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留学編 3.5章
第185話 趣味 (レーナ視点)
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私には趣味と呼べるものがない。
何かに熱中することはある。
魔法、調べごと、料理・・・
でも、それは一時的なこと。
命令だから、仕事だから、やっているに過ぎない。
それ自体を本気で楽しんだことはおそらく無い。
私は別に不器用とかではない。
むしろアルスのように何事も卒なくこなせるタイプだ。
ただこれまで、自分が心からやりたいと思える趣味には出会わなかっただけ。
身分は奴隷だけど、従者として今は比較的自由に行動できる。
大抵は何をやっていても何も言われない。
なので、奴隷にしては贅沢この上ない環境にいる。
でも、それでも自分の楽しみを見つけられなかった。
普通に生活をしていて友達と遊ぶのはもちろん楽しい。
けれど、そうやって自分と向き合わずに逃げてきたからか、一人になったとき、本当に好きなことを見つけられず苦労している。
この前の休日は生まれて初めて編み物をやってみた。
お手本通りのモノが綺麗に作れたが、そこまで楽しめなかった。
次の休みの日にはバタークッキーを焼いてみた。
ルイ様やいろいろな人に食べてもらい喜んでもらえたが、でも、しっくり来なかった。
暇を見つけては体も動かしているが、それはあくまで仕事の延長。
ダンジョンに潜りたい気分も起こらないし、食べ歩きも好きではない。
そんなある日、突然奥方様が屋敷にいらっしゃり、どうしてか私達を部屋にお呼びになった。
訝しみながら行ってみると、そこにルイ様もいた。
「実は最近、南の方で『コスプレ』と呼ばれる娯楽が流行っているそうよ」
「コスプレ!?」
「あら、ルイは知っているの?」
「い、いえ」
しどろもどろになるルイ様。
「まあいいわ。コスプレというのは簡単に言うと、自分とは違う別の誰かになりきること」
別の誰かになりきる?
「では始めましょ。さっきも言ったようにアルスは学園祭の時と同じメイド服を着なさい」
「え!?」
目を丸くするアルス。
「新人のテラよね?」
「あ、はいニャ」
「貴方はセバスが着ているようなタキシードを着なさい」
「ニャ!」
テラちゃんが耳を逆立てる。
「レーナはルイが着ている服を着てね」
「え、あ、はい」
ルイ様の服装か。
白いシャツの上から青いウエストコート。
下はスリムなズボン。
アルスやテラちゃんに比べれば普通の服装。
「あ、ただしレーナは、ちゃんと男装すること」
「・・・・!!だ、男装ですか?」
「コスプレの衣装は大丈夫。全員分、すでに揃えてあるからね!」
流石、奥方様。準備がいい。
「と、ところで母上!」
「ん?何、ルイ?」
「その~どうして僕が~『犬』なんですか?」
こんなに嫌がっているルイ様は初めて見たかも。
「それは決まっているじゃない。お仕置きだからよ!」
「だとしてもです!息子を犬扱いするなんて親のすることじゃありません!立派な児童虐待です!」
渾身の叫び!かのように訴えるルイ様。
でもその言葉はすぐに、目を細めた奥方様に弾き返される。
「貴族の屋敷を燃やしたり、学園で暴れたり、勝手に隣国を荒らしたり・・・」
「うぐっ」
「それって児童がやることかしらン?}
「うぐっ」
「息子の知らないところで、親もだいぶ尻拭いさせられているんだけどねぇ」
「うぐっ」
ルイ様、撃沈。
まあ、全て事実だし的も得ているしね。
さて、コスチュームに着替え終えた私達の姿を見て、奥方様は満足げに頷く。
「貴方やっぱり似合っているわね、アルス!可愛いわよ」
「うっ、ありがとうございます」
学園祭の時と同じようにしっかりと化粧もし、髪は纏めてカチューシャまで付けている。
なかなか上出来。正直、胸の凹凸がない以外は女子にしか見えない。
一方テラちゃんは、スラッとしてスレンダーな体型に細身のタキシードがよく似合う。
凛とした表情で立つ姿も様になっている。
その手(義手)にはエレガントな白い手袋をつけ、美しい所作で奥方様にお茶をお出しする。
「ありがとう、テラ」
「い、いいえ!とんでもございませんニャ」
そして私はと言うと、胸の膨らみは布(サラシ)でなんとか抑え込んで着ている。
「やっぱり似合うわね、レーナ」
「ありがとうございます」
「品のある感じで。しかもその茶色の短髪も相まってカッコよさがにじみ出ているわ。前に貴方の乗馬姿を見た時から、この子は男装が似合う!って、私にはピンと来てたのよ」
ニッコリとそうおっしゃる奥方様。
最初は何で私が男装?と不思議に思っていた。
でも、こうして鏡に映る自分の姿を見るのが、思いのほか楽しい!
いつもの自分を隠し、新たな自分を演ずる。
コスプレ・・・面白いかも!!
「・・・で、どうして僕はこんな雑なんですか?」
「語尾に『わん』を付けなさい」
「くっ、・・・わん」
「よしよし、いい子いい子」
頭を撫でられて屈辱的な表情を浮かべるルイ様。
ルイ様は頭に犬のタレ耳カチューシャ、両手には犬手型の手袋、鼻のてっぺんは黒く塗られている。
みんなと比べるとたしかにルイ様のコスプレ?だけ、雑過ぎる・・・
「さあ、貴方たちはその姿で今日一日過ごしなさい」
「「「そ、そんな~~~(わ~~ん)!!!!」」」
私以外はみんな落胆の声を上げた。
そう。
この日以来、私に初めて趣味が出来たのだった!
