魔力食いの令嬢は魔力過多の公爵に執着される

三園 七詩

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この国には魔力、魔法が存在する。

平民にも少ないが魔力は存在して、生活をするのにも多少なりとも魔法を使っていた。

それは重いものを持つ、物を乾かすなど簡単な生活魔法を使う程度だった。

貴族になると魔力量も多く生まれることがほとんどであった。
代々魔力が高い者同士が結婚してそれを維持していたのだ。

この国で唯一の王族も魔力が高く王族にしか使えない魔法もある。

公爵、侯爵、伯爵などその家に伝わる魔法などがあり、それが財産として扱われることもあった。

そんな魔力が当たり前の国では5歳になると洗礼を受ける。
これは貴族、平民みな平等だ。

たまに平民にも魔力量が多い者が生まれ、そうなると貴族が引き取る……とは言葉がいいが買い取る事もあった。

私はそんな国の伯爵令嬢として生まれた。
貴族の爵位としては普通、魔法も一般的なものばかりで地位としては真ん中ぐらいに位置していた。

伯爵家の長女として生まれ5歳になり洗礼を受けた。

「こ、この子は……」

魔力量を測る水晶玉の前で神父様の顔が引きつった。

両親が見守る中私の魔力量が言い渡された。

「フィオナ様の魔力量は……10です」

「「10?」」

両親が声を揃えて確認する。

「もう一度お願いいたします!  私の娘がそんなゴミみたいな魔力量のわけない!」

お母様が神父様に詰め寄った。

「私も信じられず二度確認致しました。フィオナ様の魔力量は10です」

「そ、それは今後増える可能性もあるんだよな!」

お父様が口調を崩しながら必死に問いかけるが、神父様は目を閉じて首を横に振った。

「多少前後するかもしれませんが、増えても微量でしょう」

余程絶望的な事だったのだろう、両親は無言になると私を連れて屋敷へと帰った。

その間いつもなら多少なり会話があるが、その日から私は両親からいないものとして扱われるようになった。

後で聞いたところ平民でも最低100ほどの魔力量がある。それでも最低だ。
そんな中私には10しかない。

洗礼を受け、屋敷での扱いが変わり数ヶ月経った頃家に女の子がやってきた。

「フィオナ、この子はカリーナよ。今日から、あなたの妹になります」

久しぶりに両親に会い、話しかけられたと思ったらいきなり妹ができた。

「カリーナはすごい子よ、平民だったけど魔力量が5万もあるんだから、誰かさんとは大違い」

お母様から冷たい視線が注がれる。

「お姉様?」

カリーナは私を見るとコテンと首を傾げた。

私より1つ下らしくその見た目は愛らしい。首を傾げる姿にメイド達も思わず笑っていた。

その日からカリーナは貴族として扱われるようになった。

私といえば屋敷の隣に立つ離れへと場所を移され、私の元いた部屋はカリーナの部屋になった。

「なんかあの子がいると体の調子が悪くなるのよね」

コソコソとメイド達が私を見て話している。

「貴族のくせに私より魔力がないのよ」

両親から蔑まれている私の扱いは使用人達にも移り、数年が経った頃には私は自分の事は自分でするようになっていた。

朝起きたら水を汲んできて顔を洗う。朝食はパンとスープが用意されるのでそれを食べた。
貴族ということもあり
最低限の教養とマナーは覚えさせられる。
覚えが悪いと怒られるので必死に覚えた。

それを終えると家の掃除を始める。
私の担当はカリーナの部屋だった。

カリーナは貴族として扱われるようになってから性格が変わってしまった。いや、元々そうだったのかもしれないが私が蔑まれる様子を見て真似をするようになった。

「お姉様臭いからそばに来ないで!」

近くを通れば大声でそんな事を言われ、両親からすぐに離れに戻るように言われる。

「お姉様が私を睨んだー!」

ただ目が合っただけで睨んだと泣かれると、両親の部屋に連れていかれ、躾けという名の暴力を受けた。

いつしかそんな生活が当たり前になっていた。

私は外に出ることなく身を潜め大人しく暮らしていた。
魔力がない私はずっとこのままなんだろうなと思っていた。

カリーナが10歳になった時、屋敷に魔法の家庭教師を招いた。

彼は若くして王宮の魔法士として働いている。王宮で魔法士になるには最低限でもかなりの魔力と自分だけが使える魔法を持っているのが必須となる。
目の前の彼は私が持っていない物を全て持っていた。

「エリオと申します。今日からよろしくお願いいたします。えっと魔法をお教えするお嬢様は……」

そう言うとカリーナと少し後ろで隠れるように立つ私をみた。

「あなた様ですか?」

「え?」

エリオ様は私の前に座り、手を差し出した。

私はびっくりして慌ててしまう。

「エリオ様この子は違いますわ、教えて欲しいのはカリーナです」

お母様は私を後ろに押しのけてカリーナをエリオ様の前に出した。

「よろしくお願いいたします」

カリーナは少し不機嫌そうに挨拶をする。
ここではなんでも一番なのに私に注目されて面白くないのだろう。

「え?……それは失礼しました」

エリオ様は一瞬驚いた顔をするがまた笑顔になりカリーナに挨拶をする。

「私のことはエリオ先生と呼んでください」

ニコッと微笑み挨拶をする。

エリオ先生は長い緑色の髪を編み込んでいる。見た目も美しく所作も綺麗だ。

そんな人に笑って挨拶をされてカリーナはすっかり機嫌が直った。

「早速今日から始めますか?」

両親に話をするので私はもう必要ないだろうとこの場を去りたくなった。

するとエリオ先生が私を見て両親に話し出す。

「もしよろしければあの子も教えますよ」

そう言って私に視線を向ける。

「いえ、あの子はその……魔力が」

両親が言葉を濁す。

「それでも魔法は教えられます。今後魔力が増えることもありますからね」

そう言われ両親は渋い顔をする。

「先生!  私この人と一緒に習いたくありません!」

カリーナははっきりと私を拒絶する。

「あー、それならカリーナ様を教えた後にえっと……」

「フィオナです」

名前を言うと先生はニコッと笑う。

「フィオナ様の方を見ましょうか」

「先生、私共としてはカリーナの方に力を入れて頂きたいです。フィオナの分もカリーナに」

そう言われ、先生が笑顔で答える。

「もちろん全力でお教えしますよ、でも一日で覚えるには限界があります。それ以上教えるとなるとカリーナ様が潰れてしまいます」

魔力として優秀な先生にそう言われてしまえば、何も言えなくなったようだ。

「それにフィオナ様の分の給金は頂きません。カリーナ様のついでに少しだけですから」

「それなら……」

両親はそう言われてようやく頷いた。
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