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ベルギアの思い
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「ベルギア、君がローズの結婚相手だったらどれほどよかったか」
ローズの父親に何度言われただろうか。ローズの婚約者ケイロンの学園での良くない話があちこちから聞こえてくるたびに、ベルギアはローズの父親から冒頭の言葉を言われるのだった。
(俺だって、ローズの婚約者が俺だったならっていつも思っているのに)
ケイロンは学園では傍若無人、気に入らないクラスメイトにはいじめにも近いような行いをしているそうだ。家柄がそうさせてしまうのか、それともご両親の育て方が悪かったのか、自分の家柄の良さを翳しては他者を見下しぞんざいな扱いを行なっていた。
そんなケイロンの行いを同じ学園にいるローズが知らないはずがない。だが、ローズは人見知りが強いためにほとんど友人がいない。いても限られており、その友人たちもまた人見知りが激しく学園内の人間関係については全く知らないのだ。それゆえ、ケイロンの学園内での行いをローズが知るはずもなく、またケイロンもローズの前だけでは人柄の良い男を装っていた。
ケイロンの家はローズの家よりも身分が高い。それゆえローズの両親は婚約解消を言い出すことができず、ただただローズの将来を心配していた。
そして、何よりずっとローズの近くにいて見守ってきたベルギアこそ、ローズの幸せを願い、ケイロンではなく自分がローズと一緒になれたらと密かに思い続けていた。
ベルギアがローズの家庭教師になったのはローズが六歳の時だ。魔力を持つ者と持たない者どちらも存在するこの国で、ローズは魔力を持っていた。ローズの父親とベルギアの父親は昔ながらの友達で、ローズに魔力があるとわかるとローズの父親はベルギアの父親を介してベルギアに家庭教師を頼んだのだ。
ベルギアは幼い頃から通常ではあり得ないほどの魔力の持ち主で、学園でもトップクラスの成績だった。そんなベルギアは幼い子供に魔法を教えることを最初は面倒に思っていたが、ローズは控えめながらも勉強熱心でなんでも吸収しようとする。その姿勢が好ましく思え、ローズがベルギアを兄のように慕うように、ベルギアもローズを妹のように可愛がっていた。
ローズが十歳でケイロンに見染められ婚約することになった時も、妹のようなローズの幸せを兄のように喜んだ。だが、ローズが成長し学園に入学するようになった頃から、ケイロンの学園での良くない行動があちこちから耳に入るようになる。その度にローズは本当に幸せになれるのだろうかと疑問になっていくのだった。
だが、そんなベルギアの心配をよそに、ローズはケイロンにふさわしい淑女になれるようにと必死に努力し続けた。そんなローズの健気な姿を見るたびに、ベルギアの心は痛み、苦しくなってしまう。
(あんな男のためにローズがこんなに頑張っているなんて……。そんなことをしてもきっとローズは幸せになれないのに。ローズには絶対幸せになってほしい、むしろ幸せにしたい。ローズの婚約者が俺だったならよかったのに)
ある時そんな風に思う自分に気づいたベルギアは、今まで妹のように思っていたローズがいつの間にか一人の女性として自分の心の中に存在していたことに動揺する。あんなに小さく可愛らしい子供だったローズが成長するにつれ、いつの間にか美しい令嬢に育っていて時折胸が高鳴っていたことは間違いない。
ゆるいウェーブのかかった長く美しい金色の髪、きめ細やかな白い肌、小さな頃の可愛らしさを残しつつ、体つきもしっかり女性になりつつある。見て見ぬふりをしてきたがそういう目で見てしまえばベルギアも男だ、胸が熱くなることに変わりはない。
何より、ローズは心が優しくて純粋だ。両親の育て方が良かったのだろうがあまりに素直すぎて心配になってしまうほどで、そんなところも庇護欲をそそってしまうのかもしれない。
(いや、歳が離れすぎているし、そもそもローズは妹みたいなものだ。今更そんな、ローズを一人の女性として思うなんて間違っている。それにローズには婚約者が……)
ケイロンのことを考えると心が重く沈む。あんな男がローズの婚約者で未来の結婚相手だなんて許せない。これは兄としての思いではなく、紛れもなく一人の男としての思いだ。そう気づいたベルギアは余計に苦しさが増していく。
それでも、頑張るローズをずっと応援してきたし何があってもローズの一番の理解者でありたいと、ベルギアは自分の気持ちを仕舞い込みながらずっと過ごしてきたのだ。
そんな時に、ケイロンの心変わりと婚約解消の話をローズから聞かされたベルギアは、ローズに対して酷い仕打ちをしたケイロンを憎むと同時に感謝もしていた。
