているかもしれないけれど。」

これでも侯爵家の令嬢だったのだ。王家の人間の名前くらい知っている。

「存じております。私はミレイアです。」 

そう、ただのミレイア。もう家名を名乗ることはない。

「ミレイア。私と結婚してくれないか?」

「ーーえ?」

「ルーカスは私の子だろう?さすがに王家の血を引くルーカスをそのままにはしておけないし、君は離れたくない。なら私たちが結婚してしまえばいい。」

「え、あ‥‥えぇ?」

混乱していると今まで大人しくしていたルーカスがいきなり声を上げた。

「おじさんぱぱ?僕のパパになるの??」

キラキラと瞳を輝かせてそう問いかけるルーカスを見てなんとも言えない気持ちになる。

父親がいないことを理解して何も言わずにいたこの子はやはり父親という存在に憧れていたのだ。ただ私が悲しむから言わないだけ。今までずっと我慢させてしまっていた。

「そうだ。私が君のパパだよ。」

「パパ!抱っこ!!」

「ほらおいで。」

テオドール殿下とルーカス。まるで肖像画のように綺麗な2人。やっぱり親子なのね。似ているわ。

「テオドール殿下。私は平民です。現実問題、結婚は不可能なのでは?」

「ねえ、ミレイア。君のその髪色と瞳の色は元から?あの時君は銀髪に紫色の瞳をしていたと思うんだけど。」

魔道具を外す。

「やっぱりね。」

「助けていただいた方に言われたのです。この髪と瞳は目立ちすぎる、と。だから魔道具でありふれた色に変えていたのです。」

「懸命な判断だね。その色じゃ厄介なことに巻き込まれかねない。ミレイア。とりあえず場所を移そう。一緒に来てくれるかい?」

「はい。」

村人たちに簡単に説明し、別れを告げる。殿下と同じ馬車に揺られること2日ほど。

王都についた。

正直少し怖い。あの時の記憶が蘇ってくる。

「大丈夫か?ほらおいで。」

躊躇せずに私の手を握ってくれる。

温かい。温かくて大きくて安心する。

連れて行かれたのは個室のレストランだ。

「まずは腹ごしらえだ。もうお昼の時間だからね。話は後にしよう。」

一流のシェフが作ったコース料理はどれも頬が落ちるほど美味しかった。ルーカスなんて夢中で食べてたわ。

「さて、ルーカスは私の侍女が預かろう。」

「お願いします。」

「話の続きをしようか。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「離婚しよう」と軽く言われ了承した。わたくしはいいけど、アナタ、どうなると思っていたの?

あとさん♪
恋愛
突然、王都からお戻りになったダンナ様が、午後のお茶を楽しんでいたわたくしの目の前に座って、こう申しましたのよ、『離婚しよう』と。 閣下。こういう理由でわたくしの結婚生活は終わりましたの。 そう、ぶちまけた。 もしかしたら別れた男のあれこれを話すなんて、サイテーな女の所業かもしれない。 でも、もう良妻になる気は無い。どうでもいいとばかりに投げやりになっていた。 そんなヤサぐれモードだったわたくしの話をじっと聞いて下さった侯爵閣下。 わたくし、あなたの後添いになってもいいのでしょうか? ※前・中・後編。番外編は緩やかなR18(4話)。(本編より長い番外編って……orz) ※なんちゃって異世界。 ※「恋愛」と「ざまぁ」の相性が、実は悪いという話をきいて挑戦してみた。ざまぁは後編に。 ※この話は小説家になろうにも掲載しております。

【完結】私は義兄に嫌われている

春野オカリナ
恋愛
 私が5才の時に彼はやって来た。  十歳の義兄、アーネストはクラウディア公爵家の跡継ぎになるべく引き取られた子供。  黒曜石の髪にルビーの瞳の強力な魔力持ちの麗しい男の子。  でも、両親の前では猫を被っていて私の事は「出来損ないの公爵令嬢」と馬鹿にする。  意地悪ばかりする義兄に私は嫌われている。

【完結】 愛されない私と隠れ家の妖精

紬あおい
恋愛
初恋は心に秘めたまま叶わず、結婚した人まで妹を愛していた。 誰にも愛されないと悟った私の心の拠りどころは、公爵邸の敷地の片隅にある小さな隠れ家だった。 普段は次期公爵の妻として、隠れ家で過ごす時は一人の人間として。 心のバランスを保つ為に必要だった。 唯一の友達だった妖精が、全てを明かした時、未来が開ける。

【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた

紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。 流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。 ザマアミロ!はあ、スッキリした。 と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?

姉の結婚式に姉が来ません。どうやら私を身代わりにする方向で話はまとまったみたいです。式の後はどうするんですか?親族の皆様・・・!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
家の借金を返済する為に、姉が結婚する事になった。その双子の姉が、結婚式当日消えた。私の親族はとりあえず顔が同じ双子の妹である私に結婚式を行う様に言って来た。断る事が出来ずに、とりあえず式だけという事で式をしたのだが? あの、式の後はどうしたら良いのでしょうか?私、ソフィア・グレイスはウェディングドレスで立ちつくす。 親戚の皆様、帰る前に何か言って下さい。 愛の無い結婚から、溺愛されるお話しです。

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。

しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。 そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。 王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。 断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。 閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で…… ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

【完結】 心だけが手に入らない 〜想い人がいるあなたは、いつか私を見てくれますか?〜

紬あおい
恋愛
完璧な夫には愛する人がいる。 心は手に入らないと分かっていても、愛することをやめられない妻。 そんな二人がいつしか心を通わせ、家族となっていくお話。

冷遇された妻は愛を求める

チカフジ ユキ
恋愛
結婚三年、子供ができないという理由で夫ヘンリーがずっと身体の関係を持っていた女性マリアを連れてきた。 そして、今後は彼女をこの邸宅の女主として仕えよと使用人に命じる。 正妻のアリーシアは離れに追い出され、冷遇される日々。 離婚したくても、金づるであるアリーシアをそう簡単には手放してはくれなかった。 しかし、そんな日々もある日突然終わりが来る。 それは父親の死から始まった。

処理中です...