「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

7話

　クラウディアの青魔鉱による魔導具製造の成功は、瞬く間に辺境領の経済を潤した。公爵の厳格な管理のもと、高性能な魔導具は王都へも輸出され始めた。

　王都は、辺境の領地が突如として生み出した青魔鉱製品の品質に驚愕した。

　王宮の貴族たちは、その利益を奪おうと画策したが、公爵領がアレクシス公爵自身の強大な軍事力と、クラウディアの完璧な会計管理で鉄壁の守りを築いていることを知り、手出しができなかった。

　一方、王都の宮廷では、クラウディアを追放した当事者であるアルバート王太子と、その婚約者となったリリアンが、贅沢な生活を送っていた。しかし、リリアンは公爵夫人となった姉の成功を知り、嫉妬に狂い始めていた。

「どうしてですの、アルバート様！あの地味で能無しのお姉様が、なぜ辺境で成功を収めているのですか！？」リリアンは、王太子の執務室で不満をぶつけた。

　王太子は、苛立ちを隠せない。

「リリアン、静かにしろ！辺境からの税収が増えているのは事実だ。だが、それは公爵の厳格な統治が功を奏しただけ。あの地味なクラウディアが関わっているはずがない！」

　しかし、王太子の心の中では、クラウディアが領地の資料整理に驚くほど長けていた事実がよみがえっていた。彼女の地味な知恵は、国庫に密かに貢献していたのだ。その価値を見抜けず、「地味だ」の一言で切り捨てた自分の愚かさに、王太子は微かな後悔を感じ始めていた。

　グレイヴナー公爵邸では、クラウディアの地位は揺るぎないものとなっていた。彼女はもはや「お飾り」ではなく、領地経営の要だった。

　クラウディアは、公爵の腹心である騎士団長オスカーからも深く信頼されていた。

「公爵夫人」

　オスカーは深々と頭を下げる。

「辺境にこのような繁栄をもたらしてくださるとは、夢にも思いませんでした。以前、公爵様にお荷物と申し上げたことを、心よりお詫び申し上げます」

「顔を上げてください、オスカー殿」

　クラウディアは微笑んだ。

「わたくしの力は、公爵様がその価値を認めてくださったからこそ、活きているのです」

　その会話を、執務室の奥から聞いていたアレクシス公爵は、静かに頷いた。彼の愛は、日々深まっていた。

　夜。公爵はクラウディアを自分の膝に乗せ、背後から抱きしめていた。彼は、クラウディアの頭を自分の肩に埋める。

「君の才能は、王都の愚か者どもには分からない。彼らが求めたのは、華やかで偽りの光だ。君が持つ真実の価値は、俺だけが知っていればいい」

　クラウディアは、公爵の冷たい軍服の上から、彼の強靭な体躯を抱きしめ返した。

「公爵様、わたくしは、もう王都を気にしていません。わたくしの居場所は、あなたの腕の中と、この辺境にあります。王太子やリリアンが、わたくしの功績に嫉妬するのは当然ですわ。彼らの破滅は、もう始まっているのですから」

　公爵は、彼女の強さと冷静さに満たされた。

「ああ、クラウディア。君のその冷徹な知性が、俺の心を最も熱くする」

　公爵は、クラウディアの耳元で囁いた。

「王都が崩壊しても、君とこの領地は決して崩壊させない。彼らが君を侮辱した後悔の念に溺れ、地の底で苦しむ姿を見るまで、君の才能は俺が守り続ける。君の全ては、俺だけのものだ」

　公爵の愛は、ただ甘いだけではない。復讐と独占欲に裏打ちされた、深く重い、大人の愛だった。そしてクラウディアは、その愛の強固な庇護の中にこそ、最高の安堵を見出していた。