何かに熱中することはある。
魔法、調べごと、料理・・・
でも、それは一時的なこと。
命令だから、仕事だから、やっているに過ぎない。
それ自体を本気で楽しんだことはおそらく無い。
私は別に不器用とかではない。
むしろアルスのように何事も卒なくこなせるタイプだ。
ただこれまで、自分が心からやりたいと思える趣味には出会わなかっただけ。
身分は奴隷だけど、従者として今は比較的自由に行動できる。
大抵は何をやっていても何も言われない。
なので、奴隷にしては贅沢この上ない環境にいる。
でも、それでも自分の楽しみを見つけられなかった。
普通に生活をしていて友達と遊ぶのはもちろん楽しい。
けれど、そうやって自分と向き合わずに逃げてきたからか、一人になったとき、本当に好きなことを見つけられず苦労している。
この前の休日は生まれて初めて編み物をやってみた。
お手本通りのモノが綺麗に作れたが、そこまで楽しめなかった。
次の休みの日にはバタークッキーを焼いてみた。
ルイ様やいろいろな人に食べてもらい喜んでもらえたが、でも、しっくり来なかった。
暇を見つけては体も動かしているが、それはあくまで仕事の延長。
ダンジョンに潜りたい気分も起こらないし、食べ歩きも好きではない。
そんなある日、突然奥方様が屋敷にいらっしゃり、どうしてか私達を部屋にお呼びになった。
訝しみながら行ってみると、そこにルイ様もいた。
「実は最近、南の方で『コスプレ』と呼ばれる娯楽が流行っているそうよ」
「コスプレ!?」
「あら、ルイは知っているの?」
「い、いえ」
しどろもどろになるルイ様。
「まあいいわ。コスプレというのは簡単に言うと、自分とは違う別の誰かになりきること」
別の誰かになりきる?
「では始めましょ。さっきも言ったようにアルスは学園祭の時と同じメイド服を着なさい」
「え!?」
目を丸くするアルス。
「新人のテラよね?」
「あ、はいニャ」
「貴方はセバスが着ているようなタキシードを着なさい」
「ニャ!」
テラちゃんが耳を逆立てる。
「レーナはルイが着ている服を着てね」
「え、あ、はい」
ルイ様の服装か。
白いシャツの上から青いウエストコート。
下はスリムなズボン。
アルスやテラちゃんに比べれば普通の服装。
「あ、ただしレーナは、ちゃんと男装すること」
「・・・・!!だ、男装ですか?」
「コスプレの衣装は大丈夫。全員分、すでに揃えてあるからね!」
流石、奥方様。準備がいい。
「と、ところで母上!」
「ん?何、ルイ?」
「その~どうして僕が~『犬』なんですか?」
こんなに嫌がっているルイ様は初めて見たかも。
「それは決まっているじゃない。お仕置きだからよ!」
「だとしてもです!息子を犬扱いするなんて親のすることじゃありません!立派な児童虐待です!」
渾身の叫び!かのように訴えるルイ様。
でもその言葉はすぐに、目を細めた奥方様に弾き返される。
「貴族の屋敷を燃やしたり、学園で暴れたり、勝手に隣国を荒らしたり・・・」
「うぐっ」
「それって児童がやることかしらン?}
「うぐっ」
「息子の知らないところで、親もだいぶ尻拭いさせられているんだけどねぇ」
「うぐっ」
ルイ様、撃沈。
まあ、全て事実だし的も得ているしね。
さて、コスチュームに着替え終えた私達の姿を見て、奥方様は満足げに頷く。
「貴方やっぱり似合っているわね、アルス!可愛いわよ」
「うっ、ありがとうございます」
学園祭の時と同じようにしっかりと化粧もし、髪は纏めてカチューシャまで付けている。
なかなか上出来。正直、胸の凹凸がない以外は女子にしか見えない。
一方テラちゃんは、スラッとしてスレンダーな体型に細身のタキシードがよく似合う。
凛とした表情で立つ姿も様になっている。
その手(義手)にはエレガントな白い手袋をつけ、美しい所作で奥方様にお茶をお出しする。
「ありがとう、テラ」
「い、いいえ!とんでもございませんニャ」
そして私はと言うと、胸の膨らみは布(サラシ)でなんとか抑え込んで着ている。
「やっぱり似合うわね、レーナ」
「ありがとうございます」
「品のある感じで。しかもその茶色の短髪も相まってカッコよさがにじみ出ているわ。前に貴方の乗馬姿を見た時から、この子は男装が似合う!って、私にはピンと来てたのよ」
ニッコリとそうおっしゃる奥方様。
最初は何で私が男装?と不思議に思っていた。
でも、こうして鏡に映る自分の姿を見るのが、思いのほか楽しい!
いつもの自分を隠し、新たな自分を演ずる。
コスプレ・・・面白いかも!!
「・・・で、どうして僕はこんな雑なんですか?」
「語尾に『わん』を付けなさい」
「くっ、・・・わん」
「よしよし、いい子いい子」
頭を撫でられて屈辱的な表情を浮かべるルイ様。
ルイ様は頭に犬のタレ耳カチューシャ、両手には犬手型の手袋、鼻のてっぺんは黒く塗られている。
みんなと比べるとたしかにルイ様のコスプレ?だけ、雑過ぎる・・・
「さあ、貴方たちはその姿で今日一日過ごしなさい」
「「「そ、そんな~~~(わ~~ん)!!!!」」」
私以外はみんな落胆の声を上げた。
そう。
この日以来、私に初めて趣味が出来たのだった!
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