(悲しむローズには申し訳ないが、俺にとっては最高に喜ばしいことなんだよ。もうこの気持ちを隠す必要も遠慮する必要もない。堂々とローズを思って良いんだ)
ローズの父親に何度言われただろうか。ローズの婚約者ケイロンの学園での良くない話があちこちから聞こえてくるたびに、ベルギアはローズの父親から冒頭の言葉を言われるのだった。
(俺だって、ローズの婚約者が俺だったならっていつも思っているのに)
ケイロンは学園では傍若無人、気に入らないクラスメイトにはいじめにも近いような行いをしているそうだ。家柄がそうさせてしまうのか、それともご両親の育て方が悪かったのか、自分の家柄の良さを翳しては他者を見下しぞんざいな扱いを行なっていた。
そんなケイロンの行いを同じ学園にいるローズが知らないはずがない。だが、ローズは人見知りが強いためにほとんど友人がいない。いても限られており、その友人たちもまた人見知りが激しく学園内の人間関係については全く知らないのだ。それゆえ、ケイロンの学園内での行いをローズが知るはずもなく、またケイロンもローズの前だけでは人柄の良い男を装っていた。
ケイロンの家はローズの家よりも身分が高い。それゆえローズの両親は婚約解消を言い出すことができず、ただただローズの将来を心配していた。
そして、何よりずっとローズの近くにいて見守ってきたベルギアこそ、ローズの幸せを願い、ケイロンではなく自分がローズと一緒になれたらと密かに思い続けていた。
ベルギアがローズの家庭教師になったのはローズが六歳の時だ。魔力を持つ者と持たない者どちらも存在するこの国で、ローズは魔力を持っていた。ローズの父親とベルギアの父親は昔ながらの友達で、ローズに魔力があるとわかるとローズの父親はベルギアの父親を介してベルギアに家庭教師を頼んだのだ。
ベルギアは幼い頃から通常ではあり得ないほどの魔力の持ち主で、学園でもトップクラスの成績だった。そんなベルギアは幼い子供に魔法を教えることを最初は面倒に思っていたが、ローズは控えめながらも勉強熱心でなんでも吸収しようとする。その姿勢が好ましく思え、ローズがベルギアを兄のように慕うように、ベルギアもローズを妹のように可愛がっていた。
ローズが十歳でケイロンに見染められ婚約することになった時も、妹のようなローズの幸せを兄のように喜んだ。だが、ローズが成長し学園に入学するようになった頃から、ケイロンの学園での良くない行動があちこちから耳に入るようになる。その度にローズは本当に幸せになれるのだろうかと疑問になっていくのだった。
だが、そんなベルギアの心配をよそに、ローズはケイロンにふさわしい淑女になれるようにと必死に努力し続けた。そんなローズの健気な姿を見るたびに、ベルギアの心は痛み、苦しくなってしまう。
(あんな男のためにローズがこんなに頑張っているなんて……。そんなことをしてもきっとローズは幸せになれないのに。ローズには絶対幸せになってほしい、むしろ幸せにしたい。ローズの婚約者が俺だったならよかったのに)
ある時そんな風に思う自分に気づいたベルギアは、今まで妹のように思っていたローズがいつの間にか一人の女性として自分の心の中に存在していたことに動揺する。あんなに小さく可愛らしい子供だったローズが成長するにつれ、いつの間にか美しい令嬢に育っていて時折胸が高鳴っていたことは間違いない。
ゆるいウェーブのかかった長く美しい金色の髪、きめ細やかな白い肌、小さな頃の可愛らしさを残しつつ、体つきもしっかり女性になりつつある。見て見ぬふりをしてきたがそういう目で見てしまえばベルギアも男だ、胸が熱くなることに変わりはない。
何より、ローズは心が優しくて純粋だ。両親の育て方が良かったのだろうがあまりに素直すぎて心配になってしまうほどで、そんなところも庇護欲をそそってしまうのかもしれない。
(いや、歳が離れすぎているし、そもそもローズは妹みたいなものだ。今更そんな、ローズを一人の女性として思うなんて間違っている。それにローズには婚約者が……)
ケイロンのことを考えると心が重く沈む。あんな男がローズの婚約者で未来の結婚相手だなんて許せない。これは兄としての思いではなく、紛れもなく一人の男としての思いだ。そう気づいたベルギアは余計に苦しさが増していく。
それでも、頑張るローズをずっと応援してきたし何があってもローズの一番の理解者でありたいと、ベルギアは自分の気持ちを仕舞い込みながらずっと過ごしてきたのだ。
そんな時に、ケイロンの心変わりと婚約解消の話をローズから聞かされたベルギアは、ローズに対して酷い仕打ちをしたケイロンを憎むと同時に感謝もしていた。
(悲しむローズには申し訳ないが、俺にとっては最高に喜ばしいことなんだよ。もうこの気持ちを隠す必要も遠慮する必要もない。堂々とローズを思って良いんだ)
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