気づいたら悪役令嬢でしたが、破滅フラグは全力で避けます!

腐ったバナナ

文字の大きさ
2 / 16

2話

しおりを挟む
 王宮の庭園は朝露で光り、花々の香りが淡く漂っていた。
 リリナ・フォン・ヴァルデンは、軽やかな足取りで散歩に出た。
 転生したばかりでまだ世界に慣れず、庭園の景色一つにも新鮮な驚きがある。

「ふふ、今日も平和……と見せかけて、フラグはないかしら」

 心の中でつぶやきながら、リリナは目を光らせる。

 何しろこの世界では、ちょっとした言動で王子を怒らせたり、ヒロインを泣かせたりして破滅する。
 ゲームで何度も見た結末を思い出すだけで、背筋がぞくっとする。

 そのとき、花壇の向こうから甲高い声が聞こえた。

「まあ、リリナじゃない!今日もお美しいこと!」

 振り返ると、ヒロインのエリスが笑顔を振りまきながら歩いてくる。

「……また、あの笑顔か。フラグの匂いがするわ」

 リリナは内心で警戒しつつ、表情には出さずに微笑む。

「おはようございます、エリス様。今日もお元気そうで何よりです」

「まあ、リリナまで!礼儀正しいのね。でも、昨日の王子様との話、ちょっと聞いたわよ?」

 エリスの笑みには挑発の色がちらつく。

「え……昨日の話?」

 リリナは少し動揺した。昨日の出来事は、フラグ回避のために王子の前でうまく立ち回ったつもりだったが、思わぬ形で誤解されてしまったのだ。

「ふふ、王子様が少し不機嫌だったとか、リリナが困った顔をしていたとか。可愛らしい噂よね」

 エリスの声には明らかに嫉妬の混ざった嘲笑がある。
 リリナは冷静を装うが、心の中では焦っていた。
 ――ああ、これは破滅フラグの匂い。早く回避しないと!

「そ、そうですか……気をつけます」

 その瞬間、王子が庭園に現れた。

「リリナ、少し話がある」

 彼の顔は真剣で、眉間に皺が寄っている。リリナの心臓が一瞬跳ねた。

「えっと……ど、どうされましたか?」

「君の行動、少し気になるところがあってな」

 その言葉に、リリナの胸が締め付けられる。
 ――やばい、フラグ立った?

 王子は近づきながら、庭の花を指差した。

「この花の手入れ、昨日の夜君がしたのか?」

「はい……少しだけですが、綺麗にしておきました」

「……なるほど、だが、もう少し丁寧にやるといい」

 王子の表情は厳しいが、リリナは安堵の小さなため息をついた。
 どうやら昨日の件は、誤解で済みそうだ。
 ――ほっ、初めてのフラグ回避はぎりぎりセーフか。

 しかし、その瞬間、エリスが口を挟む。

「リリナ、あなたって本当に面白い人ね。王子様もびっくりしてたでしょ?」

 その笑顔には、まだまだ油断できない気配がある。

 リリナは深呼吸し、心に誓う。
 ――次こそ、絶対に破滅フラグは避ける。もう二度と誤解されないように、周囲をよく観察して……自由に生きるんだから。

 庭園の朝日が、リリナの決意を照らす。
 この転生生活はまだ始まったばかり。小さな事件が次々に訪れる予感に、彼女の心は少しワクワクしていた。

「さて、今日も破滅フラグを回避するぞ!」

 リリナの足取りは軽く、しかし慎重に。
 ――悪役令嬢としての第二の人生、第一歩は無事に踏み出されたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!

白雨 音
恋愛
公爵令嬢アラベラは、階段から転落した際、前世を思い出し、 この世界が、前世で好きだった乙女ゲームの世界に似ている事に気付いた。 自分に与えられた役は《悪役令嬢》、このままでは破滅だが、避ける事は出来ない。 ゲームのヒロインは、聖女となり世界を救う《予言》をするのだが、 それは、白竜への生贄として《アラベラ》を捧げる事だった___ 「この世界を救う為、悪役令嬢に徹するわ!」と決めたアラベラは、 トゥルーエンドを目指し、ゲーム通りに進めようと、日々奮闘! そんな彼女を見つめるのは…? 異世界転生:恋愛 (※婚約者の王子とは結ばれません) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

その破滅エンド、ボツにします!~転生ヒロインはやり直し令嬢をハッピーエンドにしたい~

福留しゅん
恋愛
自分がシナリオを書いた乙女ゲームの世界に転生したメインヒロインはゲーム開始直後に前世を思い出す。一方の悪役令嬢は何度も断罪と破滅を繰り返しては人生をやり直していた。そうして創造主の知識を持つヒロインと強くてニューゲームな悪役令嬢の奇妙な交友が始まる――。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】婚約破棄の罰として、冷酷公爵様に引き取られたのですが…溺愛が過ぎます!

22時完結
恋愛
「公爵家に身柄を預ける。それが、きみへの罰だ」 社交界で“悪役令嬢”と噂されていた侯爵令嬢・リディアは、ある日突然、婚約者である王太子から婚約を破棄された。 その場で断罪され、王家の名誉を傷つけた罰として命じられたのは――冷酷で知られる隣国の大公爵、アレクセイ・レオンハルトへの“引き渡し”だった。 周囲は誰もが「破滅だ」と囁いた。 なぜなら、アレクセイ公爵は血も涙もない男として恐れられており、社交界では『氷の獣』とさえ呼ばれていたからだ。 だが、リディアを待ち受けていたのは―― 「今夜は、私の隣で眠るといい。罰とは、そういう意味だよ」 「…え?」 戸惑う彼女に注がれるのは、冷たい瞳とは裏腹の、甘すぎる眼差しと過保護なほどの愛情。 強引で不器用なアレクセイの溺愛は日に日に増していき、ついには「君を誰にも渡したくない」と独占欲全開に!? 婚約破棄されたはずの令嬢が、冷酷公爵に甘やかされて溺愛される―― これは、人生のどん底から始まる、予想外すぎる恋の物語。

処理中です...