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猫
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康成は俺のジャージを着て授業を受けている、もちろん床もちゃんと拭いた。雨の音が心地よく授業を聞いているとうつらうつらとしてきてしまう。舟を漕ぎながらも現実に気持ちをつなぎ止めようとしたけれど瞼は閉じていき、目の前が黒に染まった。
「望、おぉーい、望」
ぐらぐらと乱暴に揺すられて目を覚ます。
「お前社会係だろ、準備しないとまずいんじゃないの?」
康成に言われてがばりと身を起す、一気に目が覚めた。そうだった!忘れてた!地理を教えている先生に次の授業では地図を持ってきておいてといわれていたんだ。それを忘れていると何かとこっちに質問してきて面倒なことになる。
「ありがと、康成!」
康成にお礼を言って教室て廊下を右に曲がる、社会準備室は理科準備室と一緒になっていて乱雑としている。社会課準備室に入って電気をぱちりとつけると、目の前にいきなり人体模型が現れてびっくりと飛びのいた。
誰か次にはいてきた人を驚かせようとしたな、心臓に悪い。心の中でぶつぶつと言いながらも黒板に貼る大きな地図を探すことにする、確かおくに丸めておいてあったはずだ。周りにぶつからないようにゆっくりと進む、けれど思った場所にない。おかしいな?前見た時にはここら辺においてあったと思うのだけれどとひとり首を傾げる。
「何を探しているの?」
「わあ!!」
後ろから声がかかってきて驚く。
「ごめん。突然、驚かせたね」
「いいえ。俺も大げさに驚き過ぎました」
大きな声を出したのが恥ずかしくて顔が赤くなる、顔を上げて相手が誰か気づいてどきりと心臓が跳ねた。
「猫に傘をあげてた人だ」
思わず声に出た。夢で願ったことがまた頭に浮かんだ「素敵な人と恋人になれますように」その思考をすぐに追い払う。ただの夢!何を意識しているんだ。
「え!あれ。見てたんだ、うわ、なんか恥ずかしいな」
かあと頬を赤く染める優しい人、別に恥ずかしがるようなことではないと思う。俺だったら偉いだろうと胸を張りたくなってしまう。
「恥ずかしがること無いですよ!素敵でした!…ええと、先輩?」
敬語で離しかけたはいいもののもしかしたら後輩かもしれない。
「はは、ありがとう。僕は3年の叶憲史」
「俺は2年の藤崎望です、ごていねいにどうも」
すっと出してきた手を握りながらぺこりとお辞儀をする。これ高校生の挨拶としては何処かずれてないか?そう思いつつも叶先輩はこういう人なのだろうと納得することにする。
「何を探しにきたの?」
一番初めに問われた問いをもう一度叶先輩が聞いてくる。
「地図を探しに来たんです。黒板に貼る大きな地図」
先輩は地図かーと言いながらがさがさと探し始めた。先輩もここに用事があって来たはずなのに探させてしまうのは申し訳なくて一緒になって探す。
「あった、これ?」
先に先輩が見つけてくれてはいと渡してくれる。
「ありがとうございます、先輩は?」
自分のばかり見つけてもらうのでは申し訳ない。
「ああ、僕は大丈夫だよ、早く持っていったほうがいい」
「手伝いますよ、俺ばっかりじゃ不公平ですし」
「そっか、じゃあお願いしようかな」
先輩の言葉に頷いたのだけれど、先輩の探していたビーカーは探すまでもなく棚に箱に入って綺麗に並べられていたのですぐに見つかった。俺はなにもしていないのに、叶先輩は丁寧にお礼を言うとそのまま部屋を出て行った。
それを見送って息を吐く、知らず緊張していたみたいだ。変な夢を見たからなんだか気になってしまったけれど夢は夢。おかしなふうに考えるなんて先輩にも失礼だ。
放課後になって、あの子猫がどうなったのか気になって康成と一緒に早足に校舎を出る、子猫の話をしたら彼も気になってようだ。雨は弱まることを知らず降りつづけている。子猫の前には先客がいた、叶先輩だ。
「叶先輩」
声をかけようと思って口にしたのではなく、叶先輩がそこにいたので思わず口から出てしまった。ぼそりと口にしたものの相手に聞こえていたようで叶先輩はこちらへと振り向いた。
「あぁ、昼間の。望君だよね。どうしたの?」
「朝に見かけたのでどうなったんだろうと思って」
だからと言ってその子猫が居たらどうするかなんて何も考えていなかったのだけれど、でも俺が子猫のことを口にすると叶先輩は嬉しそうに微笑んだ。
「そっか」
「その子猫どうするんですか?」
「うん。このままじゃあかわいそうだからね。引き取ってくれる人を探そうと思って」
「オレんちで引き取ろうか?」
康成の言葉に視線を上げる。
「動物好きだし」
康成の家は動物好きだ。猫はいなかったけれど、金魚、カメレオン、九官鳥、ヤギ、などなど不思議な面子が揃っていて、動物園に行くよりも康成の家に行ったほうが動物を身近に感じることが出来るほどだ。
「親御さんに相談しなくても大丈夫?」
不安げに叶先輩が聞く。子供が意気込んで動物を飼う!と拾って親に反対されて泣く泣く諦めたなんていうケースはざらにあるけど康成の家ならそれは大丈夫だろう。
「大丈夫!他にもいっぱいいるから今更何が増えたって問題ねーよ」
