暁の悪魔達の狂愛物語【完結】

ノノノ

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第2部

第12話:運命崩しの研究者⑤

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【side:B】
―――――――――



「…残念だよ、アビスさん」

壁の魔法陣を眺めながら呟いた。
僕の魔力で作り出された封印魔法だ。先ほど1人の悪魔を捕え、ここに閉じ込めた。

僕は魔力を手のひらに集め、もうひとつ魔法を紡ぎあげる。凝縮ぎょうしゅくされた魔力は宝石のように光る石の短剣になった。魔法陣の中心にその短剣を落ちないようにしっかり突き刺した。

「封印完了っと…」

これで要石かなめいしである短剣を引き抜かない限り、封印された悪魔は外に出てこれない。逆に言えば引き抜けば封印は解除される。

彼の肩を溶かした聖水をもっとかければ絶命できただろうけど、なんだかんだ彼には感謝しているので気が引けた。僕を騙していたがディアに会いたいのは本当だと思うので、まあ…いつか会わせてあげても良いかな。

しかし聖水、想像以上に効果がすごかった…。
聖水は前世の僕が魔法の訓練の一環で作った魔法の水だ。魔力補給の栄養ドリンクみたいなものを作れれば良いなという気持ちで作ったが、吐くほど味は駄目だった。

前世の僕が、『強いが籠っているので捨てるのは勿体ない』としばらく持っていたが、結局自分で使う機会がなくて殆どエクソシストに売ってしまった。念のため瓶2本分残していた前世の僕、グッジョブだ。

エクソシストから貰ったお金の半分は、今の僕の旅と備品の資金になっている。
今の僕は両親が事故で2人とも亡くなっている。遺産は悪魔を探すのに使うのは申し訳なくて生活費以外受け取らなかったが、こうしてここで調べ物が出来ているのも前世の僕が聖水を売ってくれたおかげだ。

もう半分はアビスさんと別れる時に置いていった。
かなり怒らせたようだからあれで許してもらえないかなと思ったけど、想像以上に根に持たれていたことには驚いた。正直僕も最初は彼の存在を忘れていたくらいなのに、まだ忘れられていなかったことに驚きだ。悪魔って難しい性格だなぁ…

改めて隠れ家の方を見るも、夢だと思いたいくらい酷い有様だった。
全焼は免れたものの、被害は大きい。
形が残っている家具や本も多いが、撤去すべきものは多いし、床や壁も打ち直さなくてはならない。木が燃えた時に発生した煙も籠っている。貫通している洞窟ではないので換気を行うのも難しい。風を起こす魔法具を上手く使えばマシになるだろうか…

「はぁ…面倒だけどこんな環境じゃまともに作業できないし仕方がない」

今はまだ身体が小さいので一人旅は難しい。
でもアビスさんや前世の僕のおかげでかなり場所の候補は絞れている。幸い、今の僕にはそれなりに沢山の時間があった。体力づくりの一環として割り切ればいいか。

作業に取り掛かる前、最後に一度だけ魔法陣を見た。

『お前がやっている事は全て無駄なんだよ!!』

アビスさんの言葉が頭の中で反響する。
正直、かなり心にグサリと突き刺さった。無駄じゃない。そう言い聞かせているけど、やはり1人がむしゃらに行動する日々は不安が募る一方だ。

『主、信じていますから』

でも、ディアはそう言ってくれた。だから僕はディアを信じる。
ああ、早くディアに会いたい。
僕は今更立ち止まるわけにはいかないのだ。

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