500円の願い事

すもも

文字の大きさ
4 / 10

疑惑

しおりを挟む
それからというもの叶先輩と一緒に康成の家に子猫を見に遊びに行くようになった。いちど家へと寄るのも面倒なので、そのままの足で康成の家へと向かうのが通例となっていた。

この日も康成の家へとお邪魔することにした。玄関前の犬小屋には老犬が寝そべっているが番犬としての役割はなさず、俺らを見ても片目を開けただけで微動だにしない。裏山からはヤギの間延びした鳴き声も聞こえてきた。家に入るとまず出迎えてくれるのが玄関先にある水槽に悠々と泳いでいる金魚と、大きな鳥篭のなかに目をぱちくりしている九官鳥。金魚の種類は出目金ぐらいしか知らないが頬が膨らんでいるのとか、変わった金魚も泳いでいる、彼らの名前はネギ、シュンギク、シラタキ、らしいがどれがどれなのか分からない。

「ただいまー」
「こんにちは!こんにちは!」

康成の声に反応して九官鳥が喋る、この九官鳥のどざえもんがこんにちは意外喋ったところを聞いたことがない。

「ちがうだろーお帰りだ、お、か、え、り」
「こんにちは!」

丁寧に一字一句言葉をきりながら伝えるが、どざえもんには通じない。そんな応酬をしているとスリッパの音が聞こえて優しそうなおばあさんが出迎えにやって来た。

「お帰りなさいませ。ぼっちゃん」

彼女は五月さん、この家のお手伝いさんだ。

「お邪魔します、五月さん」

叶先輩が言い、僕も慌てて隣でお辞儀をしてお邪魔しますと声をかけた。

「えぇ、後でお茶を持っていきますね」

五月さんが微笑む。康成は盛大に靴を脱ぎ散らかすと家へとあがった。

「康成、靴くらいもう少しちゃんと脱げよ」

毎回のことだけれど俺はつい口出ししてしまう。康成の靴を下駄箱の方向に向けて揃えた。

「お前はオレのかーちゃんか!」

康成の靴を下駄箱の方向に向けて揃えたながらも楽しげにケタケタ笑った。
康成の部屋は廊下を歩いて奥の部屋になる、昔ながらの日本家屋の平屋でやたらと広い。年配の人は家のことをお百姓さんとかと呼んだりして、康成のこともぼっちゃんと呼ぶ人も近所でも珍しくない。

「ただいま。ダン!」

襖を盛大に開け放ち康成が子猫の名前を呼ぶ。ダンボールはどうしても払拭出来なかった。
康成に呼ばれると子猫は嬉しそうににてこてこ走ってきて嬉しそうに康成は両手を広げたが、飛びついた先は俺だった。
俺は康成のようにこの子を飼うことも出来なかったし、叶先輩のように傘を差してあげたことも無い。むしろ何も出来ないと見て見ぬふりをしようとした最低な人間なのに何故俺のところに来るのか。多少の罪悪感を感じながらた抱きとめた。

「ちぇ、やっぱ望かよ」

悔しそうにダンの頭をぐりぐりと撫でる。

「望君の場所が一番安心するんだろうね」

ダンを抱えたまま畳のうえへと座ると隣に座った叶先輩が優しく触った。なんだか妙に近くて落ち着かなくて少し距離を開けてしまうと叶先輩の手が止まる。嫌な思いをさせたかもしれない、不安になってちらりと叶先輩を見ると視線が重なった、叶先輩は少し驚いたみたいだったけれど微笑んだ。

なんだか気まずくて視線を逸らす。なんでこんなに近いのだろう。あの夢が変なふうに叶って叶先輩は俺の事が好きになってしまったのだろうか?……いや、なんでそんなこと考えてるの!勘違いも甚だしい!
自分の思考を振り払いたくて、思わず強く目の前のもふもふを握ってしまった。ふぎゃっと鳴いて彼女は逃げてしまった。

「ごめん」

謝る声も聞いてくれない、康成は逃げたダンを捕まえようとこっそり手を伸ばしていた。…そういう所がいけないんじゃないか。

「失礼します」

五月さんが襖を丁寧に開けて入ってくる。今まで俺に懐いていたダンはあっさりと裏切って五月さんのところへと行ってしまった、やっぱり飯をくれる人が1番か。五月さんはふふと笑いテーブルにおしぼりとお茶とお茶菓子を並べる。

「ありがとうございます」
「いいえ、ごゆっくりしていってくださいね」

にこりと微笑まれる。五月さんはそのまま出て行ってダンもそれについて行ってしまった。

「全然かまってくれねーし」

よほどかまってもらえなかったのが悔しいのかテーブルに突っ伏してお茶菓子であるみたらしだんごを手に取る康成。

「行儀悪い、ちゃんと座って食べなさい」
「お前はオレのかーちゃんか」

何回言っても康成はいうことを聞かない。これは早く彼女とか出来たほうがいい、徹底的にしごかれたらいい。俺は用意いてくれた手にちょうどいい温度のお絞りで手を拭ってからお茶を飲む。

「あつ」

康成の家は熱い緑茶が出てくる。知っていたにも関わらずに飲んでしまった。

「大丈夫?火傷したら大変だ」

叶先輩はそう言うと俺の顎を掬って、舌見せて?と言われて大人しく口を開けた。ぴりぴりする

「少し火傷してしまったみたいだね、お水貰ってくるよ」

叶先輩は手を離して立ち上がる、五月さんに言ってくれるのだろう。そこまでしなくても平気なのだか俺が止める間も無く叶先輩は席を立ってしまった。………というか、さっきの何だろう?今更ながらに思った、何も考えずに言われた通りに動いてしまったが。思い出すと自分がとんでもないことをしてしまったような気がして、羞恥で顔が熱くなる。

叶先輩は誰にでもやるんだろうか?でもそうじゃないとどうして俺にやったのかが分からない。あの変な夢の願いごとが頭から離れてくれない。だから!なんで意識してんだよ!
1人であわあわとパニックに陥っていると。はたと、康成がこっちを見ていることに気がついてなんだかすごく気まずい、そんなことを思っているのは俺だけかもしれないけど。

「付き合ってるの?」

ふと落とされた爆弾発現。

「は、はぁっ!!?俺と叶先輩がっ!?」
「今の言葉でそういう風に解釈する事態がそうとしか思えない」

いや、それはなんか別のことを考えていたからでっ!!顔がどんどん熱くなっていく。いや、これじゃあなんか肯定してるみたいじゃないか!いや、違う、付き合ってない!実際に付き合ってない!!

「いいんじゃね?オレはそういう偏見ねーし」

そういう問題じゃない。

「違うよ、付き合ってない」

本当のことを言う。
………でも、どうなんだろうか、はたから見ていてそう感じるということは、叶先輩が俺のことを好きだとかそういうふうに見えるということなんだろうか?

「……叶先輩が、俺のことどう思ってるように見える?」


「ただの後輩にはあんなことするとは思えないな」

先輩が俺のことを好き?戸惑うもののどうしかそれを気持ち悪いとか思わない。叶先輩なら別に……って、どうしてしまったのだろう自分は。

「どうすればいいと思う?」

こんなことを康成に聞くのは間違っているとは思うのだけれど、ここには康成しかいない。

「オレに聞かれても、がんばれ!としか言えねーな」

がんばれと言われても。どうすればいいのか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

深夜零時

立樹
BL
早川准は、小野田万里と同居していた。 その万里が最近帰ってくるのが遅い。それに、お酒も飲んでいるようだった。 零時に帰ってきた万里に、同居を解消しようと提案され…。 寸劇です。

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

処理中です...