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しおりを挟む「この間、俺に婚約破棄されたばかりだというのに、もうラデク王子と良い仲だなんて、流石だなぁ、ダーシャ」
ヨレたタキシード姿のアーモスは恨めしそうに言った。
ラデク王子は私を背に隠すると言った。
「ディデス侯爵の息子アーモスだな。お前はこの場に招待などしていない。即刻、退場するんだ!」
そして、兵がアーモスを取り囲む。
するとアーモスは、会場から出される前にと早口でまくし立ててきた。
「お前のせいで、うちが今どんな事になってるか分かってるのか!?店の共同事業者は全責任をこちらに押し付けて、有り金全部持って行方をくらますし、損害賠償請求もこっちに全部きてるし、領民は暴動を起こして、領地は荒れまくってるんだ!全部お前が、父上を上手く丸め込んで婚約を破棄させたから!あれからディデス家は滅茶苦茶だ!だから、お前は責任を取ってもう一度俺と婚約し直すんだ!」
アーモスは兵に取り押さえられながらも、こちらを睨みながら言ってくる。
それに、ラデク王子が何か言おうとしているのを止めて、私は前に出た。
「私はアーモス様が婚約破棄をすると言うから、それに従っただけですわ。それに、婚約破棄の書類にはもう二度とお互い関わらないという旨も書かれてます。ですから、アーモス様ともう一度婚約するなどありえません」
「では、あの事を今ここで発表していいのか?」
と会場の隅から声が聞こえ、そちらを見るとディデス侯爵がいた。
「その事も秘密保持の契約を交わしましたので、その事に関する発言は契約違反となります」
「ふん!あんな紙切れの契約など、関係ない!!俺は言うぞ!!この女は――」
するとディデス侯爵の言葉を遮るように国王の言葉がその場を制圧した。
「黙れ!!ディデス、お前が今言おうとしている事は、王家に対する反逆とみなす!連れて行け!!」
国王の怒りを顕にした言葉にディデス侯爵は動けなくなり、直ぐ兵に捕らえられ、会場から出された。
「ち、父上!くそっ!お前みたいな女と婚約するんじゃなかった!」
アーモスも兵に会場の外へ押されながらも最後の恨みとばかりに言ってくる。それに、今度はラデク王子が黙っていなかった。
「アーモス!彼女は私の大事な女性だ!その彼女を侮辱する数々の発言、しかとこの耳で聞いたからな!!お前に下される罰を心して待つがいい!!」
アーモスは悔しそうに唇を噛むと兵達により、会場から退場させられた――
それから騒然としていた舞踏会を国王様と王妃様が珍しくダンスを披露して、再び盛り上がり、皆がそれに続くようにダンスを踊り始めた。そして、舞踏会も終盤となり今は思い思いに舞踏会を楽しんでいる。そして、ダーシャはラデク王子に誘われて、王宮の庭園に来ていた――
「ラデク王子、せっかくの誕生日を台無しにしてしまって申し訳ございません」
ダーシャは深々と頭をさけた。
「君のせいでは無いのだから、謝らなくていい。悪いのは、全てディデス親子だ」
ラデク王子はそう優しく言ってくれたが、ダーシャの表情は冴えない。
そんなダーシャにラデク王子は、明るく言った。
「では改めて誕生日を祝ってくれないか?私はダーシャに祝って貰えたら、それが1番嬉しい」
そう言われ、先程ラデク王子が言っていた大事な女性という言葉の意味を、今更ながら考えてなんだか照れてしまう。
「分かりました。では改めまして……」
とダーシャはその照れを隠すかのうに咳払いをすると少し頬を染めてラデク王子を見た。
「ラデク王子、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、ダーシャ嬢。ハハッ、なんだか照れるな」
とはにかむラデク王子にダーシャも自然と微笑む。
ラデク王子の温和な雰囲気はいつも心地が良く、嫌な事があっても大丈夫だという気にさせてくれる――
そんな事を考えているとラデク王子が先程のようにダーシャの前に片膝を付き右手を差し出した。
あら、ダンスももう一度誘って下さるのかしら?
と思いダーシャがクスリと笑うとラデク王子は言った。
「ダーシャ、私と結婚して欲しい」
「……――!?」
すっかりダンスに誘われると思っていたダーシャは、再び頭の中で何度もラデク王子の言葉を反芻する事となった。
えーと、今……ラデク王子は私に結婚を申し込んだのよね?私の聞き間違いではないのよね!?
それでも先程のように、皆が注目している場所ではない。今は遠くに護衛の方々がいるだけだ。
ラデク王子に求婚された事は、自分でも驚いているが、正直に言ってしまえば、物凄く嬉しかった。
しかし、この求婚を受け入れるわけにはいかない――
「ラデク王子、申し訳ございません。私とラデク王子では身分も釣り合いませんし、なにより私は、婚約破棄をされた身です。そのような令嬢、王子の結婚相手として相応しいわけありませんわ」
「君は聡明で品があり美しい女性だ。身分やアーモスの事など関係ない。なにより、私が君の事を愛しく思っているんだ。」
「し、しかし……」
と言い淀むダーシャにラデク王子は真面目な顔になり続けた。
「ならば、君が私と結婚すれば、その加護の力でこの国がさらに栄え、それは国民を幸せにする事に繋がる。こんなに、王子の婚約者として相応しい者はいないんじゃないか?」
と流石は王族だと思わせる風格にダーシャは息を呑んだ。
「と言うのは狡いかな……」
と王子は笑みを浮かべて、いつもの温和な雰囲気に戻った。
「狡いですわ」
いつも優しい雰囲気ばかり出しているのに、急にあんな真面目な顔……
とダーシャは下を向いて小さく言った後に顔を上げると、眉尻を下げて笑って言った。
「そう言われてしまえば、断る理由がありませんわ」
その答えにラデク王子も満面の笑みを浮かべ、二人は手を取り合った――
それからディデス親子には、極刑を言い渡すと国王とラデク王子がダーシャに伝えたが、ダーシャは自身に対する非礼についての処罰は望まないと言い、その代わり、ディデス侯爵家のせいで苦しんだディデス領民の為になる事をさせてはどうかと提案した。
領地管理の不届きや領民への高圧的な税の取り立て、事業失敗の多額の負債に他にも諸々の罪が重なり、侯爵家は取り潰しとなった。そして、ディデス親子は、かつての自身の領地の僻地にある鉱山で労働刑となったのだった。
そして、1年の婚約期間を経て、ラデク王子とダーシャは無事に結婚し、ダーシャはディデス親子の事での領民への心配りなどから、国民から絶大な人気を誇ったのだった。その後、ラデク王子が国王に即位した際には、ダーシャの加護の力からか、それともラデク国王の統治能力が優れていたのか、国は更に豊かに栄えていったのだった――
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感想ありがとうございました。これからも頑張ります!