「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。

腐ったバナナ

文字の大きさ
8 / 9

8話

しおりを挟む
 エドガー侯爵が辺境から屈辱的な敗北と共に王都へ戻った直後、隣国アステア王国の第三王子による正式な制裁が開始された。

 レオンは、自身の婚約者であるアリアンナを侮辱し、その才能を蔑んだ罪として、エドガーのノイマン侯爵家に対して、経済的・政治的な圧力を容赦なくかけた。

 アステア王国は、侯爵家が主要な取引先とする隣国であり、レオンの指示一つで侯爵家の商路は完全に断たれた。さらに、レオンは侯爵家が過去に行った不正な取引を公然と暴き、エドガーは公衆の面前で失脚へと追い込まれた。

「『無能な妻』を失ったことで、ノイマン侯爵家は真の無能となった。彼らは、至宝の価値を見抜けなかった代償を支払うべきだ」

 レオンの冷徹な声明は王都中に響き渡り、エドガー侯爵は「元妻の才能を見抜けず、隣国王子に制裁された愚か者」として、社交界の笑い者となり、完全に没落した。

 制裁は、アリアンナの元実家であるグランツ公爵家にも及んだ。レオンは、魔力がないことを理由に娘を蔑み、冷遇した公爵家に対しても、政治的な非難と冷たい牽制を加えた。

 王都の貴族たちは、「無能な妻」と蔑まれたアリアンナの真の価値と、彼女を擁護する隣国王子の底知れぬ愛と権力を思い知り、恐怖した。

 アリアンナの周囲から、過去の侮辱と悪意は完全に消え去った。

 辺境の診療所に戻ったレオンは、冷徹な制裁者としての顔を捨て、愛する婚約者に対する過剰なまでの溺愛者へと戻った。

「アリア。もう、誰も貴女の自由と安寧を脅かすことはありません。王都の汚れた貴族どもは、全て後悔の念に苛まれています」

 レオンは、アリアンナを強く抱きしめ、その美しい銀髪に何度もキスをした。

「貴女は、貴族のしがらみから完全に解放された。これからは、私の愛にだけ身を委ねてください」

 彼の愛は、もはや執着と呼べるほど強かった。レオンは、アリアンナが少しでも他の男性と話すこと、そして彼女の優しさが自分以外に向けられることに、激しい嫉妬心を燃やした。

「アリアの才能は、私の王国のために存分に活かされるべきだ。そして、貴女の温かい心は、私だけを癒やすためにある」

 アリアンナは、レオンの独占的な溺愛に戸惑いつつも、自分が心から必要とされ、愛されている幸福を深く感じていた。

「レオン。貴方は、私の才能を肯定し、傷ついた心を癒やしてくれた。貴方がいれば、私はもう何も怖くないわ」

 彼女は、魔力がないという足枷から解放され、隣国王子に溺愛される王妃の座を手にすることで、「無能」という過去の汚名を完全に晴らした。

 レオンは、アリアンナを隣国アステア王国の正式な婚約者として迎え入れるため、辺境の診療所を閉鎖し、隣国への帰還を準備し始める。

 二人の愛と才能に満ちた新しい生活は、これから始まるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり
恋愛
「君は退屈だ」と婚約を破棄された令嬢クラリス。社交界にも、実家にも居場所を失った彼女がたどり着いたのは、静かな田舎町アシュベリーの図書館でした。 本の声が聞こえるような不思議な感覚と、真面目で控えめな彼女の魅力は、少しずつ周囲の人々の心を癒していきます。 そんな中、図書館に通う謎めいた青年・リュカとの出会いが、クラリスの世界を大きく変えていく―― 身分も立場も異なるふたりの静かで知的な恋は、やがて王都をも巻き込む運命へ。 癒しと知性が紡ぐ、身分差ロマンス。図書館の窓辺から始まる、幸せな未来の物語。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

婚約破棄されましたが、隣国の大将軍に溺愛されて困ってます

有賀冬馬
恋愛
「君といると退屈だ」 幼い頃からの許嫁・エドワルドにそう言われ、婚約破棄された令嬢リーナ。 王都では“平凡で地味な娘”と陰口を叩かれてきたけれど、もう我慢しない。 わたしはこの国を離れて、隣国の親戚のもとへ―― ……だったはずが、なぜか最強でイケメンな大将軍グレイ様に気に入られて、 まさかの「お前は俺の妻になる運命だ」と超スピード展開で屋敷に招かれることに!? 毎日「可愛い」「お前がいないと寂しい」と甘やかされて、気づけば心も体も恋に落ちて―― そして訪れた国際会議での再会。 わたしの姿に愕然とするエドワルドに、わたしは言う。 「わたし、今とっても幸せなの」

処理中です...