シャルル変態伯のいとも淫靡なる生活 ~メイドハーレム~

寺田諒

文字の大きさ
56 / 64
第三章

秋の日

しおりを挟む







 辺境伯領にも秋が訪れていた。屋敷の木々は夏の太陽で日焼けしたかのように、褐色へと移り変わっている。その葉も秋の深まりに連れて地上へと落下していった。
 木々の色づきに合わせるかのように、屋敷のメイドたちもすでに夏服から冬服へと変わっている。スカートの丈は長くなり、足首を隠すようになった。それに胸元もぴっちりと閉じているので、冷たい風が入り込む心配もない。
 そんな冬服に身を包んだ少女が、木々の間で熊手を使って落ち葉を集めていた。

「ふんふんふーん」

 少女は陽気に鼻歌を歌っている。清らかな水のように青い髪は肩にすら届かず、少女の頭を丸く彩っている。頬が形作る輪郭も丸く、目もつぶらだった。冬服に包まれた体は、まだ女らしい曲線を描いてはいない。
 胸の膨らみも大きいとは言えなかった。

 その体はまだ男の性欲を駆り立てるようなものではなかったが、その体はすでに男を知っている。幼さの残る小さな唇は、男の硬い欲望に吸い付いたこともあるし、その口の奥にある舌は男の体を舐め回し、欲望の白い雫を味わったこともある。

 しかし、その少女の愛らしい外見は、まるで男に触れたこともないかのように清浄だった。

「あー、いい天気。ふふふーん」

 熊手で地面をひっかくようにして落ち葉を集める。頑張って集めたところで落ち葉は無くなりはしなかった。次から次へと落ちてくるのだ。
 しかし、すべての落ち葉を集めろとは言われていないのでこれ以上頑張る必要もない。適当に集めておけばそれで十分だった。


 少女の名前はマリナという。
 マリナは陽気に鼻歌を歌いながら体を揺らした。こんな姿を誰かに見られたら恥ずかしいが、今は周りに誰もいない。屋敷は当然ながら塀で囲まれているが、その面積は林がいくつも入るほどに広い。
 中には馬を走らせるための馬場まである。マリナは馬場に用がなかったので、実際にそちらを訪れたことはなかった。

 屋敷で働く人間でさえ、この屋敷のすべての場所を訪れたわけではないのだ。


「いーいてーんき~~」

 節を付けて歌っていると段々気分も乗ってきた。もしかしたら自分には歌の才能があるのかもしれない。そう思うほどだ。
 いつか一緒に働く仲間に聞かせてみようかと思ったが、まだ恥ずかしい。もし本当に上手いのだったら、いつかこの屋敷の主人であるシャルルのために歌うのもいいかもしれない。
 シャルルが喜んでくれるなら、細い喉をいっぱいに震わせて歌うのに。

 気分がよくなってきて、マリナは持っていた熊手を振り回した。

「てやっ!」

 空を切ると思われた熊手だったが、ガンッと鈍い音がして背後で止まった。木にでもぶつかっただろうかと思ったが、背後に木は無かったはずだ。
 何かと思って振り向くと、そこにシャルルが立っていた。

「ひょえっ?!」

 シャルルは片手に持った長い棒で熊手の一撃を防いだようだ。急に振り回されたものをあっさり受け止めるのは凄いことだと思ったが、そんなことで感心している場合ではない。
 当然ながら、シャルルはこの屋敷の主人である。それだけでなく、辺境伯というとっても偉い貴族なのだ。広い領地を治めていて、何度も戦争で勝ったことのある英雄でもあった。

 そんなシャルルに攻撃をしてしまった。
 
「あわわわわわ、も、もうしわけありません!」
「気にするな。何も言わずに近づいた俺も悪かった」
「ふえっ?! い、いえ、そんな! 本当にもうしわけありませんでした!」

 深々と頭を下げる。ところが、急に頭を下げたものだからつんのめってしまった。その勢いのままシャルルのほうへと体が倒れ込む。
 このままではシャルルに頭突きを食らわせるか、もしくはそのまま地面に倒れ込むかという状況だった。もちろん後者のほうが良いのだが、想像とは違う事態になったようだ。

 シャルルがすっと手を伸ばし、こちらの体を支えたのだ。

「大丈夫か?」
「えええっ?! は、はい! 全然大丈夫です!」

 なんだかわからないままシャルルに支えられ、体を起こされてしまった。こうなるともう一度頭を下げるとなんだかシャルルの意向を無視してしまうのではないかと思ってしまう。

 よく見るとシャルルの上半身は薄いシャツ一枚だった。そんな格好で寒くないのかと思ったが、よく見るとシャルルは汗をかいていた。シャルルの美しい金髪は汗に濡れたのか、しっとりと重力に引かれている。

 どうやらシャルルは手に持った棒を振り回すか何かをしていたらしい。
 棒というよりは、槍を模したもののようだった。

 シャルルの顔をちらっと伺う。その美しい顔に怒りの色は見えない。まるで爽やかな秋風のようだ。

「あ、あの、本当にもうしわけありませんでした」
「気にするな。だが、急に何かを振り回すのはやめておいたほうがいい。誰かに怪我を負わせる可能性がある」
「は、はい……」

