暁の悪魔達の狂愛物語【完結】

ノノノ

文字の大きさ
16 / 52
第1部

第5話:人間ファンクラブへようこそ②

しおりを挟む
 
数日後、バルドロさんに言われた場所に早めに着いた。
本当に石と土しか無い山の中で、水源も近くにないため人間たちが来ることもなさそうな場所だ。実際人間に一人も会わず真っ直ぐ来れた。
山道を突き進み、開けた空間に出たが、道中と同じで何もない。

本当にとやらが現れるのか心配だったが、言われた時間になると黒いモヤのようなものが立ち込み始めた。
やがてまたモヤが一箇所に集まるとその中から人間一人が潜れるような大きさの黒い扉が現れた。これがバルドロさんが言っていただろう。
世界を跨ぐ程の門を作るには沢山の魔力が必要だと聞いたが、本当にとても強い魔力だ。俺だったらこんなの出したらそれだけで一日中倒れてしまうだろう。

ハルに一声をかけて、恐る恐るドアノブに手をかけた。
普通の金属製のドアノブのような手触りだ。ひねるとあっさり扉は開く。


中に入り込むと先程までの岩山とは一変して、野外のパーティー会場のような場所に出た。
魔界と聞いていたので薄暗い場所かと思っていたが、想像とは真逆だった。
快晴の空の下、舗装された広場に白いテーブルクロスがかかった長い机がずらりと並んでいる。テーブルの上には様々な料理が盛られており、各々が料理皿に添えられたトングで必要な量を取り、食事をしながら対談を楽しんでいる。

呆気に取られてポカンと口を開けていると、隣から一組の悪魔と人間の男女がこちらに近づいてきて話しかけてきた。

黒髪のやや小柄な悪魔だった。
髪の毛は猫の耳のようにツンツンと跳ねて、幼さの残る顔付きだが強い力を感じる。咄嗟にハルの前に立つように移動すると、慌てたように『驚かせてごめんね』と謝られた。

「初めて見る顔だね。その様子からして、ここは初めてかな?」

「あ、はい、すみません…初めまして、ルキと言います。よろしくお願いします」

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。同志は強さ関係なく平等。大歓迎さ! 僕の名はキズナ、彼女はノエルちゃん。とっても可愛らしいだろう? 自慢のお嫁さんだよ」

キズナと名乗った悪魔は彼の腕にしがみついている少女に顔を向けた。
薄茶色の少しウェーブがかった長い髪の女の子だ。キズナさんの腕から離れると彼女はニコリと笑い、優雅にお辞儀をした。礼儀正しく美しい所作に思わず胸がドキリとした。

「ルキ君、行こう」

突然ハルに腕を引っ張られるような形でその場から離れさせられた。俺はハルらしくない行動に唖然としていたが、キズナさんはあまり気にせず手を振ってくれた。
こちらも手を振り返した後、腕を振り下ろすようにハルの腕を振り払った。

「いきなりどうしたの」

「あの悪魔、あまり良くない能力を持っている。必要以上に近づかない方が良い」

「えっ、どういうこと?」

「あ、居た居た! ルキっち~、こっちこっち~!!」

離れたところでバルドロさんが手を振って俺たちを呼んでいる姿が見えた。
話の続きを聞きたかったからどうしようか悩んでいると、ハルは俺の質問には答えず話を逸らしてきた。

「バルドロ君が呼んでいるよ、行ってあげた方が良いと思う」

「…まあいいや。でも女の子に“君”と言うのは違うんじゃない?」

「……」

しばらく気まずい沈黙が流れた。あれ、俺はなんかおかしい事言ったかな?
とりあえずハルの手を引いてバルドロさんの居る所へ向かった。

多くの悪魔や人間に囲まれていて気付かなかったが、バルドロさんの隣には背の高い男の悪魔が立っていた。
俺を見た後、ハルを見て眉をひそめている。

「ルキっち、紹介するよ。ボクの友人のディアっちだよ」

紹介されたディアさんはこちらに軽く一礼をした。
目の前で彼をじっくり見ていると、あまりの強い魔力に腰を抜かしそうになった。
なんだ、これは…世の中にはこんな悪魔が存在しているのか。

先ほどのキズナさんも強い悪魔だと一目で分かり、思わず警戒してしまったほどだが、このディアさんはそれ以上だ。見ているだけで埋められない力の差を感じ、背筋がぞわりと震えた。
仮に彼が目の前で無防備に眠っていたとしても、俺では傷ひとつつけることは出来ないだろう。

「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。ディアっち目つき最悪だしデリカシー0(ゼロ)だし可愛いボクにパフェもおごってくれない程ケチだけど比較的温厚だから」

