彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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彼を知り、己を知れば百戦にして危うからず

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翌日、俺は早速情報収集を始めた。

そもそも応援演説なんて前世でも経験は無い。

どころか全校生徒の前で喋るとか今考えただけでもう吐き気すら催すレベルである。

でも弱音を吐いてばかりもいられない。

引き受けたからには俺に出来る限りの事をやり尽くさないと。

と、言う訳で始めたのが情報収集だ。

戦う相手の情報、瑞穂に対する周りからの評判等など、有利に働く情報を今は出来る限り集めておこうと思ったのである。

彼を知り己を知れば百戦にして危うからず、である。

いや相手は女子だから彼女だけども…。

「なるほどー。

そりゃまた始まって早々に困った事になったねー。」

「そうですね…。」

まずは身近な所から、と八重音とリオに相談する事にした。

なんと言ってもクラスの陽キャ女子はいねである。

何か有益な情報を聞けるかもしれない。

「はいねは片杉さんの事何か知ってるか?」

「あ、うん。

吹奏楽部の後輩がたまに愚痴ってるから。」

おぅ…そう言う理由か…。

「どう言う感じか聞いても…?」

「あー…うん…。

あんまり私が言ったって言わないでほしいんだけど…。

真面目なのは良いけど空気読めないし、愛想も無いし思った事をズバズバ遠慮無しに言うしでオマケに一度言い出したら人の話も聞かないから面倒くさいって…。」

「あー…。」

日奈美から聞いてた通りっぽいな…。

「相手が男子でも悪い事をしてたら気にせずに直るまで注意するから男子にもよく思われてないみたいだよー。

何でも機械女って陰で言われてるって話。」

「機械女…ですか…?」

それにリオが口を挟む。

「うん…。

彼女の下の名前、真進だからさ…。

普通に読んだらマシンになるし、真面目過ぎて堅物だからってそんな風に言われてるみたい…。」

「そんな…酷い…。」

うーん…こりゃ思った以上に闇が深そうだな…。

「とりあえず片杉さんの事はなんとくなくだが分かった。

で、次は瑞穂の事なんだが。」

「へ?津川さん?」

「瑞穂さんの事なら悠太さんの方が詳しいんじゃないですか?」

「あー…いや、なんて言うかさ。

瑞穂個人に対する反応と瑞穂が副会長になった事に対する周りの反応とか言うか…。」

「あー…なるほど…。

うーん…そうだねー…。

正直あんまりいい話を聞かないかなぁ…。」

「やっぱ清楚系ビッチだからか…?」

「それもあるし、津川さんって実際に可愛いくてモテるから…よく思ってない女子も多いんじゃないかなぁ…。」

マジか…。

でもまぁ…実際そうだよなぁ…。

元カノとしての贔屓目を差し引いても瑞穂は可愛い。

二大美少女なんて呼ばれるだけある。

そんなステータスに悪いイメージが加わって色んな意味での有名人だ。

有名になれば当然褒められるばかりじゃない。

少しでも悪いイメージがあればすぐに叩かれる。

同じ事を地味で目立たないクラスメイトがしたってそんなに大袈裟に騒がないだろって事でも徹底的に叩く。

有名税なんて言ってそれがさも仕方ないみたいに言って、言われる側がどう思うかも考えずに自分は正しい事をしてるかのように叩きまくる。

多分これまでもそんな感じで結構色んな人達から心無い言葉を投げかけられてきたんじゃないだろうか。

再会してすぐの時は噂のせいで友達もそんなに居ないって言ってたし…。

今でこそ俺を含め生徒会メンバーとかとも仲良く…いや、ハルたん会長とはなんか不穏な感じだけども…。

兎に角、最近の瑞穂は何となくだが楽しそうな気がする。

今回の選挙は勝って今の生徒会を守る事もそうだが、瑞穂に対するそう言う周りからの悪いイメージを如何にして少しでもいい物に変えれるか、だよな。

そうなれば、瑞穂の負担も減るんじゃないだろうか。

理不尽に叩かれ、傷つく時を少しでも減らしてやれるんじゃないだろうか。

今でも時には憎たらしいと思う事もあるし、振られた時には随分酷い事を言ってしまった。

そんな俺がこんな事を思う資格なんてないのかもしれない。

でも二大美少女なんて呼ばれるくらいには可愛いアイツに、いつも笑っていてほしいと思う。

可愛い過ぎるアイツには、何よりも笑顔が似合うから。

…本人には絶対に言わないけどな…。

言ったら言ったで絶対調子に乗りそうだし…。
とは言え…前途多難…だよな…。

「二人ともサンキューな。

もうちょっと色んな所から情報集めてみるわ。」
 
「いえいえー。

せっかく隣になった訳だし私で良ければいつでも相談してほしいなー。」

「おう、助かる。」

「私は特に何も出来てないですが…。

お話はいつでも聞きますから。

それと悠太さん、頑張るのは良いですが、あまり無理をし過ぎない程度に、ですよ。」

「分かってるって。」

そう返し、次に向かったのは1階の1年の教室があるゾーン。

同学年の奴らの話を聞くの大事だと思ったからだ。

とりあえず日奈美もいるクラスに行こうと廊下を歩く。

けして日奈美の顔が見たいからじゃない。

あくまで情報収集の為である。

本当だぞ?

「そこのあなた。

私の為に応援演説をしてくれませんか。」

「え、いやそれはちょっと…。」


と、ここで片杉がクラスの女子を勧誘している所を見かけた。

近付くと、俺に気付いた片杉と目が合う。

「…あぁ、ゲスミですか。」

露骨に顔を顰めてそんな事を言ってくる。

不名誉なあだ名に加え、呼び捨てとは…。

「あなたのようなゲス野郎なんてゲスミで充分です。」

俺が顔を顰めると、片杉はそう言って露骨にため息を吐く。

「あ、わ、私用事思い出したから。」

俺と話し始めたのを好機と捉えたのか、勧誘されていた女子生徒は足早に走り去ってしまう。

「ふぅ、また逃げられてしまいましたか。

ゲスミのせいですよ。」

「いや、俺が来なくても普通に嫌がられてただろ…。

って言うか三澄だからゲスミならお前も真進だから当てはまるぞ。」

「馴れ馴れしく下の名前で呼ばないでください。

それに苗字と名前でもあなたと一文字違いだなんてとても不愉快です。」

「あぁそうかい…。」

ほんっと可愛くねぇ…!

「応援演説やる奴、まだ決まってないんだな。」

「別に…たまたまタイミングが悪かっただけです。

すぐに見つかりますよ。」

本当かよ…。

「まぁ、もっとも。

そんな物探さなくても結果は見えているような物ですが。」

随分な自信だな…。

この時の俺にはその自信がどこからくるのか全く分からなかったが。

後に知る事になる。

それも最悪な形で。




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