 どうやら本当に怒っていないようだ。シャルルに対して攻撃を加えたとなれば、下手をすれば死刑になってもおかしくはない。しかも相当残酷な方法での処刑だ。それでなくても、屋敷の主人に対してのこんな行為は、鞭打たれても仕方がない。クビで済むなら幸運中の幸運だろう。
 しかし、シャルルはクビどころかお仕置きもするつもりも無いようだ。

 なんて寛大な心の持ち主なのだろうと感心してしまう。

「ところでご主人さまはどうしてここに?」

 今にして思えば、シャルルが背後にいた理由がわからない。こんな場所に何か用があったのだろうか。
 シャルルは神妙に頷くと、右手をこちらへと伸ばしてきた。その指先がマリナの慎ましい大きさの胸に触れる。

「乗馬と槍の訓練を終えて屋敷に戻ろうとしたら、マリナの姿が目に入ってな。後ろからこっそり近づいて尻を揉もうと思ったら、いきなり熊手を振り回されて驚いた」
「こ、こっそりって。別にわたしは、ご主人さまがお望みならいつでもお尻を揉まれても」
「こっそり近づいて揉むほうが面白いだろう」
「そういうものですか……」

 シャルルの指先がマリナの乳房の先をくりくりと刺激する。指先が突起を弾いた。

「ひゃうっ!」

 急な刺激に声が漏れてしまう。腰が引けそうになった。
 シャルルはその反応を見て満足したように指を離した。それから持っていた棒を、落ち葉の山へ向かって倒した。その棒はどうやら随分と重たい木材でできているらしく、落ち葉の山を両断するように崩してしまった。

「ご主人さま、よくそんな重たいものを振り回せますね」
「できるだけ腕が鈍らないように鍛錬しているからな」
「はぇー……、すごいです。ご主人さまは頭も良くて偉いだけじゃなくて、かっこよくて力も強くてすごいです!」
「はっはっは、そんなの褒めても何も出ないぞ」
「いえそんな。本当にすごいと思います! 家柄もよくて、立派な貴族で、しかも顔もかっこいいですし、体つきもとっても逞しいですし」
「ははは、褒めすぎだ」
「それに戦争もとっても強くて、襲ってくる異民族をやっつけたり」

 そこまで言った瞬間、シャルルの両肩を掴まれた。あんまりにも褒めすぎてわざとらしいと思われたのだろうか。そう思ってシャルルの顔を見た時、マリナの体は凍りついた。
 シャルルの顔には激しい憤怒が宿っていた。烈火のような怒り。熊手で攻撃されても怒りもしなかった男が、今、激しい怒りに燃えている。


「やっつけたんじゃない、殺したんだ。俺が、この手で……、殺した」
「ひっ」

 理知的な青い瞳には燃える怒りが宿り、眉根には深い皺が寄る。シャルルの表情はまるで火に炙られているかのように苦痛に満ちていた。
 わからない。理由はわからない。ただ、シャルルの機嫌を損ねてしまったことは確かだった。
 きっと触れてはならないところに触れてしまったのだ。


「も、もうしわけありません!」

 自分にできることと言えば、謝罪をすることだけだった。

「もうしわけありませんでした!

 何度も何度も謝罪の言葉を繰り返し、頭を下げる。それでシャルルははっとしたようだった。

「あ、いや、怯えさせるつもりはなかった。気を悪くするな」
「本当にすみませんでした」
「いい、それ以上言うな」
「ひゃっ!」

 いきなり尻をむにっと揉まれた。シャルルはこちらの手に握られていた熊手を奪い取って、それを落ち葉の山に向かって倒した。

「まぁ戦はそんなにいいものではない。少なくとも、俺はそう思う」
「ご主人さま……」

 シャルルは落ち葉の山に視線を落としたまま息を吐いた。その整った横顔を見ていると、下腹部がきゅんと締まるような思いがした。
 きっと、あの怒りの表情は誰かに見せるものではなかったに違いない。あの燃え盛る炎に触れたせいか、体が熱くなる。誰も知らないシャルルの表情を知ってしまった。感情を知ってしまった。
 戦はシャルルにとっては良くない体験だったのだろう。それを小娘に触れられて激昂した。

 本当だったら、自分は反省しなければいけないのに、シャルルのあの怒りの表情を見てから、股の間がうずうずと騒ぎ出すのを感じた。
 シャルルの慰めになりたいと思った。他のメイドたちと比べれば、自分の体はまだ未発達だということはよくわかっている。アンジェなどはすらっとした体に豊かな胸もあって、本当に美しいと思えた。
 それに比べれば自分はお腹も少し出ているし、胸も小さいし、お尻も大きくはない。目の肥えたシャルルにとっては、カボチャやニンジンのようなものに過ぎないだろう。それでも、自分の体にはちゃんとシャルルを喜ばせるための器官がある。

 その狭く小さな穴は今、シャルルを喜ばせるために潤々と蜜を分泌していた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

処理中です...