不幸の手紙に“男に告白される”って書いてあったんだが?

すもも

文字の大きさ
2 / 10

02.フルーツ牛乳はおいしくないだろう

しおりを挟む
俺は夢の中に居た。江藤とふたり向かい合ってかつ丼を食っていると、突然江藤が立ち上がって「僕は宇宙に行く!」と言い出しゴミ箱を抱えたまま空へと飛んでいく、かと思ったら国のお偉い人が来て「これが宇宙人だ!」とか訳わかんないことを言い出して俺に手錠がかけられ、突然腹を蹴られた。

「ぐっ」

痛みで目が覚めた俺の頭はパニックだ。何故だ。どうして痛いんだ、あれは夢じゃなかったのか!?いやいやいや、あれは絶対夢だって!!そうでなかったら、

「俺が宇宙人だということになってしまう」
「はぁ?何を意味の分からんことを言ってんだ?」

上から声が降ってきた、逆光のせいで顔がよく見えない、これは、神か!?神の光臨か!?人間を蹴るだなんて、そんな神くたばってしまえ。まだ半分夢の中にいるのか、俺の考えていることはむちゃくちゃだ。俺はむくりと起き上がり、そして自分を蹴った人物を見る。

「神じゃない!!」
「アホか」

そいつはただの同級生だった、幼馴染でもある。腐れ縁ってやつで仲良く大親友なんてことは絶対にない。

「んだ、腹巻か」
「新垣だっ!!新垣春馬あらがきはるま!!」

腹巻が自分の本名を名乗った。新垣春馬、通称腹巻。小学生時代にばあちゃんが編んでくれたという茶色の腹巻を愛用していたことで、こいつのあだ名は腹巻になった。あの義務教育の時に遊んでいたやつらは別の学校に行ったため、昔なじみなのは腹巻だけ。腹巻はバカだからこの学校に入っても勉強に追いついていけるわけも無く、毎回追試、追試の嵐。そのくせに授業に出ていても寝てばかりいる。正真正銘のバカだ。

「………なんか失礼なこと考えてないか?」

横目で見られる。

「別に。それよりお前どうしてここに居るんだよ?授業は?」

腹巻がバカだと考えていたと言った所でこいつはバカじゃない!と騒ぎ出すだけで何も意味を見出さないので、俺はあえてその言葉を言わない。こいつは1度言い出すと、長いし、うざいし、

「なーんか、心の中で俺のことを罵倒されているような気がする。...まぁ、それは置いておいて、授業は終わったんだよ!メシ!」

ざっとコンビニのビニールを広げて腹巻が言う。

「ふぅん、早かったんだな。お、ヤキソバパンもらい」
「ちょ!!やめろ!!」
「ぐちぐちゆうな、ちっさい男だな」

パッケージを開けてもぐもぐと食べ始める、腹巻が怨みの篭った視線で俺を射抜くが、俺はそれを華麗にスルーした。やつはヤキソバパンを諦めいちごメロンパンを食べ始めた。いちごが似合わないとか、そういう問題はともかくとして、いちごメロンパンってなんだ。いちごパンのなのかメロンパンなのかきちんとしろ。

「そーいや、りょーすけお前江藤に優しくしたって?」
「は?何それ」

ヤキソバパンを咀嚼する。江藤は朝会ったあの便利な江藤のことだろう。優しくしたってなんだよ?俺は別に何もしていないぞ。

「江藤が嬉しそうに女子に話してた。朝りょーすけと会って、荷物を運んでいる僕に優しく微笑みかけてくれたって。俺それ聞いたときに鳥肌が立ったわ」
「なんだそれは」

便利な江藤の言い様も酷いが、こいつのぞっとしたという言い様も酷い。とはいえ優しく微笑みかけるだなんて言葉が当てはまるような性格は残念ながらしていない、俺と同じ顔をしたやつがもし目の前にいて、そんなふうに笑われたら、うん。ぞっとする。でも腹巻に言われるとむかつく。

「朝江藤に会ったのは事実だが。俺はそんなキャラじゃない。でも腹巻にぞっとしたとか言われるとむかつくから、これ没収」

腹巻は甘いものが好きで、フルーツ牛乳を毎回昼食に大切に大切にちびちび飲んでいることは長年の付き合いから知っている。ので、まだ半分以上入っているであろうそれを飲み干してやる。

「どわっ!!俺のフルーツ牛乳が!!」
「うげぇ、甘えぇ、気持ち悪い味」
「なら飲むな!!」
「ちびちび飲んでるからだよ、飲み方も気持ち悪いし、フルーツ牛乳ってなんだよ。キャラじゃねぇなぁ」

まだ口の中に甘さが残っている、だいたい俺甘いのも牛乳も好きじゃなかったんだ。飲んでから気づくとは不覚。うげ。気持ち悪。

「うっせぇなぁ!いいだろ、好きなんだから!!くそ、せっかくゆっくり飲もうと思ってたのに。はっ、でもお前は俺と間接キスしたことになるんだからな!」
「げ!何気持ち悪いこと言ってんだよ!うわぁ…ますます気持ち悪くなってきた」

なんて男だ、自分の好物を取られた腹いせにそんな事を言うなんて!!昼休みが過ぎて授業があるからと腹巻はさっさと教室へと戻っていった。今回の不幸の手紙は当たらずに終わりそうだ。腹巻からなんらかの告白が聞けるのかと少し思ったんだが、はずれだったみたいだ。


