暁の悪魔達の狂愛物語【完結】

ノノノ

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第1部

プロローグ

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ここは昔、『アルマニア国』と呼ばれていた国の地下室。

今は住民も居ない、地図にも残っていないような小さな国であった。
町にも、人工的に作られたこの地下室にも、もうかつての面影はない。

澄んだ色の水晶や、美しい女神が描かれたステンドグラスなどは、砂と見分けがつかないほど粉々に砕けていた。
石に掘られた彫刻は一部辛うじて形を保っているが、長い年月をかけ少しずつ崩れており、壁には大きな穴が空いている。そこに太い木の根が絡みつき、細い光がこの地下室を僅かに照らしていた。
壁の状態や木の成長具合からここはかなり長い間、人の手入れがされていないことが分かる。


朝日で小鳥がさえずりだす頃、日の光を顔に受けた男が眩しそうに目を開けた。
根や葉の影にある程度遮断された弱い光とはいえ、顔に直接当たれば眩しいものだ。

男は広い地下室の中心に1人、両足の膝と脛を地面につけて座っていた。
立った状態からそのまま膝が落ちて崩れ落ちたかのような体勢だった。

毛先が肩にかかるくらいの長さの黒髪に、切れ長の赤い瞳、誰もが眉目秀麗とでも言うようなとても美しい男だった。
しかし彼に近づき声をかけようとするものなどほぼ居ないだろう。
なにせ彼の背中には、大きな羽が生えているのだ。

大きな鴉のような黒い羽は、呼吸のたびに僅かに上下に揺れる。
それはその羽が作り物ではなく、彼が人間ではなくと呼ばれる種族である何よりの証拠でもあった。

男は、日の光から逃れるように首を横に大きく傾けた。
ここから動く気はなさそうだ。
いや、正確には動けないのだろう。

彼の背中には怪力の戦士が両手で持ち上げるような大きな剣が深々と刺さっていた。
剣は胸を貫通し、そのまま地面に杭のように突き刺さっている。
そしてその胸の傷口から、魔法の赤い鎖が伸びて彼の全身を巻き付けるように縛っていた。男の血に込められている魔力を利用して作られた鎖だろう。
周りのものは長い年月をかけてあらゆる物が風化しかけているのに、彼自身は時が止まっているかのように当時の形を保っていた。

彼は遥か昔に封印された不老不死の大悪魔だった。

「おはようございます」

誰も居ない空間で男は声を発した。
全身を鎖に縛られているが、手首くらいは辛うじて動く。
縛られた右手で胸から突き出した大剣の刀身を愛おしそうに撫でながら、目を細めて笑っている。

そして毎日のように言っている言葉を…今日もその剣に話しかけた。

「本日も良い天気ですね、我が主」

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