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24.キス
しおりを挟む勢いよく唇がくっついたのに、そこからは、やたらとゆっくり優しいキスになった。
熱い舌が口を開けるように突いてくるので、俺は少し口を開ける。
にゅるっと舌が侵入してくる。
抵抗せず受け入れていると、益々深くなってくる。俺の舌にもよく絡んで、車の中だというのに、身体もどんどん熱を帯びてくる。
「──……ふぁ、っん」
耳を指で厭らしく撫でられて、身体がビクンと反応する。
耳は触らないように胸を押したが、全然聞いてくれない。
「んっ、ん……ぁっ」
自分の声じゃないような高い声をあげると、ようやく八乙女が唇から顔を離した。
にっこぉ
「……」
八乙女のやつ、見たこともない上機嫌だ……。
さっきまでのイライラはどこに置いてきたのか、ちゅっちゅっと俺の頬にバードキスをする。
嬉しそうにキスされては、こそばゆい。
凄い、浮かれているな……
絆されながら俺も瞼を閉じたとき、聞き捨てならない言葉を八乙女が囁いた。
「結婚しましょう」
結婚?
「ん?」
「住むところについてはゆっくり考えていきましょう。あぁ、でも先に籍は入れておきたい」
「あ……へ? お、おい」
籍?
「八乙女さんっ、話が飛びす、ぎ……っ、ん、キスするのやめてくださいよ! ──ちょ、おい。アンタどこ触って」
飛躍している話を戻そうとしているのに、八乙女の手が俺の股間を揉んでいるじゃないかっ!
やめなさいっ、ぐにぐにするな!
「ふふ、勃起してます」
「そ、そりゃ健康ですからって……ひ──ぎゃぁあ、ズボンのチャック下げないでっ! 車の中で変なことしないでくださいよ!」
「じゃあ、ホテルへ行きましょうか」
はい。と八乙女は俺のシートベルトを付け直した。
そして、車のエンジンを付ける。
へ、と横にいる男を見ると、るんるんと鼻歌交じりにご機嫌だ。
────……ホテルって。
え、ホテルに行くってことはだ、あれか。
セ……セックスするってことだ。
でも、この人強引だけど紳士。俺に欲情しても、自分の精の発散に俺の身体を使うことはしなかった。
……え? 紳士って強引だっけ?
「すぐ着きますので」
「……」
脳内バグを起こして、身を固まらせている間に、目的地に着いてしまった。本当にすぐ着いてしまった。
八乙女は車から降りて、助手席のドアを開けてくれたんだが、なかなか立たない俺を抱き上げそうになるので、自分の足でしっかりホテルの部屋まで向かった。
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