その後単位のためにひとつふたつ授業に出たが、何事もなく放課後になった。日常なんてこんなものだ。あれやこれやとあってたまるか。

今回ばかりはあの不幸の手紙の予言も外れたんだと思いたかったが、油断は禁物。前にこれで大丈夫だと高をくくっていたら日付が変わるぎりぎりの時間に「ピンポンダッシュの被害にあうだろう」っていう不幸が降りかかった。信じられるか!?日付が変わるぎりぎりだぞ!あの時は信じられなくて俺は思わず時計を見上げたね。時刻は11時58分。2分前!!あの時は恐怖を通り越して関心したね、よくもまぁ、ここまでやるものだと。俺はそいつに「よくがんばりました」のハンコでも押してやりたい気分だったさ。

でも、その今までの功績(?)も今日でぱぁだ。俺は家に帰ってもう寝ようと決めているからな!さぁ、不幸の手紙の差出人よ、今から何か起こせるのなら起こして見せろ!!俺は自信に満ち溢れた面持ちで立ち上がり、下駄箱へと向かう。帰りのホームルームは出ない、危険は冒さない。下駄箱を開けると、一通の手紙が入っていて、嫌な汗が背中を伝った。学校にまで、そんなことがあるはずないと俺は震える手で薄い封筒を手に取った。途端俺は凍りついた。中身を開けなくても分かる、この紙の質感、ハートのシール、なんともいえない禍々しい気配。

これは...不幸の手紙!!

今すぐにこれを焼却炉へと行き燃やしてしまいたい衝動にかられたが、そんな事をしたらどんな不幸が待っているかも分からない。今までみたいに、ピンポンダッシュやらピーマンならいい、でも下駄箱に入っていたというこは不幸の最上級を入れてきたのではないか?これを見なかったが最後、最悪の事態に叩き落されて俺はもう生きてはいられないかもしれない。

そんなバカな考えが俺の頭に浮かんで、俺はその封筒を破るように開いていた。中はいつも通り一枚だけ。ごくり、と喉が鳴り嫌な緊張感が襲い、手紙をはらりとめくる。「放課後自分の教室へと行け、そうでないとお前は今まで感じたことのない恐怖を味わうこととなるだろう」今までとは違う手紙に、つーと背中に汗が伝う。これはなんというか…不幸の手紙じゃない、ただの脅しだっ!!

無視することもできず、Uターンすることにする。今まで欠かさず不幸を振りかけ続けたやつのことだ、こいつは確実にやる。教室ではホームルームをしていて俺が入ると奇妙な視線で見られた。教師は一瞥しただけで話を続けた。

「校内で煙草を吸っているものがいる。未成年は煙草禁止、ボヤで済んだが煙草吸ってるの見つけたら警察呼ぶからそのつもりでいろよ」

教師の言葉を俺は無感動に聞いた。煙草なんて税金を上乗せ出来る商品を国が手放したくないだけのもので、そんなものに金を払うなんてバカだ。

クラスメイトがそれ絶対に江藤和えとうかずだよ、とこそこそ話していた。江藤和、ひとつうえの3年でやたらと問題行動を起こしているらしく校内放送でよく呼ばれている。俺は不良だと言われているらしいが、江藤和のようなのを不良というんだ。ホームルームが終わると生徒たちは各々の行動をとり始める、だが俺はここから動くわけにはいかない。

「おい」

じっと座ったままでいると、隣の席の腹巻が話しかけてきた。

「なんだよ」

話しかけてきたから仕方なく答える。

「授業はもう終わったぞ」
「知ってるよバカ」

不幸の手紙については誰にも話していない。笑われるのがオチだ。俺はそれ以上何も言わずに教室の窓から外の景色に視線を移した。

「やっぱ、変だぞ。なんかあったか?」

なおも聞いてくる腹巻、正直うぜぇ。

「何もねぇよ、さっさと部活行けよ」

腹巻はバカだがスポーツは出来る。バスケとかサッカーとかとにかく身体を動かすのが好きで、ふらふらとそこらへんに参加している。所属はバスケ部って事になっているらしいが、こいつは助っ人として頼まれて色んなところに顔だしてるからよく分からない。腹巻のくせに身長も俺よりある。それがなんかむかつくんだよな。昔は俺のほうがでかかったのに。教室からはどんどん人が出て行ってしまう。教室には俺とこいつふたり残される。……もしかして、腹巻の告白か?とんでもないことを言い出すのか?そう思いつつ座ったまま腹巻を見上げる。

「んー」

えらく近い距離で顔をじっと見られて、ぴたりと額に手の平が当てられる。

「何だよ」

ぱしっと手を払いのけ、近すぎると腹巻の胸を押して距離を取らせた。

「熱でもあるのかと」
「ねぇよ、さっさと行け」

それでも動かない腹巻。手紙の犯人がこいつだったりしないよな?実は自分が犯人でした、の告白か?俺は浮かんだ思考をすぐにかき消した。いや、腹巻が犯人とは考えにくい。もしこいつに俺へのなんらかの悪意を抱いているのだとしたら(少なからずあるだろうが)もっとこう直接的になにかを仕掛けてくるはずだ。

「なんだ?まだ何かあるのか?」
「帰りを待ってられても、夕飯はおごらないからな」

何を言うかと思えば。

「いらねぇよ。お前を待ってるわけでもない。さっさと行け」

俺は虫でも追い払うように手を振るった。腹巻はようやく教室を出て行った。この後、しばらく待ったが何も起こらなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったら引くほど執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。

祝福を授かりましたが、まるで呪いです。

めっちゃ抹茶
BL
異世界に生まれ変わって出会った、一組の運命の番であるαとΩの話。 ※ご都合主義があります ※オメガバースの知識がある人向け/作中で説明は一切ありません ※主人公が可哀想、ハッピーエンドではありません 主人公目線、あまり悲壮感はありませんがタグをご確認のうえ以上の事を念頭に、大丈夫な方のみお進み下さい。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

処理中です...