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9.話を聞かないアルファ
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◇
「では、今日はこれで終わりになります。また明日」
「はい、楽しみにしています」
仕事が終わり、玄関前で八乙女に頭を下げた。
────どっと疲れが。
一か月だけと高を括っていたけれど、一か月持つかな俺。
ただ、この部屋を出て……いや、このマンションの外に出るまで油断するべきじゃなかった。
ドアノブを持つと同時に、背後から八乙女の長い腕が伸びてきてドアドンをされた。
振り向いた途端、唇に柔らかい何かがふにっと引っ付く。
至近距離の長いまつ毛。
え……。
驚きのあまり、硬直していると、その隙に八乙女の舌が俺の唇を割って入ってくるじゃないかっ。
「んんんっ!?」
どうしてなんで!?
さっき、仕事中にはしないって納得したんじゃないのか!?
あ、そうか、「では……」って言ったから仕事が終わりプライベートの時間が始まったってことか。え、プライベート始まったらこんなにすぐにキスされんの!?
「ふ……んんんっ!?!?」
考え事している間に、八乙女の舌が上顎を掠めた。
ビクンと身体が反応すると、そこを何度もなぞってくる。ぼんやりなんぞしていられないとようやく顔を横に振る。すると、動くなと言わんばかりに頬を掴まれて固定され、これでもかと激しいキスを降らしてくる。
「ひゃらっ! んっ! ……ひ、ぃ、ん」
や、やべぇ。
八乙女のキス、マジやばい。
舌が口の中スゲェ動いて、気持ち良過ぎる。
歯なんか全部舐められた。逃げても逃げても舌を絡まされる。押し返そうとした舌は吸われる。俺は童貞じゃないがさっきから腰に力が入らなくて八乙女に支えられている状況だ。
「んっ!」
ぬるん。と舌が深くに入って来た!
の、脳みそが溶ける! 既に唇と舌はトロトロになってしまっている。
アルファのキス怖い。うますぎる、酸欠気味の気持ちよさで思考が停止しそう……
「————っ」
膝がガクガク力が入らなくなった時、ようやく唇が離れた。支えてくれていた手も離されたので、そのまま地面に座り込んでしまった。
キスの余韻で身体がビクビク痙攣する。
放心状態で何も言えずはぁはぁと呼吸を整えていると、八乙女が俺の視線に合わせてしゃがみ込んだ。
「どうでしょうか。僕が、運命だって分かりましたか?」
「……は、はぁはぁ……?」
「運命ですよね。ほら、とろんとした顔になっていますよ」
「!?」
強行突破される!!
コイツ、見た目はインテリ気取っているのに、とんだ過激派じゃないか。中身は鉄砲玉みたいな奴だ。
そこに狙いの奴がいれば、飛び掛かってくる仕様になっている。
半泣きな俺に八乙女の手が伸びてきた。
顔が強張って引きつっていると、八乙女がこれでもかと優しい手つきでなでなでしてくる。
「あの、すみません。キスで気持ちよくなってしまっただけです。匂いとかもさっぱり分からないんです」
「そうですか」
八乙女は慈愛に満ちた表情で頷いた。俺はようやく分かって貰えたかと……
「大丈夫ですよ。一度のキスで分からなくても、そのうち分かりますからね。回数多い方がいいですよね。沢山しましょう」
「!?」
キラキラした表情の彼が俺の手を握りしめた。
「互いにキスで気持ちよくなれるのは相性がいい証拠ですので、運命です!」
「……っ!」
キスしたことで機嫌を取り戻した八乙女は、俺の頬にちゅっと音を立てて口付けした。
「は……は、は……」
お試しの一か月は、八乙女が“勘違い”だと気付くのか、俺が“思わされる”のか。どちらかということなのか!?
俺は心の中で大きな悲鳴を上げた。
「では、今日はこれで終わりになります。また明日」
「はい、楽しみにしています」
仕事が終わり、玄関前で八乙女に頭を下げた。
────どっと疲れが。
一か月だけと高を括っていたけれど、一か月持つかな俺。
ただ、この部屋を出て……いや、このマンションの外に出るまで油断するべきじゃなかった。
ドアノブを持つと同時に、背後から八乙女の長い腕が伸びてきてドアドンをされた。
振り向いた途端、唇に柔らかい何かがふにっと引っ付く。
至近距離の長いまつ毛。
え……。
驚きのあまり、硬直していると、その隙に八乙女の舌が俺の唇を割って入ってくるじゃないかっ。
「んんんっ!?」
どうしてなんで!?
さっき、仕事中にはしないって納得したんじゃないのか!?
あ、そうか、「では……」って言ったから仕事が終わりプライベートの時間が始まったってことか。え、プライベート始まったらこんなにすぐにキスされんの!?
「ふ……んんんっ!?!?」
考え事している間に、八乙女の舌が上顎を掠めた。
ビクンと身体が反応すると、そこを何度もなぞってくる。ぼんやりなんぞしていられないとようやく顔を横に振る。すると、動くなと言わんばかりに頬を掴まれて固定され、これでもかと激しいキスを降らしてくる。
「ひゃらっ! んっ! ……ひ、ぃ、ん」
や、やべぇ。
八乙女のキス、マジやばい。
舌が口の中スゲェ動いて、気持ち良過ぎる。
歯なんか全部舐められた。逃げても逃げても舌を絡まされる。押し返そうとした舌は吸われる。俺は童貞じゃないがさっきから腰に力が入らなくて八乙女に支えられている状況だ。
「んっ!」
ぬるん。と舌が深くに入って来た!
の、脳みそが溶ける! 既に唇と舌はトロトロになってしまっている。
アルファのキス怖い。うますぎる、酸欠気味の気持ちよさで思考が停止しそう……
「————っ」
膝がガクガク力が入らなくなった時、ようやく唇が離れた。支えてくれていた手も離されたので、そのまま地面に座り込んでしまった。
キスの余韻で身体がビクビク痙攣する。
放心状態で何も言えずはぁはぁと呼吸を整えていると、八乙女が俺の視線に合わせてしゃがみ込んだ。
「どうでしょうか。僕が、運命だって分かりましたか?」
「……は、はぁはぁ……?」
「運命ですよね。ほら、とろんとした顔になっていますよ」
「!?」
強行突破される!!
コイツ、見た目はインテリ気取っているのに、とんだ過激派じゃないか。中身は鉄砲玉みたいな奴だ。
そこに狙いの奴がいれば、飛び掛かってくる仕様になっている。
半泣きな俺に八乙女の手が伸びてきた。
顔が強張って引きつっていると、八乙女がこれでもかと優しい手つきでなでなでしてくる。
「あの、すみません。キスで気持ちよくなってしまっただけです。匂いとかもさっぱり分からないんです」
「そうですか」
八乙女は慈愛に満ちた表情で頷いた。俺はようやく分かって貰えたかと……
「大丈夫ですよ。一度のキスで分からなくても、そのうち分かりますからね。回数多い方がいいですよね。沢山しましょう」
「!?」
キラキラした表情の彼が俺の手を握りしめた。
「互いにキスで気持ちよくなれるのは相性がいい証拠ですので、運命です!」
「……っ!」
キスしたことで機嫌を取り戻した八乙女は、俺の頬にちゅっと音を立てて口付けした。
「は……は、は……」
お試しの一か月は、八乙女が“勘違い”だと気付くのか、俺が“思わされる”のか。どちらかということなのか!?
俺は心の中で大きな悲鳴を上げた。
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