「余計なことは言わなくていい」

そう言うとディアさんはバルドロさんの頭を軽く小突いた。
頭を押さえて『痛ぁ~』と言っているバルドロさんを見ていたら、なんだか緊張感がほぐれてきた。

「ああ、君が新しく来たっていう悪魔&人間コンビさん?」

突然どこからか、若々しくはきはきした声が聞こえてきたと思うと、ディアさんの後ろからひょっこり人間が顔を出してこちらを向いた。
白髪赤目のアルビノの青年だった。歳は10代後半といった感じだろうか。
背は低い方ではないが高身長のディアさんと並ぶと一回り小さく見える。灰色シャツに黒のベストにパンツ、動きやすいようなアウトドアシューズと町で見かける普通の人間のような格好だ。

「こんにちは。僕はアカツキ」

彼は握手を求めるかのように右手を差し出してきたので、こちらも右手を出して握手を交わした。
ニコリと笑う姿は気さくな好青年といった印象なのに、なんだか変わった形の魂をしている。

「えっと、アカツキさんはその…人間、ですよね?」

「そうだよ。悪魔は魂が見えるんでしょ?」

「分かるよルキっち、アカっちの魂なんか変だもん」

「えっ、そうなの…? ディア、僕の魂ってなんか変なの?」

アカツキさんは困惑したようにディアさんの方を向いた。
人間には俺たち悪魔と違って魂が見えないから気付かないのも分かるけど、ディアさん全然気にしていないんだ。ディアさんはアカツキさんをじーっと見て、言葉を選んでいるようだった。

「ええ、人形みたいで可愛らしい姿をしていますよ」

「「えぇ……」」

俺とバルドロさんはシンクロしたかのように同じように飽きれた顔をした。
アカツキさんはこちらに目もくれず、ディアさんの言葉に照れているみたいだった。


―――――――――


せっかくのパーティーなので、先に料理を持ってきてテーブルでお話しすることに。
渡されたお皿にいろんな料理を少しずつ乗せていく。

どれも美味しそうで、俺は肉魚野菜問わずいろんな食べ物を少しずつ乗せていった。ハルはからのお皿をもったまま立ち尽くしていたので、俺が勝手に盛り付けておいた。
俺たちがテーブルに戻る頃には3人とも席についていた。

バルドロさんはフルーツ中心の可愛いらしいプレート、
ディアさんはコーヒーとサンドイッチを数個、
アカツキさんは遠慮なくいっぱいお肉が盛られていた。

「こんなにお肉食べられるの、は最後かもしれないからね!」

そう言ってアカツキさんは笑顔で大きめにカットしたステーキに齧り付いた。

食事を交えながらの対談は思ったより盛り上がった。
バルドロさんが本当に話し上手で、上手く間を取り持ってくれて本当に助かった。
ハルは他の人たちより料理の方に興味があるようだった。自分から声を上げることもなく、黙々と食べている。でもちゃんと周りの話は聞いており、質問にはちゃんと答えていた。

「そういえばすご~く気になっていたんだけど、ディアっちとアカっちはどうやって恋人になったの?」

「こ、恋人!?」

俺は驚いて思わず声を上げた。肩がビクッと揺れて、フォークから薄切りのハムが皿にペタッと落ちた。

アカツキさんは誇らしげにこちらに向かってニコリと笑い、ディアさんも当然かのようにうなずいた。
いや、まあ先ほど惚気のろけていたし、納得と言えば納得なのか? しかしこんなに強い悪魔を惚れさせるとはいったいアカツキさんは何をしたというのだ。

ディアさんは会話している感じだと悪い性格とは思えないが、本心というか…イマイチ考えが読めない。
パッと見ただけですごく強い魔力を持っていることだって分かる。その力の全容を、おそらく俺は理解できていない。彼はとても顔が整っているし、バルドロさん曰く悪魔って強い存在に惹かれる傾向にあるから、彼に惹かれる者は数知れずだろうに。

「ふふっ、知りたい?」

「知りたい知りたい~」

胸を張っているアカツキさんに、バルドロさんは手をパチパチ叩きながらねだる。
確かにすごく気になる…今日一番気になるよこんなの!

「そうですね、アカツキの口からも聞いてみたいです」

そうディアさんが言うと、アカツキさんは持っていたコーヒーをくいっと飲んで『長くなるよ』と言った。
皆の視線が集まる中、アカツキさんはゆっくりと語り出した。

「ディアとの出会いは……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪魔はさせない

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 病棟で知り合った2人。生まれ変わって異世界で冒険者になる夢を叶えたい!

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~

一ノ瀬麻紀
BL
前世で恋人を失い、自身も命を落とした僕は──異世界で双子の兄として転生した。 新たな出会いと、再び芽生える恋心。 けれど、オメガとしての運命は、この世界でも僕を翻弄していく。 これは、前世の記憶を抱えた僕が、二度目の人生を懸命に生きる物語。 ✤✤✤ ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。 よろしくお願いします。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

目撃者、モブ

みけねこ
BL
平凡で生きてきた一般人主人公、ところがある日学園の催し物で事件が起き……⁈

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...