108 / 188
学園編 3.5章
第108話 主人公⑨ (リリス視点)
しおりを挟むそれは、学園での初ダンジョン探索が終わった後のこと。
私は一人運動場にいた。
ミナスには先に帰ってもらって、私はやらなければいけないことをやる。
「ぷはぁ~~、久しぶりの外の世界じゃ!この建物の造りを見る限り、結構文明も発展したようじゃな。良きことだ!」
私は、目の前を浮遊するクロ程の大きさをした水色の球体を見つめる。
[それにしても何処にでも水の気配がするわね!?]
「たぶん、街の地面の下には上下水道管が縦横に張り巡っているからね」
[ほうほう、つまりこの世界の人々は水に困ってはいないというわけか。それは良きかな!]
その幼女のような声色とは真逆な偉そうな発言。
「ねえ、ところで貴方は誰なのよ?」
私は耐え切れず、質問する。
隠しダンジョンで檻に閉じ込められていた、この目の前の水色の球体を、私は解放した。
だが、相手が誰だかしっかり確認しなかったため、急に力を持っていかれて私は意識を失った。
その後も、私と契約したからと言って後を付いてくる。
[まさか妾(わらわ)のことを忘れたのか、ルルスよ]
「ルルスじゃない、リリスよ!」
[そうだった、ララスよ]
「わざと間違えてない!?」
[そんなことはないわ]
ぼけているのか、本当に間違えているのか。
「貴方の名前は覚えているわ。フィーン!」
[???私の名前はニンフィーンよ!]
[気にするな。そいつは人にあだ名を付けるが、 壊滅的にセンスがない]
クロが私たちの会話に横から参加して、私の悪口を言い出す。
[つまり、フィーンはあだ名ということね。うん、気に入ったわ!]
「本当!!!やったぁ!」
[え?まじで・・・]
私たちやり取りにビックリするクロ。
それはそれで、置いといて。
「ところで、フィーンは水の精霊王と言っていたけど本当なの?」
私は一番の質問をぶつける。
[たぶん、そうだよ]
「たぶん?」
[うん。記憶が朧気なのよ。数百年前に突如封印されたのを最後にほとんど眠りっぱなしだったから。本当にごくたまに誰かがあの地下にやって来たけど、誰にも私の声が届かないみたいで。でも、やっと、あなたにリリスに会えた、ってわけ]
なるほど、少しクロと似た感じだね。
「それにしても水の精霊王って、五霊王の一人じゃん!」
五霊王とは、姿をほとんど確認することの出来ない精霊王の中でも最も強いとされている属性のこと。
水、火、土、風、雷の五属性だ。
ただでさえ存在すらほとんど知られていない精霊王を前にして、さらに水属性。
なんだか頭から湯気が出そう。
[ふふ~ん、凄いでしょ!?あ、そうだ。ついでに妾の弟も紹介するぞ]
「[・・・・・・はぁぁ!!!]」
弟!?!?!?!
[おいおい、急に何を言い出すんだ!弟って、何処にもいないじゃないか!]
クロが私の代わりにフィーンにツッコミを入れる。
[だって、妾の中にいるからな。本来はそなたたちには見えんのだよ。ほら、出てこい!]
そうフィーンが言うと、突如、彼女の形が変形していく。
水色の球体が大きく口を開けたような形になると、次の瞬間、外へと何かを吐き出した。
吐き出されたのは黄色の小さな玉。
ビー玉ほどの小さな玉が、段々と膨張していく。
そしてその黄色の球体は、クロとフィーンのサイズになると成長を止めた。
[紹介するぞ。妾の弟、人呼んで雷の精霊王、ユーピタルよ!]
[ど、どうもです。お、お初にお目にかかりますです]
少しオドオドした可愛らしい声で答えるユーピタル、いや、あだ名はタルルにしよう!
ってか?!
「[雷の精霊王!!!!!]」
再び、私はクロとハモる。
「え、いやいやおかしいでしょ!何で精霊王に二体と会えるのよ!え、本物?!」
[え、ええ。まあ、一応]
タルルの声からは威厳など感じられない。
それにしても、まさかこんなにもあっけなく精霊王たちに会えるだなんて。
「知らないと思ってからかってるんじゃないの?実は私たち、守護精霊でーす、とか?」
そう言って確認するが、フィーンとタルルは否定する。
[精霊王を名乗れるのは精霊王だけ。偽ることは出来ない。それが精霊界のルール]
つ、つまり、本当に本物っ!!!
それでも私は目の前で起きている事が受け入れられず、身体が固まってしまう。
[じゃあ、早く弟とも契約してね!]
そんな私の気持ちも知らずに、話を進めるフィーン。
[ね、姉さん。急に話を進めないでよ!]
[何?妾に文句か?!]
[そうじゃないけどさ、急に言われても困るよ!]
私抜きの姉弟喧嘩が始まる。
[じゃあ、貴方は彼女と契約せずに、そこら辺をほっつき回ると]
[・・・それはそれで嫌だけどさ]
[じゃあ、決まりだ。新たにリリスを主として契約する。そうすればいいと思うぞ]
[・・・もう、いっつも姉さんに振り回されてばかりだよ。分かった、契約するよ]
[OK。じゃあ、リリス。あとは、よろしく!]
放心状態だった私はフィーンに呼ばれて我に返る。
[じ、じゃあ、やるね。我は契約を望む]
[同意する]
咄嗟に答えてしまった。
すると次の瞬間、微量の電流が全身に走り、力がみなぎってくるのを感じた。
[これで完了だ]
こうして、私は雷の精霊王と新たに契約をしたのであった。
23
あなたにおすすめの小説
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第2巻発売中です!】
逞しく成長したリューク、そしてジーナ、ユフィオ、キスティーが大活躍します!
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【書籍第3巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。アニスもレムも超カワで、表紙もカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【2024年10月23日コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです
青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。
混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。
もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。
「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」
思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。
その時、見知らぬ声が響く。
「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」
これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる