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突然の告白
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「わぁぁぁん!」
ローズは今、自室の机に突っ伏して泣いている。そんなローズの頭を、ヨシヨシと隣で撫でる一人の男がいた。
その男の名はベルギア。最年少で王都魔法省に務めるエリートであり、ローズの父親に頼まれてローズが幼い頃からずっとローズの家庭教師をしている。ローズにとっては兄のような存在であり、唯一心を許せる存在だ。
すらりと背が高く明るいブロンドの髪にオパールのような瞳で見た目も申し分なく、何より若くしてエリートの道を進むベルギアに熱を上げる令嬢は少なくないが、なぜかベルギアはどんな令嬢にも興味を示さない。
「婚約解消されてよかったじゃないか。あの男はそもそもあまり良い噂を聞かないからね。ローズは男を見る目がなかったんだよ」
ベルギアに言われてローズは思わずベルギアを見上げる。その顔はベルギアの言葉を非難するでもなくただただ悲しみにくれた表情だった。その表情を見て、ベルギアは心が痛む。
「……ごめん、ローズは本当にケイロンのことを好きだったんだね」
ベルギアにそう言われて、ローズは体を起こして静かに首を横に振った。
「良いんです、ベルギアお兄様は何も悪くないですから。それに、よくわからないの。ケイロン様のことは確かに好きだったけれど、今のケイロン様は本当に別人のようで。いつからあんな風に変わってしまったのか……。私の知っているケイロン様ではないんだもの」
ローズの言葉に、ベルギアはほんの少しだけ眉を顰めた。
「ローズ、君はきっとケイロンの本当の姿を知らなかったんだよ。俺の知っているケイロンはむしろ今回君に酷いことを言った彼の方だ。君はケイロンのうわべの姿だけを見せられていて、それに恋心を抱いていただけなんだよ」
ベルギアはローズの頭を優しく撫でてから、そっと髪の毛を耳にかけた。
「それにローズはきっと初めて自分が誰かに必要とされていると思って嬉しかったんだろう?君は人見知りが強くてあまり人と関わらない。ケイロンの方から進んで君に近づいてきたから嬉しかったんだよきっと。それを恋心と勘違いしていただけかもしれない。君は押しに弱いんだね」
ローズはベルギアの言葉を聞いてほんの少しわかるような、でも違うと言いたくなるような複雑な心境だ。確かに自分から誰かに近寄ることのできないローズはあまり人を知らない。そんなローズを他の人たちと分け隔てなく接し、気に入ったと声を大にして言ってくれたケイロンの姿が嬉しかっただけなのかもしれない。でもケイロンを思う気持ちが勘違いだっただなんて、今までの楽しかった時間や努力が無駄になるような気がして、ローズは腑に落ちない。
ほんの少しむくれたようなローズの様子に、ベルギアはフッと微笑んだ。
「俺としては君たちの婚約解消は願ったりだよ。今までは婚約しているからと遠慮していた、いや、諦めていたけれど、もうその必要はない」
ローズはベルギアの方を見て首を傾げた。
(どうしてベルギアお兄様は婚約解消を喜んでいるの?一緒に悲しんでくださらないのね……。それに、遠慮とか諦めってなんのことかしら?)
「ローズ、俺と婚約してくれませんか?今はケイロンのことで頭がいっぱいかもしれないけれど、そんなこと忘れてしまうくらい君を大切にするし幸せにするよ」
ローズの手をとり手の甲にちゅ、とキスをする。ローズは一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐにベルギアの唇の感触に気づいて思わず顔が真っ赤になる。
「あはは、本当に君はかわいいね、俺の愛しのローズ」
ローズの様子を見て、ベルギアは愛おしそうにそして満足そうに微笑んだ。
ローズは今、自室の机に突っ伏して泣いている。そんなローズの頭を、ヨシヨシと隣で撫でる一人の男がいた。
その男の名はベルギア。最年少で王都魔法省に務めるエリートであり、ローズの父親に頼まれてローズが幼い頃からずっとローズの家庭教師をしている。ローズにとっては兄のような存在であり、唯一心を許せる存在だ。
すらりと背が高く明るいブロンドの髪にオパールのような瞳で見た目も申し分なく、何より若くしてエリートの道を進むベルギアに熱を上げる令嬢は少なくないが、なぜかベルギアはどんな令嬢にも興味を示さない。
「婚約解消されてよかったじゃないか。あの男はそもそもあまり良い噂を聞かないからね。ローズは男を見る目がなかったんだよ」
ベルギアに言われてローズは思わずベルギアを見上げる。その顔はベルギアの言葉を非難するでもなくただただ悲しみにくれた表情だった。その表情を見て、ベルギアは心が痛む。
「……ごめん、ローズは本当にケイロンのことを好きだったんだね」
ベルギアにそう言われて、ローズは体を起こして静かに首を横に振った。
「良いんです、ベルギアお兄様は何も悪くないですから。それに、よくわからないの。ケイロン様のことは確かに好きだったけれど、今のケイロン様は本当に別人のようで。いつからあんな風に変わってしまったのか……。私の知っているケイロン様ではないんだもの」
ローズの言葉に、ベルギアはほんの少しだけ眉を顰めた。
「ローズ、君はきっとケイロンの本当の姿を知らなかったんだよ。俺の知っているケイロンはむしろ今回君に酷いことを言った彼の方だ。君はケイロンのうわべの姿だけを見せられていて、それに恋心を抱いていただけなんだよ」
ベルギアはローズの頭を優しく撫でてから、そっと髪の毛を耳にかけた。
「それにローズはきっと初めて自分が誰かに必要とされていると思って嬉しかったんだろう?君は人見知りが強くてあまり人と関わらない。ケイロンの方から進んで君に近づいてきたから嬉しかったんだよきっと。それを恋心と勘違いしていただけかもしれない。君は押しに弱いんだね」
ローズはベルギアの言葉を聞いてほんの少しわかるような、でも違うと言いたくなるような複雑な心境だ。確かに自分から誰かに近寄ることのできないローズはあまり人を知らない。そんなローズを他の人たちと分け隔てなく接し、気に入ったと声を大にして言ってくれたケイロンの姿が嬉しかっただけなのかもしれない。でもケイロンを思う気持ちが勘違いだっただなんて、今までの楽しかった時間や努力が無駄になるような気がして、ローズは腑に落ちない。
ほんの少しむくれたようなローズの様子に、ベルギアはフッと微笑んだ。
「俺としては君たちの婚約解消は願ったりだよ。今までは婚約しているからと遠慮していた、いや、諦めていたけれど、もうその必要はない」
ローズはベルギアの方を見て首を傾げた。
(どうしてベルギアお兄様は婚約解消を喜んでいるの?一緒に悲しんでくださらないのね……。それに、遠慮とか諦めってなんのことかしら?)
「ローズ、俺と婚約してくれませんか?今はケイロンのことで頭がいっぱいかもしれないけれど、そんなこと忘れてしまうくらい君を大切にするし幸せにするよ」
ローズの手をとり手の甲にちゅ、とキスをする。ローズは一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐにベルギアの唇の感触に気づいて思わず顔が真っ赤になる。
「あはは、本当に君はかわいいね、俺の愛しのローズ」
ローズの様子を見て、ベルギアは愛おしそうにそして満足そうに微笑んだ。
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