婚約破棄された令嬢、商才と魅力で運命を変える

腐ったバナナ

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21話

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 朝の柔らかな光が、エリスの書斎の窓から差し込む。窓辺には昨日仕入れたばかりの香草や小さな鉢植えが並び、部屋全体にささやかな温もりを与えていた。

「昨日の契約、取引先も喜んでくれたようです。支払いは来週の初めに」

 とカイが報告する。

「ありがとう、カイ。あなたがいてくれるから、私は安心して事業に集中できるわ」

 とエリスは微笑みながら答えた。

「でも、君がいなかったら、僕もどうしていいか分からなかったかも」

 とカイが少し照れたように笑う。

 書斎の扉が静かに開き、侍女のリリィが顔をのぞかせる。

「エリス様、朝食の準備ができています」

「わかったわ、すぐ行くわね」

 エリスは書類を片付け、立ち上がる。

「リリィ、今日のお茶は新しい香草を使ってみたの?」

 と尋ねると、リリィはにっこりと頷いた。

「はい、エリス様。少し甘みも加えました」

 庭に出ると、新たに契約した商人たちが品物の納品準備をしており、エリスは手早く指示を出す。

「この順番で運んで、商品は傷をつけないようにね」

「わかりました、エリス様」

 と商人の一人が答える。
 エリスは少し離れた場所からその光景を眺め、深く息をついた。かつては社交界で孤立し、婚約破棄の屈辱に押し潰されそうだった日々――その記憶はまだ消えていない。しかし、今の彼女は自らの手で日々を築き、確かな信頼と成果を手に入れていた。

 昼下がり、縁談候補の若き侯爵が訪れた。控えめながらも礼儀正しく、礼を尽くす彼にエリスは微笑む。

「お茶をどうぞ」

「ありがとうございます、エリス様」

 と侯爵が座りながら言った。

「事業の方も順調だと聞きました」

「ええ、おかげさまで。カイや協力者たちの助けがあったからこそです」

 侯爵はうなずき、少し照れた様子で続ける。

「いつも周囲の人々を大切にされているのですね」

「そうですね。支えてくれる人がいてこそ、私は前に進めるのです」

 夕方、カイと共に書斎で明日の納品の準備を進めながら、エリスはふと思った。

「カイ、今日の取引、何か問題はなかった?」

「特にありません。ただ、少し在庫の見積もりが甘かったかもしれません」

「なるほど。では次回はもう少し余裕をもたせましょう。準備は大事ですから」

 暖炉の火が静かに揺れる書斎で、エリスは深く息をつき、日誌に今日の出来事を書き記す。

「今日はうまくいった」

 と小さく呟き、ページを閉じる。その目には、かつての孤独や屈辱の影はなく、確かな自信と未来への希望が宿っていた。
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