康成はにかっと笑って見せ子猫を両手で優しく持ちあげて高く掲げた。
「よし、きめた!おまえの名前はダンボールだ!」
あまりにもあんまりな名前に俺と叶先輩はふたりしてその名前に反対した。
「望、おぉーい、望」
ぐらぐらと乱暴に揺すられて目を覚ます。
「お前社会係だろ、準備しないとまずいんじゃないの?」
康成に言われてがばりと身を起す、一気に目が覚めた。そうだった!忘れてた!地理を教えている先生に次の授業では地図を持ってきておいてといわれていたんだ。それを忘れていると何かとこっちに質問してきて面倒なことになる。
「ありがと、康成!」
康成にお礼を言って教室て廊下を右に曲がる、社会準備室は理科準備室と一緒になっていて乱雑としている。社会課準備室に入って電気をぱちりとつけると、目の前にいきなり人体模型が現れてびっくりと飛びのいた。
誰か次にはいてきた人を驚かせようとしたな、心臓に悪い。心の中でぶつぶつと言いながらも黒板に貼る大きな地図を探すことにする、確かおくに丸めておいてあったはずだ。周りにぶつからないようにゆっくりと進む、けれど思った場所にない。おかしいな?前見た時にはここら辺においてあったと思うのだけれどとひとり首を傾げる。
「何を探しているの?」
「わあ!!」
後ろから声がかかってきて驚く。
「ごめん。突然、驚かせたね」
「いいえ。俺も大げさに驚き過ぎました」
大きな声を出したのが恥ずかしくて顔が赤くなる、顔を上げて相手が誰か気づいてどきりと心臓が跳ねた。
「猫に傘をあげてた人だ」
思わず声に出た。夢で願ったことがまた頭に浮かんだ「素敵な人と恋人になれますように」その思考をすぐに追い払う。ただの夢!何を意識しているんだ。
「え!あれ。見てたんだ、うわ、なんか恥ずかしいな」
かあと頬を赤く染める優しい人、別に恥ずかしがるようなことではないと思う。俺だったら偉いだろうと胸を張りたくなってしまう。
「恥ずかしがること無いですよ!素敵でした!…ええと、先輩?」
敬語で離しかけたはいいもののもしかしたら後輩かもしれない。
「はは、ありがとう。僕は3年の叶憲史」
「俺は2年の藤崎望です、ごていねいにどうも」
すっと出してきた手を握りながらぺこりとお辞儀をする。これ高校生の挨拶としては何処かずれてないか?そう思いつつも叶先輩はこういう人なのだろうと納得することにする。
「何を探しにきたの?」
一番初めに問われた問いをもう一度叶先輩が聞いてくる。
「地図を探しに来たんです。黒板に貼る大きな地図」
先輩は地図かーと言いながらがさがさと探し始めた。先輩もここに用事があって来たはずなのに探させてしまうのは申し訳なくて一緒になって探す。
「あった、これ?」
先に先輩が見つけてくれてはいと渡してくれる。
「ありがとうございます、先輩は?」
自分のばかり見つけてもらうのでは申し訳ない。
「ああ、僕は大丈夫だよ、早く持っていったほうがいい」
「手伝いますよ、俺ばっかりじゃ不公平ですし」
「そっか、じゃあお願いしようかな」
先輩の言葉に頷いたのだけれど、先輩の探していたビーカーは探すまでもなく棚に箱に入って綺麗に並べられていたのですぐに見つかった。俺はなにもしていないのに、叶先輩は丁寧にお礼を言うとそのまま部屋を出て行った。
それを見送って息を吐く、知らず緊張していたみたいだ。変な夢を見たからなんだか気になってしまったけれど夢は夢。おかしなふうに考えるなんて先輩にも失礼だ。
放課後になって、あの子猫がどうなったのか気になって康成と一緒に早足に校舎を出る、子猫の話をしたら彼も気になってようだ。雨は弱まることを知らず降りつづけている。子猫の前には先客がいた、叶先輩だ。
「叶先輩」
声をかけようと思って口にしたのではなく、叶先輩がそこにいたので思わず口から出てしまった。ぼそりと口にしたものの相手に聞こえていたようで叶先輩はこちらへと振り向いた。
「あぁ、昼間の。望君だよね。どうしたの?」
「朝に見かけたのでどうなったんだろうと思って」
だからと言ってその子猫が居たらどうするかなんて何も考えていなかったのだけれど、でも俺が子猫のことを口にすると叶先輩は嬉しそうに微笑んだ。
「そっか」
「その子猫どうするんですか?」
「うん。このままじゃあかわいそうだからね。引き取ってくれる人を探そうと思って」
「オレんちで引き取ろうか?」
康成の言葉に視線を上げる。
「動物好きだし」
康成の家は動物好きだ。猫はいなかったけれど、金魚、カメレオン、九官鳥、ヤギ、などなど不思議な面子が揃っていて、動物園に行くよりも康成の家に行ったほうが動物を身近に感じることが出来るほどだ。
「親御さんに相談しなくても大丈夫?」
不安げに叶先輩が聞く。子供が意気込んで動物を飼う!と拾って親に反対されて泣く泣く諦めたなんていうケースはざらにあるけど康成の家ならそれは大丈夫だろう。
「大丈夫!他にもいっぱいいるから今更何が増えたって問題ねーよ」
康成はにかっと笑って見せ子猫を両手で優しく持ちあげて高く掲げた。
「よし、きめた!おまえの名前はダンボールだ!」
あまりにもあんまりな名前に俺と叶先輩はふたりしてその名前に反対した。
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