ダンジョンの管理人になりました

菻莅❝りんり❞

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1 謎のスキル、モンスター管理者

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俺は今、ダンジョンのコア部屋にいる。殺風景だった部屋を自分好みに作り替え、仕事しやすい空間にした。

広い部屋の壁には、所狭しと画面が映し出されている。そのどれもに色とりどりの珠が映っていた。画面から子供の声が聞こえるが、それは当たり前の事なので慌てる必要はない。

「ますたーだ」「マスター!こっち来て」「マスター、あそぼ?」「ますたー、ぼうけんしゃが」

「お前ら、全員で一辺にしゃべるな!聞き取れるわけないだろう!一人ずつしゃべれ!」

なぜ俺が、こんな所でこんな仕事をしているかと言うのは、話せば長いがまとめると、お偉いさんに無茶振りされた。え?短すぎて分からないって?じゃ、順を追って話すとしよう。


 あれは俺、リュートが八歳の時。俺の住んでいる街は国境にあるため、そこに住む住人は例え孤児でも全員が八歳になると教会に集められ、神の洗礼を受ける。

 神の洗礼とは、子供が八歳になったら誰でも神様からスキルを一つ授けて貰える事を言う。

 他国からの侵略を防ぐため、一人でも多くの戦力が欲しい領主様が、洗礼を受ける時にかかるお金を肩代わりして、領内に居る子供全員に洗礼を受けさせるのだ。

 今回は俺含め、十人の子供が集まった。その中には領主様の次男、シューベルト様も居る。シューベルト様は八歳にして剣術の才能を発揮され、今は騎士団に混ざって練習しているらしい。だから領主様もかなり期待しているみたいだ。

 ちなみに、領主様の子供は現在三人。長男のトラベルト様は十歳で、“指揮官”のスキルを授かってる。次男のシューベルト様に、長女のベルナール様は五歳。奥様似で領主様を初め、お屋敷の皆に溺愛され甘やかされていると、聞いたことがある。しかも、おめでたいことに奥様は今、妊娠してるとの事。

 俺達全員、教会の神像の前に一列に並び、祈りのポーズを取った。すると、誰かに頭を撫でられる感覚がしたら後ろから、「おおぉ!」と言う驚きの声がして、閉じていた目を開け頭を上げると、一人ずつに透明な文字盤が浮かんでいた。

 右から順に“剣聖” “闘神” “戦神” “鍛冶師” “治癒師” “魔道師” “魔術師” “モンスター管理者” “障壁” “鉄壁”となっていた。
 俺のスキルは、“モンスター管理者”。どんなスキルだ?俺以外のスキルは防衛に役立つモノばかりだった。
 
まず、前線に向いてる戦闘系が3つ。しかも、戦闘系最強の剣聖は、シューベルト様が授かった。これには領主様も大喜びだった。
闘神は格闘タイプのスキルで、戦神は槍や弓を使うタイプのスキル。
 
サポート系では、鍛冶師、珍しいスキルで魔道師。鍛冶師は知っての通り、剣や防具などを作るスキル。そして魔道師とは、俗に言う魔道具を造るスキル。このスキルを授かる者は少なく、貴重な存在だ。
 
補助系は、治癒師、魔術師、障壁、鉄壁。この中で珍しいのが、障壁。鉄壁は物理的攻撃に強いスキルで、障壁は魔法攻撃に強いスキル。つまりこの二つのスキルがあれば、物理と魔法が防げると言う事。治癒師は回復魔法や聖魔法が使えるスキルで、魔術師は攻撃魔法全般が使えるスキル。

 今年は当たり年だ!と皆、浮かれている。俺以外は。俺は呆然と自分のスキルを眺めてた。見たことも聞いたともないスキル。

 まだ幼い時に親を失くした俺に、領主様もこの街の人達も親切で、優しかった。戦闘系じゃなくてもサポート系でもなんでもいい、恩返しが出来るスキルが欲しかった。なのに、神様は意味不明なスキルを俺に授けた。

 街をあげてお祭り騒ぎをしている中、俺は、自分のスキルがどういうモノかを確かめるため、森に来た。モンスター管理者とよく分からないが、魔物使いと言うスキルはある。だから、これも魔物を制御出来るスキルだと想定して見た。もし、魔物の制御が出来るとなれば、これも防衛に役立つと、恩返しが出来ると考えた。

 しかし、俺のスキルで魔物の制御は出来ず、命かながら街まで逃げ帰った。大怪我をして帰ってきた俺に街の皆は驚き、急いで治療を施され、事情を聞かれた。

 でも俺は何も言わなかった。領主様に優しく聞かれても言わなかった。そんな俺の態度に、街の皆は憤ったけど言えず、泣くのを我慢して、領主様や治療してくれた人に頭を下げ、逃げるようにその場を後にした。一言でも声を出せば、確実に涙が零れると分かっていたから。
 
走って、走って、勝手に秘密基地としている裏通りの場所まで来ると、大声を出して泣いた。泣きすぎて、声が枯れても泣き続け、知らぬ間に寝ていた。泣きながら何かを口走っていたけど覚えない。そんな俺をそっと、起こさないように抱き上げる腕を感じ、幼い頃の事を思い出した。

「お、どうざん、、、あっだがい」

温もりを求めるようにその人の服を掴むと、驚いたのか少しビクッと動いたが、頭を優しく撫でられている内に俺は完全に寝てしまった。


「寝たか?しかし、あんなことを思っていたとはな、恩返しなどと。確かにこの地では、防衛の為に戦力が必要だが全員が全員、防衛のためのスキルを持っているわけではない。気負わなくても良かったのだがな」

「旦那様。それでも、ですよ。その子の気持ちを無下にしないであげて下さい。誰かの役に立ちたい、助けになりたいと、健気ではありませんか」

「そう、、だな。だが、その健気さが、危うい。多くの人の死を見てきたが、死なせたい訳じゃない。戦場で命をかけて欲しいと言ってはいても、本心では死んで欲しくはない。子は宝で、未来だ。早く、平和な世の中になってもらいたいものだな」

 領主様達がそんな会話をしていたなんて、眠っている俺は知らなかった。
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