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第2部
第8話:恋を孕む母③
しおりを挟む【side:スカーレット】
―――――――――――
『ミスカルタウン』でアカツキたちと別れたエクソシストたちは、自分たちの馬車に戻っていた。
プルームはリザに言われた物を探すため、慌ただしく荷物をあさっている。
「タオルはこれで良いですかね。ああもう、清潔な水も余裕があるわけではないのに…」
プルームは大きなため息を吐いた。
町での一件で疲れているので休みたい気持ちで一杯だが、はやくクロノアとリザのもとに戻らなくては。マリアもこんなことになるとは思いもしなかっただろう。
「しかしあの2人組…人間と悪魔があんな親しい関係になるなんて、不思議な事もあるもんですね」
「ああ、私もあのような2人組は初めて見た」
そうプルームの言葉に返事をするスカーレットは、険しい顔で分厚いリストを読んでいた。
エクソシストの各チームに渡されている、討伐対象の悪魔リストだ。道中偶然悪魔と遭遇した時、この悪魔は危険であると警告するという意味でも大切な資料である。見落としがないように、丁寧に1枚ずつページをめくっていく。
「…先ほどのディアさんでしたっけ、スカーレット殿は、やはりまだ気がかりなのでしょうか」
「分からない。だが、ディアボロスという名の悪魔は見覚えがある気がする」
「ほ、本当ですか!?」
プルームもリストを覗き込む。
リストにはびっしりと指名手配されている悪魔の名前や似顔絵等がずらりと並んでいた。
基本的に悪魔は下位の者であっても、人間より強く恐ろしい存在であると知れ渡っている。被害者が見つかり次第即リストに載せられるため、リストの数は膨大だ。定期的に更新されるため、長年勤めているエクソシストでも全てを覚えられている者は少ない。
今のところディアボロスという名の悪魔は記されていない。
だがスカーレットの勘はよく当たるのだ。この胸の奥がざわつく感じが気のせいであると、プルームも言い切れなかった。
「あの2人の関係は偽りである可能性があると…?」
「いや…その点についてはむしろ偽りであってほしいが、あの変態具合は本物だと思う。だが1つ確かな事は、我々が悪魔だと気付けない程“弱い”悪魔は音も通さない程強力な結界魔法は使えないということだ」
プルームはその言葉でハッとした。
あの時は癇癪を起したマリアをどう落ち着かせるかのみ考えていたので気が付かなかった。自分も魔法使いなので分かる。小さい範囲とはいえ、結界魔法はそれなりに技術がいる。音も通さない程の結界は、それだけ緻密に魔力が込められているはず。
それをディアと名乗った悪魔はため息をつきながら一瞬でマリアに結界を張ったのだ。
「プルーム、町に入る前に正体に気付けない悪魔の99%以上は弱いか擬態している悪魔だと言ったな。残り1%以下は他者を騙せるほどの高度な魔法の使い手。そういう奴はただ寿命が長いだけではない。実際に生きている年数も、人間より遥かに長い」
「で、では、あの人間たちを追うべきでは!?」
「いや、おそらく我々ではどうすることもできない。なので早く本部に連絡を入れなければならない。プルーム、すまないが私はリストの確認と本部への連絡に時間をとらせてもらう。そっちも大変だろうが他のメンバーにもそう伝えてくれないか?」
「了解しました!」
そう返事をしたプルームは慌てて馬車を出ていった。
プルームと話している最中もリストをじっくり見ていたがやはり記載されていない。それほどまで長生きしている強い悪魔が、誰にも気付かれずにリストに載らないなどあるものだろうか。
「時間が惜しい…報告書まとめ等と並行して作業するか」
自分にはリーダーとして仲間3人と、捕獲対象を安全に連れて帰る義務がある。
焦る気持ちを何とか落ち着かせようとゆっくり深呼吸をした。
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