私の好きとあなたの好きが重なる時

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状況がよめない

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 タイラーが商会に顔をだす回数がふえた。

「タイラー、なんでこんなにひんぱんに来てんだろうな?」

 兄が意味ありげな視線をカレンにむけるのがうざい。

 仕事できているのを知っていての発言なのでたちが悪かった。

 兄は収穫祭でカレンとタイラーが手をつないでいるのを見たようで、カレンにタイラーのことをからかうようになった。

 期間限定の仕事がおわりタイラーがくる回数がへれば、捨てられたのかといいそうだ。

 父との仕事をおえたタイラーがカレンと話しをしていると、

「ソーダを飲みにいきませんか?」とさそった。

 王都で流行っているソーダが隣町の店で提供されることになり話題になっていた。

 タイラーからの申し出にカレンは飛びついた。隣町に行くのに幼馴染みをさそっていたが予定があわずにいたのでありがたい。

 タイラーと日時や待ち合わせ場所を決めながら、カレンは仕事以外でタイラーに会うのは初めてなのに気付いた。

 収穫祭はたまたま現地であったので一緒にまわったが、これまでタイラーが商会に来た時に顔を合わせるだけだった。

 タイラーは隣町に住んでいるので一緒にいく相手に困っていないはずだ。それにもかかわらずカレンをさそってくれた。

「このことに意味があると思っちゃだめ」

 カレンはふと頭に思いうかんだ結婚詐欺男のおかげで冷静になった。結婚詐欺師の暇つぶしをよい雰囲気と勘違いした前科がある。

 商人は愛想がよくフットワークもよいので人を気軽にさそう。さそわれたからといってそこに何か意味があると思ってはいけない。

 カレンは結婚詐欺男の顔を再び思いうかべ「勘違いしない」と自分に言い聞かせた。






「あれ? あそこにいるのワイアットじゃない?」

 ルーシーといつもの食堂へいくと、ワイアットと友人達がいるのが見えた。

 幼馴染み三人でご飯を食べるはずが、マチルダの夫が病気で寝こみマチルダは看病のために欠席なので、ルーシーとカレンの二人になった。

 ワイアットと顔を合わせるのはすこし気まずいので店をかえたかったが、ルーシーがさっさとワイアット達に近寄り声をかけていた。

 あっという間に一緒にという話になりカレンはひそかにため息をついた。

 ワイアットにうかつな冗談をいい、カレンの想像をこえる反応をされて以来、ワイアットとは挨拶とあたりさわりのない世間話をする知り合いの距離をたもっている。

「カレン、ワイアットの隣りに座ったら?」

 ルーシーがとんでもないことをいった。

 ワイアットと一緒にいた二人のうち一人は、ワイアットの練習台発言の時に一緒にいた男の子で、ぎょっとした顔でルーシーをみたあと「ここあいてるよ」カレンに自分の隣りをすすめた。

 もう一人の男性はワイアットの従兄だろう。むかし一度だけ会ったことがある。

 ルーシーがお会いしたことがないと思うのでと男性に自己紹介し、ワイアットの従兄だと確認できた。

「女子が加わって話が切れたが、ワイアットも修行おえてあとは結婚するだけになったしどうするんだ? 親からもせかされてるんだろう?」

 従兄からの問いに、口を開こうとしていたワイアットを押しのけるようにルーシーが、

「そういえばワイアットって王都で付き合ってた人いなかったの? いたら修行をおえたし結婚しようとか普通なるよね?」ときいた。

 ルーシーの問いにワイアット本人よりも従兄達がわきたった。

「もしそんな話があれば、地元に一人で戻ってくるわけないだろう。

 王都って地方から商売や出稼ぎで人が集まってくるから男の数が圧倒的に多いんだってよ」

「ただでさえ女性の数がすくないのに、女性は見目のよい男にむらがるから男には厳しい環境で、男の行き遅れが多いらしい」

 それを聞いたルーシーがはずんだ声で、

「じゃあ、これからこっちで相手を見つけるんだよね」というとニコニコしながらカレンを見る。

 ルーシーとは長い付き合いだが、たまに何を考えているのかまったく分からないことがある。

 ワイアットとカレンの間にあったことをルーシーは知っている。一緒に怒りなぐさめてくれた。

 ワイアットが王都から帰ってきた後に、カレンがワイアットとのわだかまりをといた話しをしたので、元の関係にもどろうとしていると勘違いしたのかもしれない。

「カレンもそろそろ結婚相手を決めないと行き遅れといわれちゃうから急がないとね」

 先ほどとかわらぬ笑みをうかべたままルーシーがカレンを見ていう。

「女の子はそうだよなあ。カレンは高望みせず、結婚してくれる相手がいるならさっさと結婚しろよ。

 男の場合、行き遅れになっても出世したとか仕事が当たったとかで若い女の子と結婚できる。

 でも女の場合、自分と同じような年齢で結婚できる男の数はふえないけど、年々若い女の子はふえて年増は不利になるからなあ」

 相変わらず失礼だ。この従兄は初対面の時に「もっとブスかと思ってた」とカレンにいった。

 容姿について姉と比較されのるが普通だったとはいえ、ブスという単語を使われることはないので記憶にのこっている。

「カレンは高望みしてるわけじゃなくて男運が悪いだけですよ。婚約してもダメになっちゃって」

 男性陣の視線が一斉にカレンにむけられた。

 何ということをいうのかとルーシーを叱りたい。

 カレンの男運の悪さについて知っている人は少ない。彼らの反応をみるかぎりカレンが婚約していたことも知らないだろう。

「そういう個人的なことを言いふらすのって友達としてどうかと思うが」

 ワイアットが怒りのこもった口調でいった。

「えー! その言い方ひどくない? それにあなたの従兄がカレンに失礼なこといったけど、それはいいわけ?」

 ルーシーが場をやわらげようとかわいい声で抗議したが、

「従兄はあとできっちりしめる。それよりカレンが嫌な思いをすることをいった自覚はないのか?」

 ワイアットが切りつけるようにいった。

「何をえらそうに。あんたなんてカレンに練習台っていったくせに」

「だからだよ。言葉がどれほど人を傷つけるか嫌というほど知ったから、従兄の発言も、あんたがさっき言ったことも、昔のことを持ち出したことも許せないんだよ。

 カレンの友達ならもっとカレンの気持ちを考えろよ」

 ルーシーがワイアットをにらむと「気分悪いから帰る」席をたち店をでていった。

 カレンがあわててルーシーのあとを追おうとし、背中でワイアットが「ごめん」とあやまる声をきいた。

 何やらよく分からない状態になってしまった。

 カレンは店をでるとルーシーの姿をさがした。
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