追放された令嬢、辺境の小国で自由に生きる

腐ったバナナ

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15話

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 朝の光が静かに城跡の窓から差し込む。柔らかな光に包まれたリディアは、昨日の夜に火事を防いだ村人たちの安堵の笑顔を思い返していた。

 遠くの森では小鳥がさえずり、風に乗って薬草の香りが部屋まで届く。長い孤独と不安の日々を経て、今のこの穏やかな時間が、何よりも愛おしい。

「おはよう、リディア様」

 朝食の準備をしていた村人のマリアが笑顔で声をかける。

「おはよう、マリア。今日も天気が良さそうね」

 リディアは手を休め、窓の外を眺める。庭にはハーブが整然と植えられ、鳥たちが枝から枝へ飛び移る。小さな幸せが、彼女の心を満たしていく。

「ねえ、今日は特別な日よね」

 マリアの声にリディアは振り返った。目の前には、長年村を支えてきた仲間たちの温かい視線があった。今日は、村人たちがリディアに感謝の気持ちを形にして伝える日だった。

「はい、今日はみんなでこの村を守ってくれたあなたに感謝を示す日です」

 村の長老が微笑みながら言う。リディアは少し照れくさそうに頭を下げる。

「そんな、大げさですよ。私はただ、みんなと一緒に暮らしているだけです」

 だが心の奥底では、この村での生活が自分の居場所であり、役に立てる喜びを感じていた。宮廷では“役立たず”と烙印を押され、居場所すらなかった自分が、今ここで必要とされている。

「でも、リディア様がいなければ、この村は今頃……」

 長老の言葉に、彼女は言葉を失う。火事や病気、幾度もの危機を共に乗り越えた日々を思い出す。涙が滲むが、笑顔で振り返る。

 その時、城門の方から軽やかな足音が聞こえた。振り向くと、彼女の傍に立つのは、辺境の小国で共に村を守り、支えてきた青年——リディアの心を穏やかにする存在だった。

「おはよう、リディア」

「おはよう……。今日も村は穏やかね」

 二人の目が合い、微笑みが交わされる。言葉はいらなかった。互いの存在が、長い孤独の時間を埋めてくれていることを、十分に伝えていた。

 その日の昼、村人たちは小さな祝祭を開いた。手作りの食事、花で飾られた広場、子どもたちの元気な声——全てがリディアを中心に回っているかのようだった。彼女は深呼吸をして、穏やかな風を感じる。

(私は、この村で自由に生きられる……誰にも干渉されず、誰にも否定されず、ただ穏やかに暮らせる……)

 心の中で静かにそう確信する。宮廷の喧騒や元婚約者の思惑、過去の孤独や涙は、今の彼女の幸せを壊すことはもうできない。

 夜、城跡の広間で仲間たちと笑い声を交わしながら食事をする。火の揺らめきが壁に影を落とす中、リディアはそっと青年の手を握った。

「これからも、ずっと一緒にいてくれる?」

「もちろん。リディアと一緒なら、どんな日も安心だ」

 その言葉に、リディアは全身で安堵を感じる。自由で、穏やかで、そして愛に満ちた日々——これが、彼女の望んでいた未来だった。

 窓の外では満天の星が輝き、遠くの山々が静かに夜を迎える。辺境の小国の村に、静かな幸福が根付き、リディアは深く息を吐いた。誰にも邪魔されず、誰にも否定されず、ただ穏やかに日々を生きる。

 彼女はそっと目を閉じ、心の中で永遠の誓いを立てる。

「ここが私の場所。ここで私は、誰よりも自由で幸せに生きる――」

 星明かりの下、リディアの笑顔は穏やかに輝き、辺境の小国に新しい日常が静かに、しかし確かに始まったのだった。
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